ピアノの才能に恵まれ“神童”としてもてはやされながらも、自らの才能をもてあましている少女と落ちこぼれ音大生の、言葉ではなく音を通じて、人と人が共有できる感覚が鮮明に描かれている映画、『神童』の初日舞台挨拶が4月21日渋谷シネマライズにて行われ、成海璃子、松山ケンイチ、西島秀俊、萩生田宏治監督が登壇した。

成海「今回演じたうたという役はとても魅力的で、演じていても本当に自然なお芝居ができました。」

松山「観てて思ったと思うんですが、うたとワオは言葉ではなく音楽を通して繋がっていて、ある意味一心同体みたいな。音楽を通して相手の気持ちがわかるすごく不思議な関係だったんですけど、僕と成海さんも芝居をしてて芝居の話ってしてなくて、感覚で繋がっていていい関係でお芝居できていたと思います。」

西島「僕は監督のファンで今回参加させていただいて、この場に立たせてもらって嬉しいです。『神童』という映画は音楽映画であると同時に人間ドラマであると思っています。きっと皆さん観て感動していただけたと思います。ぜひまた2回目も観て、周りの人にもよかったと伝えてください。」

監督「朝早くからこんなにたくさんの人に集まっていただいて本当に嬉しいです。クラシックの音楽家を含め、色々な才能を持った音楽家の方たちと成海さん、松山さん、西島さん、存在感のある俳優さんたちを起用させてもらえてよかったです。」

ー監督の成海さん、松山さんに対する第一印象は?ー
監督「成海さんに会ったのはちょうど沖縄のロケが終わった後くらいでちょっと日に焼けていて、13歳とは聞いていましたがそうは見えなくて、エレガントな女性だなという印象でした。でも話しているうちに少年っぽい感じというか、負けん気の強さみたいなものを感じました。松山さんは1回会ったときにチェックのダサいシャツを着て来たんですね。普段はおしゃれなんですけど、1回だけそのダサいシャツを着てきたので“どうしたんですか?”って聞いたらマネージャーから浪人生をイメージした服を着て来いって言われたって言っていてものすごい素直な方なんだなと思いました。」

松山「その時、冬でチェックのシャツが長袖じゃなくて半袖の方がいいと思って、着て行ったらドン引きされましたね。(笑)」

ークラシックは元々聴いていましたか?ー
監督「僕は全然聴いてなくて、ピアノの白いのと黒いのがいくつあるのかも、“ド”がどこにあるのかもわからなかったです。(笑)」

成海「5歳くらいからピアノを習っていたんですが、練習が嫌いで途中で辞めてしまったので、今回久々に曲を聴きました。うたとワオが言葉ではなく音楽で繋がっている関係なので、音っていうものの深さを感じました。」

松山「僕も作品に入るまではあまり聴いたことがなくて、クラシック=眠くなるみたいなイメージしか持っていなかったんです。ベートーベンの“熱情”という曲を聴いてクラシックではなく、ロックに聴こえたのでイメージで片付けてしまった自分がすごく情けなくなりました。今はワオの吹き替えをやっていただいた清塚さんにコンサートに誘ってもらって行って聴いたりしています。」

西島「僕は全く聴いてません。この機会に聴こうと思います。」

ー撮影中しんどかったと感じたことは?ー
西島「僕は1日しか撮影していないんですが・・・(笑)遺影のために写真をずっと撮っていたのがけっこう大変でしたね。」

松山「ポスター写真のためにわざわざホールを借りて撮ったんですが、これ・・・(ポスターを見ながら)撮影中に撮った写真なんですよ。ホールで撮った写真が一切使われていない!その時はせっかくワオとうたをひねり出してきたのに、ちゃっかり撮影中のがポスターになっているなんて・・・(笑)」

成海「クライマックスの方でオーケストラと一緒に演奏するシーンがあるんですが、撮影に3日間くらいかかって、曲も難しくてとてもしんどかったです。でも撮り終わった時は達成感があったし、出来上がったものを観てもとても迫力のあるシーンになっていたので嬉しかったです。」

監督「準備の時はクラシックを色々勉強しながら聴いて、それはそれなりにしんどい作業ではありましたけど、撮影の時は毎日楽しかったと思います。」

音楽の素晴らしさ、人との繋がりのあたたかさを感じることができ観た人の心をきっと豊かにしてくれるだろう。

(Report:Tomoko Koya)