第6回東京フィルメックスでグランプリを受賞した『バッシング』(05)。その小林政広監督最新作『幸福』が第7回東京フィルメックスで上映され、Q&Aが行われた。

白夜の季節のある北の街で出会った二人の孤独な男女。2人は心の隙間を埋めあうように同じ時を過ごすが、お互い家族への思いを消すことはなかなかできない。
しかし、やがて白夜の季節が終わり、二人はそれぞれの“幸福”を求めてある決意をする……。

Q.日本で“白夜”というのは小林さんらしい設定だと思いましたが。

監督「『バッシング』では1〜3月の撮影で、いつも雪があって自然と世界が作れましたが、今回は9月の撮影で何か世界が作れないかと思い、“白夜”という設定にしました」

Q.香川照之さんが毎回違う感じに歌う「心凍らせて」が、素晴らしかったです。(笑)歌手として石橋凌さんもプロですが、歌に関して拘りはあったのでしょうか。

「私自身、酔っ払うとあんな風に歌ってました。(笑)石橋さんは上手過ぎるので良くないなと。香川君も本当は上手いのですが、あのような感じにずっと歌っているのが良いと思って歌って貰いました。歌い方は彼自身が考えたもので、演出はさほどしていません。」

Q.セリフの間や、歩き方が独特でしたが、どのように演出したのでしょうか。

「私は、俳優の自前の衣装で出演して貰っているのですが、衣装を考えてもらっている時点で、演じる役がどのように動くのかがおのずと出てきていると思います。歩き方に関しては、何か人間以外の動物のようにしてもらいたかった。精神的に壊れてしまった人は、歩き方にも出てくると思うので、あのようにに表現しました。」

Q.今までも、今回も、監督の映画にはあまりエキストラがいません。あのような場所では死にたくないなと思いますが(笑)、あれは意図的なものなのでしょうか。

「ひとつは、予算がないので人を使う時間・お金がないというのがあります。前回は、雪の中での撮影でしたが、そんな天候の中、外にずっといるのは映画を撮影する人くらいです。(笑)だた、もともと殺風景な街なので、そのままを撮ったと言えます。」
(t.suzuki)