庭に野生がつながれ、狩人は自然の意味を知る。
村の牛を再三襲うオオカミの群れ。狩人イゴールは、とどめを刺そうとしたメス狼を不憫に思い家に連れ帰る。傷は治ったものの野性の本性を剥き出しにする狼。狩人と狼を通じて、自然と人間の普遍的な関係を浮き彫りに。

本日、TIFFコンペティション部門にエントリーされた『狼といた時』の記者会見が行われた。登壇したのは、イゴール役のオレグ・フォミン氏。「ロシアとこの映画を代表してこの場に来れてとても光栄です。ここの招待はとても意外でした。なぜなら、この映画はショービジネスとは全く関係なく作られたからです。だからこの作品選んでくれた方達に感謝します。それに俳優としては観客がそのような反応するのか興味がありました。分かった事はロシアの観客と同じ反応という事です。個人的には未知の国が見れました。最近、沢山の善意に触れ温かい気持ちになります。身近にする事のなかった日本の文化。ここを去るのはとても残念な事です。」とゆっくりした口調で語ってくれた。

Q.狼と人間の関係描いた作品ですが、出演前と後では動物や自然に対する気持ちはどう変わってきたか?
オレグ「狼の群れと半年位一緒に暮らしていっても過言ではないからアパートや石造りの建物など忘れている自分がいました。あと、俳優なら逃げたり欺いたり出来るが、野生の動物には通用しない。そのような経験は私の人生の一部になりました。」

Q.狼の群れとそんなに長い間いて嫌いにはならなかったか?
オレグ「なりませんでした。いずれにせよ幸運でした。動物と付き合い、今まで知らなかった世界が見れたので。問題は狼とずっといてエキゾチックな雰囲気になりすぎてプロの俳優、という事を忘れないようにする事だけでした。」

Q.どのようにして狼と付き合っていたのか?
オレグ「体見せてもいいですよ。笑)実は、傷跡沢山あります。しかし彼ら(狼)は私を敵と見なして噛付いたんじゃないと思います。彼らを研究してよく仲間同士で噛付いているところを見ましたから。あれは友情の証なんです。もちろん痛かったですけどね。」
本日会場にはお越し頂く事が出来なかったが監督は、ニコライ・ソロフツォフ氏。監督やプロデューサーとして活躍する彼は、これまでに50本以上のSFや娯楽作品をプロデュースしており、いずれも人気を博している。代表作に『MishkaBabyandOthers』、『BearsFootprint』等。

現代に通じるテーマを描いた本作は、人間と自然界の共存から生じる普遍的な問題や、様々な文明が起こす国際的な問題を、異なったイデオロギー、宗教、社会制度、政治制度、そして生物学上のシステムを通じ、その適合性を問いかけている。
(菅野奈緒美)

□作品紹介
『狼といた時』
□東京国際映画祭
http://www.tiff-jp.net/index_j.html