両親の寵愛のもと、頭脳明晰で見目麗しい28歳の青年に育った、タンギー。しかし周囲の親も羨むこの青年は、実は両親のストレスをそれと知らずに増大させる恐怖の“パラサイト・シングル”だったのだ。
 第10回フランス映画際横浜の上映作品『タンギー』は、『人生は長く静かなる河』などの作品で、家族や人生についてを不思議なユーモア感覚で描いてきたエティエンヌ・シャティリエーズ監督の最新作。ブラック・ユーモアを交えつつ描かれた、愛する息子を追い出そうとする両親とマイペースなタンギーの姿は、実家住まいの男達は引き攣った笑いをおぼえる事も必至だけれど、ええ気持ちにさせてくれるラストが実に感動的なドラマだ。本作の主人公でかなり個性的なキャラクターの持主であるタンギーを、演技なのかそれとも地か(まさかね)と迷うほどに自然体で演じていたのがエリック・ベルジェさん。映画祭の合間にお会いした彼は、すらりとした長身と、一つ一つの受け答えが実にスマートな好青年で、次回作として若手監督のデビュー作となるラブ・ストーリーへの出演が決まっているそうだ。

Q.笑えて考えさせる作品ですが、今回出演されたきっかけは?
——今回は脚本を読んで決めたというわけではなく、エティエンヌ・シャティリエーズ監督からテストをされたんです。それで最終的に残った時に初めて脚本を渡されたんです。

Q.それで脚本を読まれて、どのように感じられましたか。また演じていて難しかった部分などはありましたか?
——なんて不思議な人だろう…って。理解するのが難しかったですね(笑)。それで監督と話した時に、これは一つの社会現象としてとかは捉えるな、全く違った人なんだから、ほかにいるかどうかとは考えずに一緒に作り上げようと言われ、それですごく興奮したんです。演技自体は監督の指示に従って演じるということで、特別に難しい部分はなかったですよ。ですから誇張もありますが、脚本を読むのと実際に演じることは違ってきますからね。それで最後にラッシュが上がったものを見て、こういう役立ったのかって感じでしたね(笑)。

Q.エティエンヌ監督とのお仕事はいかがでしたか。
——ひじょうに素晴らしい監督で楽しかったですが、同時に要求の厳しい方で、口は優しいのですがかなり指導されました。シーンによっては10回以上に及んだものもありますし、最低でも5テイクくらいはやりました。

Q.映画の中ではアジアを研究しているという設定で、劇中で日本語を話す場面もありましたが、すごく自然でしたね。かなり練習などされたのでしょうか?
——2ヶ月間日本語のコーチがつき教わったんですが、台詞を繰り返し言って覚えた感じです。自然だったとしたら、そのコーチのおかげですね。帰国したら電話しますよ。喜んでくれると思います(笑)。
(宮田晴夫)

Q.サビーヌ・アゼマさん、アンドレ・デュソリエさんといったベテラン俳優さんとの共演はいかがでしたか?
——私もすでに10年くらいプロとしてやっていますので自分なりのものを持っていると思いますが、やはり彼らから色々なものを学びました。それは、セットの中での演技でというよりは、セットに入る前どういった形でリラックスするかとか、セットに入ったときどういった形で集中するかとかそういった種類の部分が多く、我々全員作品に取り憑かれてましたので、映画の中の状況と同じでしっかり両親として暮らしたという感じですね。

Q.最後のシークエンスは中国でのロケですよね。ラスト中国での家族の姿がとてもいいですよね。
——映画の撮影は10日間だったんですが、個人的には後二十日ほど長居をしてきました。ひじょうにデリケートというかアジアには心が惹かれるものがありますね。映画の中での彼が、甘やかされてただ家にいたいという気持ちだったのではなくて、本当に家族を愛していたことが伝わると思います。

Q.最後に今回映画祭に参加された感想などをお願いします。
——映画祭では素晴らしい歓迎をしていただいてとても嬉しいと思いますし、皆さんへのメッセージとしては映画見てください。私達皆さんに会いたいですってことです。
(宮田晴夫)

 なお、『タンギー』は6月22日15時15分よりフランス映画祭横浜2002にて上映!。
(宮田晴夫)

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フランス映画祭横浜2002

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タンギー