12月下旬にシネマライズにて公開予定のドキュメンタリー映画『ダーウィンの悪夢』の記者会見が行われ、フーベルト・ザウバー監督が登壇した。

2004年ヴェネチア国際映画祭ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞を皮切りに、2006年アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート、2006年セザール賞最優秀初監督作品賞受賞など、数々の名誉ある映画祭に出品、受賞している本作は、淡水湖として世界第二位の大きさを誇るタンザニアの美しい湖、ヴィクトリア湖に半世紀ほど前に放たれた巨大外来魚“ナイルパーチ”をキーに、そこから始まる悪夢のグローバリゼーションが描かれている。

拍手で迎えられたザウバー監督は、「生命にとって危険な懸念は無知だと思います。愚かさの仮面を剥ぐことを使命に感じています」と挨拶し、ジャーナリズムが引き起こした問題について、こう続けた。「10年前、ルワンダの紛争が起こって最も残虐な行為が行われました。ラジオ局により「ツチ族だから殺せ」という呼びかけがされたのです。これはジャーナリズムが引き起こした残虐行為です。私は政治的な傾向のフィルムを作っていますが、小さな結果を生み出しました。ヨーロッパで魚を食べないというボイコットです。誤解されたのだと思います。これは魚についての映画ではなく、人間の映画です。またタンザニア政府は懸念を感じて、国民に映画反対を呼びかけました。参加したのは映画を見ることができない人たちでした。非常に残念です。何かボイコットするなら愚かな行為にすべきです。」

Q:この映画では飢餓を描いているが、死にかけている人はいない。証拠を見せて欲しい
ザウバー監督:アフリカの子供が死んでいること、何千トンの魚が運ばれていることは周知の事実です。私はそれを証明するためにアフリカに行ったのではなく、情報を違う形で表明し、理解してもらえることです。

Q:私たちはどうすればいいか、解決方法を教えて下さい
ザウバー監督:解決方法を教えるわけでもなく、政治的なことをしたいわけでもありません。ジレンマの前に立つ人に考えてほしい。脳は刺激を欲しがっています。皆さんの頭脳が解決したいと思い、感じ取って頂きたいと思います。

Q:撮影中の状況、危険や障害、コミュニケーションのエピソードは?
ザウバー監督:毎日が危険な状況していました。ただイラクやアフガニスタンとは違って銃弾は飛んできません。マラリアなどの病気、警察署に何回か拘置されたり、カメラを没収され、島を出ないように言われたりもしました。
最初、ストリートチルドレンや売春婦からは白人を見ると金づると思われました。長い時間をかけ、話を聞きたいことを伝え、最後には深い友情を築いていったのです。

日本にも輸入され、主にファミリーレストランや学校給食で使用されているという魚“ナイルパーチ”。『ダーウィンの悪夢』の世界は決して日本と遠く離れた物語ではなく、直接的、間接的に関わっている。ザウバー監督の視点であるこの映画を見ることは今まで見えなかった問題を再認識し、考える良い機会になるだろう。
(M.NIBE)