平日の午前スタートに関わらず、ほぼ満席となったベルトラン・タヴェルニエ監督の「レセ・パセ」。脚本家ジャン・オーランジュの実話に基づく渾身の大作には3時間弱の上映終了後に割れるような拍手が。ティーチインにはタヴェルニエ監督、主演のジャック・ガンブラン、マリー・ジラン、プロデューサーのフレデリック・ブルブロンが駆けつけた。
 まずはベルリン映画祭で主演男優賞を受賞したカンブランへの質問。「この役を演じる上で難しかったのは、実在の人物でサン・クルー市に住んでるってことだった。もうひとつは彼は自分が英雄だなんて思っていなかったこと。結果的にそうなったものの、彼自身は日々の暮らしを大切にしていた。その生活の後から次々いろんなことが起こっていっただけなんだよ」。
 昨年に引き続きの来日となったマリー・ジランは恋多き脚本家(ドゥニ・ポダリデス)の愛人の一人である娼婦オルガを好演。客席からは“才能があって気の多い男性をどう思うか?”と質問が出たものの、「私自身でなくてオルガの話ですよね」とやんわりかわしつつ、「オルガはインテリではないけれど本能的にいいものを見抜くことができる女性。彼との関係は対等で、彼自身をそのまま受け止めていたんだと思います。2人はとてもいい関係にあったんじゃないかな」とコメントした。
 タヴェルニエ監督は撮影にあたり、警察の演習に使われている広大な公園に7、8つのセットを作ったという。「この時代のパリはドイツ軍にガソリンを持っていかれ、車も走ってない。街灯もついていない。車もなく光もなく、自転車だけが通ってる、そんなパリを再現したかった」(タヴェルニエ監督)。劇中の屋敷内、窓は青く塗られている。当時のパリでは空爆されないために、光が漏れないように塗りつぶす習慣があったのだという。また、監督は本作の撮影動機に関し、「作家のロマン・ロランも言っていたが『英雄とは自分のできることをする人』だ。劇中の人物は人種偏見に対して、ナチに対して闘う。私は彼らの生き様を同じ映画人として誇りに思う。イデオロギーより大切なのは過去を忘れてしまわないことなんだ」と語った。(寺島まりこ)

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フランス映画際横浜2002

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レセ・パセ