寡作の映画監督・吉田喜重の『嵐が丘』以来十年ぶりの新作となる『鏡の女たち』初日舞台挨拶が4月5日東京都写真美術館ホールで行われ、監督の吉田喜重、主演の岡田茉莉子、田中好子、一色紗英が作品について語った。

今年で女優生活50周年目を迎え、そして本作が154本目の主演作となるという
岡田茉莉子
「あっというまに女優になって50年経ってしまいました。その間にあった様々な経験すべてをこの映画に出し切れたらという気持ちで撮影に臨みました。」

記憶喪失という難役に挑んだ田中好子
「数少ない日本映画の巨匠である吉田監督、大先輩の岡田茉莉子さんとご一緒できて大変光栄です。記憶喪失という大変難しい役をいただきましたけれども、微かに憶えていることでも本当なのか嘘なのか、わからない悲しさと、それでも必死に生きていく強さを表現できればと思います。監督さんの『オッケーよかったよ!』という言葉に励まされてがんばることができました。」

映画出演は久しぶりになる一色紗英
「私はこの仕事をはじめて十年以上経ちますが、実際映画の仕事は今回で二作目なんです。吉田監督、岡田さん、田中さんとご一緒させていただいたんですが、私なんてほんとド素人だったのでまったく新たに学ぶような気持ちで取り組みました。毎日緊張で胃が痛くなる思いでした。貴重な経験ができて幸せです。」

見所について吉田監督
「私が作った映画に関して監督がそれを語るというのは非常に危険だと思います。私がすべてを語ってしまうのではなく、ご覧になったお客様が見るものがその映画のすべてなんです。監督が解説したりすることは本当はいけないこと。それでも映画監督というのは語りたがるものなんですけれど。(笑)テーマになっているのは広島の原爆です。しかし本当に原爆について語ることが出来るのは実際にあの日あの場所で被爆し、そして亡くなっていった人たちです。あの光を見ていない者が語るのは嘘になってしまう。けれど、私の中にも戦争の記憶があります。私が大変な思いをしたのは実家があった福井でのことでした。広島長崎の原爆のことは私の受けた被害よりもより大変なものであったことが想像できます。戦時中を思い出すとき、福井でのことは大変でしたが戦前の楽しい思い出もあるので救いでもあるわけですが、広島長崎という言葉を聞くと地名を聞いただけでも苦しい気持ちになります。そういう気持ちをこめました。戦争での、国家だとか殺しだとかいうことはすべて男性の論理です。この作品では、原爆を女性の目から見かえしたものになっています。」

◆『鏡の女たち』は4月5日(土)より東京都写真美術館ホールにてロードショー公開中!!

□作品紹介『鏡の女たち』

(綿野かおり)