三百人劇場では、深作追悼特集としてデビュー作の『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』から近年の遺作となった『バトルロワイヤル』まで、全60本のうち55本を公開する。前回開かれたシンポジウムでは映画監督の佐藤純彌、脚本家の神波忠男、プロデューサーの吉田達を招いてアーリ−深作について大変面白い話が飛び出し盛会だったという。今回は、深作欣二の妻であり女優としても活躍している中原早苗を招いて映画評論家の山根貞男を聞き手に対談が催された。ちょうど直前に上映していた『狼と豚と人間』は、中原さんが深作に出会った作品でもある。深作の方はどうやら中原早苗のファンだったらしき模様。『狼と豚と人間』の出演依頼があった時は、タッチの差で東宝のとある映画への出演が決まっていた。中原さんは掛け持ちでやるつもりだったそうだが、「深作組で掛け持ちは無理」と言われ、普通なら先に決まっていた東宝映画を優先させるけれど東宝映画より東映の方が肌に合うというような理由で先方を断ってこちらへの出演を決めたという。しかし、それが映画監督深作欣二との衝撃的な出会いのきっかけ、ということでもないらしい。彼女によると、深作とが打ち合わせもなかったし現場でも演技指導こそあったもののそれ以外ではほとんど口もきかない状態で、彼女の中では深作に特別な感情が芽生える隙もなく、ただ女優として1つの作品で仕事をしたというような印象だった。しかし、撮影終了後にも深作から電話やら手紙やらの猛烈なアプローチをうけ、「なんてしつこい人なの!」と困惑した中原さんが祖母に相談したところ、おばあさまが深作をいたく気に入り、出会ってからわずか3ヶ月という短期間で結婚することになったという。こちらとしては、若き映画監督と女優の結婚に、一大ロマンスのようなものを期待せずにはいられないものの、当の中原さんは案外あっさりと結婚までの経緯を話されているのでちょっと拍子ぬけせずにはいられない感じもありました。(もしかして照れていたのでしょうか?)次回6月8日には息子の深作健太さんをゲストに対談が予定されています。健太さんは現在深作監督の意志をついで、未完成だった『ばトルロワイヤル�』を監督しました。対談は『バトルロワイヤル』の直後ということもあってきっと面白い話がたくさん伺えるのではないでしょうか。

☆三百人劇場では「追悼特集・映画監督深作欣二」作品55本を公開中!!(この特集は6/8まで続きます)

(綿野かおり)