10月26日ウェスティンホテル東京にて『アメリカ家族のいる風景』のヴィム・ヴェンダース監督来日記者会見が行われた。

『アメリカ、家族のいる風景』は、世界中を感動させた『パリ、テキサス』のヴィム・ヴェンダース監督と脚本サム・シェパードのコンビが描く20年振りの待望の新作。

脚本サム・シェパードと20年振りに仕事をしたことについて、監督は「『パリ・テキサス』をとった当時、我々はもうあれ以上の作品は撮れないと思っていました。なので、それ以来一緒に製作をすることはありませんでした。しかし、20年が経ち、今作品のストーリーが私の頭に浮かんでいた時に、シェパードに連絡をしてみたところ、お互いにまた一緒に仕事をしてもいい時機なのではと思っていることが分かり、製作するに至りました」

脚本のサム・シェパードは俳優としても高い評価を得ており、今作品では、落ちぶれた西部劇俳優、スターハワード・スペンスを演じている。監督は『パリ、テキサス』の製作時も、シェパードの出演を懇願していたが、「演じる自信がない」と断られていた。今回の出演してもらう経緯について「以前とは違い、私も賢くなったので(笑)、初めから彼に出演して欲しいとは言わず、“ジャック・ニコルソンに脚本をみせようと思っている”とシェパードに伝えました。言った時は彼は冷静を装っていましたが、少し経ってから「ジャック・ニコルソンは馬にも乗れないんだぞ!」と怒っており、私はシェパードが出演してくれることを確信しました(笑)」

ドイツ出身のヴィム・ヴェンダース監督が、今作はもちろんのこと、アメリカが舞台の作品を数本撮っていることについて「見ているだけで、スケール感の溢れる風景、それがまずアメリカの魅力です。また、アメリカで起きる現象というのは、その後に他の国でも起こる。ある意味アメリカは近未来だと言えます」監督は現在、8年間のアメリカ滞在に終止符を打ち、故郷のドイツで生活をしている。「アメリカについては、語りたいものは語りつくしました。この映画は、アメリカへの決別の作品です」

また、印象的に描かれている4人の女性について「作品の中の4人の女性は、現実をみつめ、立ち向かってゆく真のヒーローです。女性というのは、真実を受け入れる能力を兼ね備えている。それに対し、主人公のハワードは、自身の中の狭い世界だけにいて、大人になりきれていない。今作品で一番のヒーローはスカイです。彼女は全く新しいものを吹き込んでくれています。それは<許す>ということ。人を<許す>ことにより、今までに無い新しい関係が生まれてくるのだと思います」

最後に、作品で描きたかったことについて「私の父親はいつもそばにいてくれました。私は父を深く敬愛し、尊敬しています。父親がいなかったら、今自分がどうなっていたか想像もできません。作品では、いかに父親が必要か、そして、男にとって父としての役割がいかに大切かということを描いています。もしハワードのような立場の人がいたのなら、彼のように待つのではなく、自分から行動して欲しい。ハワードのような状況では遅すぎるということに気付いて欲しいです」。
(t.suzuki)

☆『アメリカ、家族のいる風景』は2006年、陽春ロードショー