妙ちくりんな自作の眼鏡をトランクに詰め、摩天楼が聳えたつ大都会テーブルスクエアに商いに行った緑色をした味な奴、グリーンピース。ところが彼の大事なトランクが、魔界“ブラックフット”に巣くう悪魔の親玉ジョーカーに盗まれてしまった!緑でマメなグリーンピースは、トランクを取り戻すべく、恐ろしくもマヌケな悪魔族が跋扈する“ブラックフット”に乗り込むと、熾烈でトボケたハード・アクションの渦に呑み込まれて行く!
 愛嬌溢れる奇妙なキャラクターたちが醸し出すトボケたユーモアと、そんなキャラたちが繰り広げる本格的なアクション・シークエンスの数々は、まさにエンターテイメントの極意を行く楽しさ満点!本邦初の本格的劇場用パペット・アニメ『緑玉紳士』は、ハリーハウゼン映画が大好きだったという映画マニアの父親を持ち「多分その遺伝子も入っているんですよ」と笑顔で語る栗太やすお監督の、商業映画デビュー作。昨今では実験的&アート的な使われ方をすることが多いコマ撮りアニメの手法を用いながら、ハリウッド製ブロックバスター・アクションも真っ青なエンターテイメント作品に仕上たセンスと技術力が、大注目な大阪在住の俊英だ。そんな栗田監督が、本作の個性的なキャラクター達&細密に作られたセットとと共に過日上京され、インタビューに応じてくれた。その時の模様を、今回から4回にわけてお届けしよう。

——コマ撮り作品を志されたきっかけは?

 「きっかけは、『ウォレスとグルミット』。丁度卒業制作の参考のつもりで見たら、「うわぁ〜っ!」となりまして。その時は立体物は出来なかったので、カットアウトアニメーションを作ったんですけど、こっちの方をやっていきたいと思いまして。それで次に人形で本作のパイロット版的なもの『RED SLOTMACHINE』を作り、それで本作のプロデューサーと知り合って、この作品になったんです。
 どちらかと言うと映画監督と言うよりは、アニメーション作家になろうかと思っていた時に『ウォレス〜』を見て、映画監督的なものを作っていきたいと思ったんです」

——49分の作品で製作期間は2年間と、時間も労力も大変なものですよね。その大変さは予想されてましたか?

 「予想はしていたんですけど、パイロット版と『緑玉天使』ではトータルクオリティで言えば10倍くらいの差があるんです。それでクリティが上がれば上がるほど、時間や予算も急激に上がり、思ったよりも全然かかってしまいましたね。プロデューサーも僕も、当初はパイロット版の3倍くらいのものを作ろうと思っていたんですけど、蓋を開けてみたらこれは結構すごいものが作れるぞって感じになり、そうすると今度はそれに見合ったクオリティでやっていかなねばならない。どうしても大変なことになりましたね(笑)。
 今回は、セッティングからライティングからもう完全に一人で撮影してました。敵のボス・ジョーカーの攻撃とかはランチボックスを使いました。カメラとかはリモコンですむんですけど、ランチボックスは指で押さなくてはならないので、その間はもうずっとこうして両手を精一杯伸ばして撮っていたみたいな感じで(苦笑)。人形制作で一人アシスタントがついたくらいで、あとはもう一人で365日中360日は仕事でしたね」

——ここにはグリンピースの頭が、全部で38個ありますが。撮影にはこれを全て使用しされたんでしょうか?

 「そう、これを全部ですね。実際にはあまり使わない頭とかもあるんですけど、コンテと見比べ、アイウエオが言えてかつ喜怒哀楽が出せることを押さえてこの数を作りました。
 ただ表情とかでは、今後の課題の部分もあって、もっと出していくようにしたいんですけど、まぁ、眼がないんでね。今回は表情が少なくても、人形がそれなりの演技を演じてくれています。今度は例えば人形によった時に、メガネのレンズ越しに本当は無い筈の眼的なものが見えてウィンクするとかをつけていきたいと思ってます。一発目でこれをやって、二発目はもっと凄まじいものにってね」

——床のフローリングや細々とした小道具まで作りこまれているセットも監督の自作ですか?

 「セットに関しては図面はミリ単位で自分でひいてますが、実際にに組む作業では人に頼んだ部分もあります。デザインに関してはピンキーの骨董屋等では、デザインができる人がいたので任せた部分もありましたが、やはり大体自分で図面をひきましたね。
 実は2分の短編を10本作ったんですよ。そういうのがあると、流す媒体等によっていろいろ使えるというのもありますし、せっかくこうしてセットを作ったのでその内部とかをもっとよく見せたいと思ったんですよ。だからそちらでは、楽器屋の話とか居酒屋の話とかもあったりします」

…To be continued.

☆『緑玉紳士』は2005年4月30日より、渋谷 シネマライズほかにてモーニング&レイトロードショー公開!
(殿井君人)

□栗田監督インタビューリンク
栗田やすお監督インタビュー −2−
栗田やすお監督インタビュー −3−
栗田やすお監督インタビュー −4−
□作品紹介
緑玉紳士
□公式頁
緑玉紳士