伝説の娼婦を追ったドキュメンタリー『ヨコハマメリー』初日舞台挨拶
4月15日、テアトル新宿にて『ヨコハマメリー』初日舞台挨拶が行われた。真っ白なイブニングドレスと化粧で身を包み、横浜の街角に立ち続けた老女。人々は彼女を「ハマのメリー」と呼んだ。何も語ろうとしない彼女の傍らで噂話は膨らみ、いつしか老女は横浜の伝説となっていた…彼女はいったい何者なのか……メリーさんと関係のあった人達を通じ、メリーさんとはなんだったのか、そして彼女が愛した「横浜」とはなんだったのかを検証したドキュメンタリー。
土曜日の午前10時半という時間にもかかわらず、劇場の席は観客で埋め尽くされた。この様子に中村高寛監督は「横浜では観に来てくれるお客さんはいるかなとは思っていましたが、東京でこれだけの人が観に来てくださって感動しています」と喜びを語る。メリーさんを題材として映画制作をしようと思った経緯について「地元が横浜だったので、中学生の頃から町に行くとメリーさんをよく見かけていました。当時は怖いおばあちゃんだと思っていましたが(笑)、95年に忽然と居なくなってしまいました。何処に行ってしまったんだろうという思いが、映画制作のきっかけとなりました」。
メリーさんの映画を撮るにあたり、監督が最初に出演してもらうことを決め、おにいさん、おねえさん的存在だという、女優の五大路子さんとカメラマンの森日出男さん。
メリーさんをモデルにし、毎年上映している一人芝居「横浜ローザ」では横浜文化省激励賞を受賞している五大さん。「メリーさんとは10年前に出会いました。監督の要望で、映画の中でメリーさんの格好をして伊勢佐木町を歩きましが、その時、町が劇場になった瞬間を感じました」。
メリーさんを取り上げた写真集「PASS ハマノメリー」のカメラマン森日出男さんは「写真集を出版する直前にメリーさんは横浜からいなくなってしまったので、写真集を見てもらうことは出来なくて残念でした」と無念さを語った。
撮影当初は25歳だった中村監督。「撮影以前は僕自身、横浜の歴史は知りませんでした。この映画を撮影し、横浜の戦後の歴史を知ることが出来ました。皆さんにもこの映画を通じて横浜を感じ、発見して貰えればと思います」。
(t.suzuki)