堺雅人はNHKドラマ『新選組!』の活躍などで優しい癒し系の俳優として知られている。そんな堺が挑む諸星大二郎原作の幻想的なサスペンス映画『壁男』が9月15日テアトル新宿で初日舞台挨拶を迎えた。

「堺さんのにこやかで邪悪な影のあるような瞳にやられて8年前から是非この役をやって欲しいと思っていました。」と語るのは脚本も手掛けた早川渉監督だ。

堺の役は壁の中に住む“壁男”を知り、豹変していく役柄だ。何もかもスマートにこなしていた男が崩れるように狂人と化す。その演技は笑顔さえ不気味だ。
「本人は全く崩れるつもりはないんですけどね。(笑)監督からやれと言われたことをやっていった結果です。それがどう映るかはお客さんが楽しんでいただければと思います。原作は物語として完成している印象を受けました。これを札幌の土地に置き換えることで何が変わって何が変わらないのかそれがひとつの実験として興味深かった。結果的に札幌でしか撮れない映画になっていますね。」と作品を落ち着いた口調で語った。

撮影は全編真冬の北海道の札幌で行われた。
「この映画は僕が住んでいる札幌で堺さんと映画を作りたいといってできた映画です。今こうやって公開となって本当に嬉しく思います。」と早川監督の熱意から作品が生まれたことを明かした。

インフルエンザにかかるほど寒さが厳しかったという堺。「札幌の寒い中撮った映像を残暑の東京で見るのは乙な物だなあと思います。温度差を楽しんでいただけたらと思います。」と最後は目尻に皺を寄せた優しげな笑顔で締めくくった。

(Report:Hiromi Kato)