アカデミー賞に最も近い映画『ブロークバック・マウンテン』

ヴェネチア映画祭でグランプリを受賞し、先日のゴールデングローブ賞では
作品/監督/脚本/主題歌賞と主要4部門を独占した話題の作品である。

3月4日(土)の公開に先立ち、アン・リー監督が来日し、1月25日(水)公開記念記者会見が行われた。

日本が大好きというアン・リー監督。今回も満面の笑みで報道陣の前に登場。
和やかな雰囲気で会見がスタートした。

「この作品の前に大作を2つ撮り、非常に疲れて落ち込んでいた。引退しようか… 休養しようか…とさえ考えていた程だ。その時この映画の短編小説を思い出し、今の“うつ状態”を抜け出す為にも!この映画を撮る事を決めたんだ。」と作品誕生のきっかけをまずは話してくれた。

主演の2人、ヒースとジェイクに関しては
「今回は沢山のエクササイズを撮影前に行ったよ。セリフを何度も言い合ったり、ボディランゲージも沢山取り入れた。特にこれは2人の距離感を計るために効果的だった。ここまではOK、でもこれ以上近寄ると不快だとか色々分かったからね。
そういった様々なエクササイズを行って、後は主演の2人にキャラを膨らませてもらったんだ。リハーサルも何度もやったよ!
あっ!ラブシーンだけはリハーサルはしなかったよ(笑)」

作品の内容がゲイを描いているが各国の反応は?
「アメリカより東洋の方が受け入れやすい感じがする。以前“ウェディングバンケット”という、やはりゲイが出てくる作品を作ったが、その時の台湾はかなりゲイに対して厳しい反応だった。でもあれから12年。今台湾は非常にオープンになっている。しかもすごいスピードで変わっている。アジアの方がもっとリラックスして映画を見ている感じがするよ。レイト(映倫)もアメリカはR(18歳以上)という厳しいもの、でも台湾はPGなんだ。
香港は、映画のスローなテンポがちょっと嫌がられているみたいだよ(笑)。
日本や韓国は公開がまだだから分からないけれど、どうなるかなぁ。日本ではOLやゲイコミュニティに見て欲しいな(笑)」

そのゲイコミュニティに関してだが
「でもこれをゲイの映画だとは思って欲しくない。あくまでもラブストーリーで、その部分に共感して僕は映画化を決めたんだ。ゲイコミュニティからは“これはゲイの映画としては不充分だ!”と言われているし(笑)」
とユーモアたっぷりにコメント。そして最後に
「今世界は混沌としているからこそ、人間性や、人生の複雑さを描いた作品を多くの人が欲してるのでは? この映画は特に答えを提示していないが、そういう物を求めているのだと思う。だからここまで大勢の人に見てもらえてるのでは。
こんなに小さな作品がここまで大きくなるとは思わなかったので、とても嬉しく思っている。
人生は不思議だね、映画も不思議だね、そして観客の皆さんもとても不思議だよ。
賞とは関係なく、長く、より沢山の人に見て欲しい。」

終始穏やかで暖かい笑顔、そしてじっと相手の目を見てインタビューに答えていたアン・リー監督。
彼の人柄を感じる記者会見だった。

  (桜井裕子)

☆3/4(土)よりシネマライズ、3/18より全国超拡大ロードショー
☆作品紹介 『ブロークバック・マウンテン 』