”キトキト”とは富山弁で”生きのいい”こと。
ここにまた一つ、誰もが大切にしたくなるような心温まる物語が生まれた。

主人公・斎藤優介(石田卓也)は、ちょっと反抗的な高校3年生。母親・智子(大竹しのぶ)は女手ひとつで息子と娘を育ててきた、近所でも有名なスーパー母ちゃんだ。優介の姉・美咲(平山あや)は3年前に男と駆け落ちし、連絡一つよこしてこない。そして自分なりに将来について考えた優介も東京に夢を抱いて家を飛び出す・・・。

井筒監督作品の助監督を務めてきた吉田康弘。弱冠27歳という若さの吉田監督の監督デビュー作となるのが本作『キトキト!』だ。
「僕自身のお母さんの話を映画で撮ってみたい、とずっと思ってました。生きてきた27年間、家族にはたくさん支えられてきました。優介ぐらいの年頃では母親に感謝もせず、気持ちをわかってやれませんでしたが、今思い起こしてみると本当に愛情深い母親でした。普遍的なテーマを僕なりの視線でシンプルに、魂を込めて、命がけで作りました。」

また、スーパー母ちゃんを演じ、本作で2人の子供の母親となった大竹しのぶは「こんなにおもしろい脚本があるのか!って思いました。1カット1カットに映画とお母さんに対する監督の想いが込められていて、久しぶりに映画っていいなと思いました。監督は本当に素晴らしくて、現場もとても楽しかったです。」と監督を大絶賛。舞台上にも温かい空気が流れ、楽しそうな笑顔は絶えることがなかった。

この映画で大竹しのぶを母親として迎えた2人は口をそろえて「本当の母親みたいだった」と言う。「ビンタされるシーンがあるんですが、その瞬間、大竹さんを本当の母親だと感じました。」と平山あや。
エキセントリックな行動で驚かせたと思えば、子供への愛情溢れる笑顔を見せてくれる。不安になるくらい愛しくて、目の離せない母親がここにいるのだ。

方言には苦労をしたそうだが、この映画に出演してそれぞれ気づくことがあったのだそう。「母親から教えられたことを自分の子供に教える。そうして継承されていくんだということに感動を覚えました。」(大竹)「普段は近くにいすぎて大切さがわからなかったけど、改めて家族について考えさせられました。」(石田)「迷惑はかけてしまうけど、親の存在は一番大きいと思いますね。」(平山)

大きくて温かい気持ちが溢れる映画『キトキト!』。
監督の確かな、力強い愛情を感じた。

(umemoto)