歌舞伎の舞台をスクリーンで楽しむという新しい形を提案するシネマ歌舞伎。
17日に本映画祭にて公開された『京鹿子娘二人道成寺』に引き続き、「シネマ歌舞伎」シリーズ第2弾として『野田版 研辰の討たれ』(英語字幕版)がSKIPシティにて世界初公開された。上映後には、前回と同じくシネマ歌舞伎の発案者である松竹の土田真樹プロデューサーによる作品解説、質疑応答が行われた。

Q,セリフに時事的ネタが多く盛り込まれているが、2年前の舞台を収録している為、現在とのズレがあったり、海外の人にも細かいネタは伝わらないのでは?

元々、江戸時代の歌舞伎は一般の人々の日常的娯楽であり、セリフに時事ネタが取り入れられるのは自然な事でした。多少やりすぎと思われる部分もあるかもしれませんが(笑)。シネマ歌舞伎化する事によって時間的なズレが生じてくるのは確かだけれど、そういう部分も含めて楽しんでいただければと思います。これだけの舞台をこのようにシネマ歌舞化してより多くの皆さんに楽しんでいただけるようになったのですから。

Q, 今後の歌舞伎公演のシネマ歌舞伎化予定は?

現在、5公演をシネマ歌舞伎化しているが、今年10月の勘三郎さんの新橋演舞場公演を(山田洋次監督が)シネマ歌舞伎化する予定です。勘三郎さんは新しいことに挑戦する方なので、シネマ歌舞伎化にも積極的です。(観客からシネマ歌舞伎化の希望があった)NY公演の舞台や渡辺えり子さんとの舞台も現段階ではシネマ歌舞伎化の予定はないが、検討していきたいと思っています。

Q,金比羅歌舞伎(四国金比羅で行われている伝統的な歌舞伎)のシネマ歌舞伎化予定は?

私も金比羅歌舞伎のシネマ歌舞伎化に関しては興味があり提案もしていますが、一方で金比羅歌舞伎は四国讃岐のあの芝居小屋でやる事に意義があり、安易にシネマ歌舞伎化するものではないという意見もあるのは確かです。テレビでは放映している過去もあるので、こちらも今後前向きに検討したい。

現在、本格的な歌舞伎を身近で楽しめるのは一部の大都市だけだが、シネマ歌舞伎として上映する事で、より多くの若者が小さい頃から歌舞伎を味わえる環境にしていきたいと今後の展望を語った。又、生の歌舞伎を世界に運ぶ事はコスト面からも大変な事であるが、シネマ歌舞伎ならば上映装置が揃えば世界のどこでも上映が可能という利点がある。NYでは既に一度公開しており、この他にはロサンゼルス・南米・ソウル・東南アジアでの公開もお話があるとの事。シネマ歌舞伎は、日本文化を世界へ発信する有効な方法なのだ。

(Report:tomoe yuita)