全世界の映画祭や批評家から絶賛された『パーフェクトブルー』の原作『夢なら醒めて……』の実写版が公開される。監督は数々のピンク映画を新感覚で描き、異彩を放ってきたサトウトシキ監督。

フリーターのさえない男、利彦はアイドル予備軍・浅香アイに夢中だ。メジャーアイドルを目指すアイは、ある日コンビニで働く利彦と出会う。アイの事なら出身地から通っていた歯医者まで知らないことはないと告げる利彦に、アイは驚きと共に親近感を覚える。利彦との出会い、マネージャーへの恋心・・・自殺した親友の曲『夢なら醒めて』でCDデビューを間近に控え苦悩するアイ。そんな中、日増しに利彦のカラダに異変がおこり、体毛が抜けおち、利彦の身体が・・・。

主役の浅香アイを演じるのはモデルとして活躍し「天使の火遊び」で映画初出演を飾った前田綾花さん。今回は初の一人二役、全編に流れる歌に挑戦など、話題が多い。
素顔の綾花さんは、シュワシュワと泡が立つプレンソーダのような、透明なのにちょっと何かが心に残る、そんな女の子だった。

浅香アイの役を最初にもらった時、どう思われましたか。

特別な感じにはしたくなかったんですよね。普通の女の子。でも自分では普通と思っていなくて、特別になろうと頑張っている女の子。

アイドルを目指しているアイですが、綾花さん自身と共通する部分はありましたか。

モデルを始めた時、最初は現場で、何を言われてるかわからなくて戸惑ったりした事が沢山あったんです。これでいいのかなと思っても言えなかったり。まだ慣れていなくて。そういう部分はありました。

今回の映画の現場はいかがでしたか。

楽しかったです。カメラマン役の田中要次さんは映画でご一緒させていただいたのは3回目なんですけれど、いつも私に対しては意地悪な役ばかりで「またかよ」と。「綾花ちゃんに嫌なイメージしかもたれてないよな、きっと」と。本当は凄いやさしい人なんですが。

今回の共演者は面白い役者さんが多いですよね。

凄い人達ばっかりで。色々と勉強になりました。大森南朋君と一杯話して、役者にとって一番大切な事は何かとか。南朋君の話を聞かせてもらって「でもこういうのは個人個人で違っていいんだよ」と。色々教えてもらいました。

利彦役の大森南朋さんはですね。

現場では凄い面倒をみてもらって、お兄ちゃんというよりお父さんみたいでした。芝居をする時も凄いやりやすくて、ちゃんとこっちのを見て答えてくれるんですよね。今回はそういう人達ばかりで、やり易かったです。

サトウトシキ監督から何か言われた事はありましたか。

あんまりしゃべらない方で、現場の空気を作ってくれるというか。「こうしろ、ああしろ」とはほとんど言わなれかったです。あんまり何も言われなかったんで、だから逆に自分で考えながらやりました。仕事の時のアイと一人になった時のアイが、ちょっと変わっているようにとか。

初めての一人二役への挑戦でしたがいかがでしたか。

顔は同じですけれどまったく違う人物だから、混乱する事もなくやりすかったです。一番の違いは、男のアイの方は世界中にアイは一人でいいんだと思っていて、自分が死ぬかもしれないとわかっているんだけれど、女のアイが死ぬかもしれない、それだったら私が生き残ってやろうという根元に置いて、ちょっと嫌な感じにしました。

映画の中で歌うシーンがありますし、BGMとしても綾花さんの歌がずっと流れますね

歌を録音した時に、撮影中で卒業式の日で疲労困憊で・・声が出なかったんです。それで撮影後に撮りなおして。疲れて、撮影中、真っ直ぐ立っていられない位の時もあって。よく見ると揺れているんです(笑)夜のシーンが多くて、夜が遅くて。監督さんが粘る人で、シチュエーションを作るまでが長くて。

歌は昔から得意だったのですか。

三味線と民謡は小さい時から習っていて、お婆ちゃんがお友達と習っていた所で一緒に。小学校から中学校卒業まで。三味線は6年位、民謡は9年間。好きな民謡は岡山の「下津井節」。小学校6年生の時、その民謡の大会に出場して、歌詞を間違えて落ちちゃって。それが悔しくてそれから一杯練習して好きになりました。

女優として映画の本数も増えて来ましたが、目標としている女優さんはいますか。

麻生久美子さん。会うと緊張しちゃって、お辞儀して手を振るのが精一杯(笑)綺麗でやさしくて気さくで、あこがれです。外国だとアンジェリーナ・ジョリー。「17歳のカルテ」で凄い好きになって。こんなのをやりたい、強い女の子というのはやった事がないんで。内面的には強くても表に出す役はやった事がないのでやってみたい。でも見た目のイメージで影がある役が多いので。切ない儚いとか不思議系とか。全然普通なのに(笑)でもそういう役は自分で考えるのが多くて楽しいです。

この映画はどういう人に見てもらいたいですか。

色んな人に観てもらいたいです。サトウトシキワールド、監督の独特に色が、日本映画にはあまりない雰囲気なのでぜひ観て下さい。

(取材構成・鈴木奈美子 撮影・齋藤泰介)

□作品紹介
『夢なら醒めて・・・』