原作は、花村萬月の芥川賞受賞の同名作品。製作総指揮を執ったのは、03年数々の映画賞を総ナメにした『赤目四十八瀧心中未遂』を監督した荒戸源次郎、監督には、阪本順治監督や井筒和幸監督の助監督を経て今回満を持してのデビューを飾った大森立嗣監督。そして、意外にも今回が初主演となる実力派俳優新井浩文、さらに広田レオナ、早良めぐみ、を向かえての記者会見となった。

映画の持つメッセージ性について、荒戸氏は「私たちは、何かを伝えたくて映画をつくっているわけではありません。映画自体がメッセージです。ですから、観ていただく方々それぞれが捉えたいように捉えていただければ、それでいいのです。」と答えた。確かに、この作品は、ストーリーについての事前の説明はほとんどされていない。つまり観るまではなにもわからない。その意図について大森監督は「観る前に、観客にある程度内容が把握できてしまう説明をすることはしたくなかったんです。それは、観客をばかにしている気がするからです。」と話した。映画の内容を事前に知らなかったせいなのか…、それとも彼らの世界に追いつけない自分を恥じるべきなのか…、いや違う。私の前に圧倒的な力で迫ってくる世界に、自分がたじろいでいるだけだった。この映画は、人の一番イタイ部分を突き刺してくる映画だ。事前に内容を知ろうが知らなかろうが関係ない。作品の中の世界は実際自分の中に存在していて、その現実を見せつけられているだけなのだ。「ほら、これがあなたでしょう?」…と。彼らは口を揃えてこう唱える。「頭で考えるのではなく、感じてほしい。」本当に、この2人の才能は恐ろしい。
12/17より、上野の東京国立博物館で「ゲルマニウムの夜」だけのために、劇場がたてられることとなった。この映画界の鬼才たちが作り上げた新世界の誕生をぜひ目の当たりにしていただきたい。

(ハヤシ カナコ)

◇東京国際映画祭◇
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