1月30日(火)に『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の完成披露記者会見が東京會舘で、完成披露舞台挨拶が丸の内ピカデリー1で行われました。
主人公“ボク”役のオダギリジョー、若い頃の“オカン”役に内田也哉子、“オトン”役の小林薫、そして松岡錠司監督が挨拶しました。

●リリー・フランキーが執筆した原作は200万部突破のロングセラー。ドラマ化もされ、もはや知らない人が居ないのではないだろうかと思うほどの社会現象的ブームです。

Q.原作は読みましたか?
オダギリ「原作は読まずに台本だけの情報で演じました。語り手の“ボク”をみて自分の気持ちになってみるのも、リリー・フランキーとしてみることもできます。ニュートラルな人物像であればいいなと。」

Q.原作に惚れ込んで、リリー・フランキーさんに直談判されたそうですね。
松岡監督「吉祥寺でサイン会の集まりのときですね。そのサイン会の人の集まりを見たときにこれはものすごい質量で広まっていくだろうなと思いました。」

●“オカン”役には樹木希林と樹木希林の実の娘の内田也哉子という奇跡的なキャスティング。内田は本格的な映画出演は初めてで、今までは役者という仕事に興味がなかったと言う。

Q.出演の決め手は?
内田「オファーを二人同時に頂いて、母に相談したら“自分で決めなさい”と言われました。“もう大人なんだから”と。『東京タワー(以下略)』は作品の大きさと安心感があり、“やってもいいんじゃないか”と言われた気がして挑戦しました。」

Q.内田さんについて
松岡監督「新鮮さはもちろん独特の存在感ですよね。世間話をしていて、ふだんオファーを申し込む際絶対言わないんですけど、“やったほうがいい”と軽いノリで言ったんです。僕の直感は間違ってなかったですね。同一人物を演じる樹木希林さんと内田さん、お互い好きにやればいいと思いました。合わせるなんてこざかしい真似なんてしなくていいんです。…ちょっと熱くなっちゃいましたね。(笑)」オダギリの笑い声が響きました。

●生活にだらしなかったが心の底から母親を愛している“ボク”。飄々と生きている“オトン”。優しく暖かい強い日本の母親“オカン”。それぞれの登場人物が丁寧に描かれています。

Q.“ボク”との共通点は?
オダギリ「たくさん重なりましたが内緒です。(笑)言うにはとても時間がかかるので。」

Q.“オトン”との共通点は?
小林「原作を読んで、“オトン”を自由気ままだとは思いませんでした。世の中には9割の男が“オトン”だと思っていて、酒に酔って暴れたりすればするほど弱さが見えてくる。弱さを持っているからこそそれを隠すためにそうならざるをえない。とても親近感を持ちましたね。豊かな時代になったとき振り返ってみて、あの昭和30年代のしょっぱさがなくなってしまったとしたらあの家族のありようが懐かしいなと。」

Q.内田さんから見て樹木希林さんと“オカン”の共通点は?
内田「似ている部分は荒波な人生の中に居ても後ろ向きにならない。逆境に立てば立つほどゲラゲラ笑っていたり、無理せず生きることに前向きなところがかさなりました。似てないところは母のほうが100倍毒があるところですね。」

●驚くほど豪華なキャストとスタッフも見所のひとつ。松たか子、宮崎あおい、寺島進、仲村トオル、小泉今日子…挙げればきりがないほど。脚本は松尾スズキが担当し、エンディングテーマに福山雅治自ら作詞作曲です。

Q.キャスティングについて
松岡監督「メジャーな作品でここまで監督がキャスティングできたのはかなり自由だったと思います。有名な方と有名じゃない方が出てくるというのを現場でおもしろがってやっていました。」

オダギリ「現場の雰囲気はとてもよくて。豪華な出演者が来る日々で、“今日はキョンキョンくる”とか。明日はどんなスターが来るんだろうと思っていました。」

●映画『さよなら、クロ』なども手がけ、人間の心とまっすぐに向き合い描きつづけている松岡監督。作品についてとても熱く語るが、撮影現場の雰囲気はなんとも柔らかいのだとか。

Q.松岡監督について
オダギリ「正直に言っていいですか?松岡監督はですね…体が弱く、プレッシャーにも弱くて精力剤をいつも飲んでいるんです。僕も半粒もらって、効く必要の無い日に元気だしました。(笑)」松岡監督「リリー・フランキーは同じ薬を一粒ずつ飲んでいますよ。僕は半粒ずつですけど。」

内田「正直に言っていいですか?(笑)松岡監督は大先輩なんですがとても愛おしいです。とにかく暖かく包みこんで頂いて、スタッフの皆もその波動につつまれて暖かくなる。そういうところからじゃないと良い作品は生まれないとおっしゃっていました。」

小林「現場を不安にさせることなく役者にプレッシャーかけたりすることなく自然体でしたね。」

Q.最後に一言
松岡監督「人間の生と死は人間の奥深いところで感じるもので、涙を流すと浄化してしまうのでそれを最後に持ってくるようにしました。
今日電車で女子高生が“春になったら見に行こうよ、『東京フランキー』と言っていて(笑)”題名さえ全然わかってないのに見に行こうとするムーブメントにいいふうに応えられるように、と思いました。実際どうかは皆さんが受け止めてください。」

原作ヒットの第一波、ドラマ化の第二波、そしてこの作品の第三波。
東京タワームーブメントは今最高潮を迎えようとしているのかもしれません。

(hiromi kato)