刑事(けいじ)まつり。それは篠崎誠監督のノリで言ってしまったひとことから始まったという。「知り合いの監督たちみんなで短編映画撮りおろしの新作作ります。で、1月の劇場公開に間に合わせます!」
そうして低予算・短期間で出来上がったのが、この、男ばかり12人の名だたる監督たちによる刑事もの短編オムニバス。各監督に出された“通達”はこんな3ヶ条である。

壱、主人公は刑事であること!
弐、完成尺は十分を一秒でも超えてはいけない!
参、一分につき裁定でも一回ギャグを入れること!

 参加監督は『EUREKA』の青山真治、塩田昭彦監督『どこまでもゆこう』助監督の市沢真吾、市川実日子主演『タイムレス・メロディ』の奥原浩志、『アカルイミライ』の黒沢清、『発狂する唇』の佐々木浩久、今企画の幹事でもある篠崎誠、『リング』シリーズ脚本の高橋洋、『完全なる飼育ー愛の40日』の西山洋市、『理髪店主のかなしみ』の廣木隆一、『グローウィン グローウィン』の堀江慶、『UNLOVED』の万田邦敏、『恋のたそがれ』の山口貴義(名前50音順、敬称略)。

 中には、かたくなに嫌がる監督、無理やりデビューさせられた監督、自ら他の作品に出演しちゃった監督等、様々な人間模様が渦巻いていた模様。なだめてすかして無事12作が完成。その様相はまるで学園祭といった風で、大人になっても少年の心を持ちつづける各監督が、自分自身楽しんで作ってしまった(やっちゃった?)という感じなのである。諸事情によりビデオ化及びDVD化が不可能等、いろんな曰くがついてしまった今作。シネマ・下北沢での初日舞台挨拶に、事件の張本人12人の監督のうち8人が登壇した。

篠崎誠監督(『忘れられぬ刑事たち』)——今回幹事をやりました。こんなにたくさんの人が来てくれるとは思っていなかったので、何かぶつけられるんじゃないかって監督たちみんなびびってます。

廣木隆一監督(『刑事VS刑事』)——こんにちは。『刑事VS刑事』をやらさせて頂きました。

高橋洋監督(『だじゃれ刑事』)——中学生の発想を映像化しました。

黒沢清監督(『霊刑事』)——ほんとにいやでした(笑)。ですがなんでも一番になろうってことで一番くだらない作品になればいいなと思ったんですが、もっとくだらない作品があったのかもしれません。

佐々木浩久監督(『だじゃれ刑事』)——撮影時間は一時間半くらいかな。今回はそういう筋のものかと思ったんで。そこを楽しんで下さい。

山口貴義監督(『モーオタ刑事』)——モーニング娘を追いかけすぎてこんな作品になってしまいました。

奥原浩志監督(『さよなら地球刑事』)——余裕なくやってしまったので、一生懸命やりすぎちゃったかなって思ってます。

堀江慶監督(『引き刑事』)——雪国に行って撮ったんですけど気合が入ってたわけではありません!

この『刑事まつり』、「懲りずに第2弾が決まっている」とは篠崎監督。その証拠に、なんと是枝裕和監督、塩田明彦監督が参加を承諾済みだという。機会があればどんどんやっていきたいというその発言に、今回参加した監督たちも「次回も是非!」・・と言ったかどうかは定かではない。

なお、『刑事(でか)まつり』は1月11日から24日までシネマ下北沢にて、絶賛公開中!!

(Yuko Ozawa)