今年の2月、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での上映時にも、多くの観客に爽やかな感動の涙を誘った大林宣彦監督の『なごり雪』が、作品の撮影された大分県で現在先行公開され大ヒットを記録している。一番最初に上映された臼杵市では、市民数3万人の1/3を超える計1万2千人が鑑賞し、その後大分県内に拡大されての公開では、6日間で1万人突破の最短記録を達成し、公開から30日が経過した現在5万人を超える動因を記録し、なお大ヒット上映中だ。
 全国ではこの秋公開予定の本作の、大分での大成功を報告する記者会見が5月24日徳間ホールにて開催され、大林監督をはじめ出演者、スタッフそして作品に全面協力をした大分県臼杵市長の後藤氏らが来場。作品への思いのたけを、マスコミに語ってくれた。出席者それぞれのコメントの一部を、こ紹介しよう。こに

山本洋大映株式会社副社長
——大映としては初の大林監督作品です。4月から地元の臼杵市で先行公開がはじまりましたが、これは市民の力映画人の力が一つになることで変化をもたらすであろうし、またそういう努力に応えたいという気持ちからです。大分県では6日間で1万人を突破し、同様に1万人を突破した『せんと千尋の神隠し』も超えるスタートとなり、昨日までの30日間で50,147人の人たちが観ています。最終的には大分県内のみで7万人を目指し、9月の東京スバル座での公開を中心に、全国に展開していきたいと思っています。また、映画館の無い小都市などでも、伊勢さんの歌や監督のトークを合わせた上映も計画しています。現在各地で自治体協力の映画作りが行われていますが、市民の皆さんが自分達の映画として盛り上げていった成功例の最初の作品だと自負しております。

山崎輝道プロデューサー(大分県TOS.E.P.プロダクション)
——映画を自分でプロデュースすることは、普通に田舎で生きている限りではあまり考えません。2000年のイベントで大林監督とご一緒し、ご縁ができたのがきっかけです。今回は大映さん、大林恭子Pにお手伝いいただきゴールできたというのが実際の所じゃないかと思います。製作期間は10ヶ月くらい。私は地元でやっていますので、チケットを持って自治体や企業を回りましたが、チケットの協力は勘弁してくれと。そこで方針を変え、本作に携わっているのべ2,000名くらいの地元スタッフが参加しているので、1枚ずつでもいいから地道に売っていこうと。全く団体動因をせずに、5万人という数字ができたことにはびっくりしてます。大分の映画ということではなくて、大人の恋愛映画としてのエンターテイメントに仕上がっていますし、大分の人々の気持ちが詰まっていますので愛してもらえる作品だと確信しています。

大林宣彦監督
——私は尾道で生まれ映画を撮ってきましたが、それは高度経済成長期に開発という名の破壊に町が壊されていくのに耐えられず、あるがままの尾道を残すためという姿勢で撮ってきました。町興しではなく町守りだったんです。尾道での20世紀の戦いが終わった後、ご縁が会って臼杵市長と出会いそんなお話をした時に市長から、「臼杵はまち残し、まち作りなんです。でもこの“まち”はcity ではなくwaitのまち。旧き良きものの活かしかたがみつかるまで維持して“まつ”のです」と伺い、これは私の映画の思想と同じだと思い、またこの町にはにお金やモノはいらないという凛とした姿勢があったんです。そこで21世紀の私の映画は、ここでスタートしたいと思ったんです。

後藤國利臼杵市長
——大分県臼杵市は映画の中に出てきた通り、昭和がそのまま残っているような町です。駅前開発すらほとんどなく確かに開発から落ちこぼれていると言えば言える町ですが、市民が皆でその古さを誇りに思い、それがいいんだと守り育ててきた町であります。昭和40年代におきたセメント工場誘致の話も、そのままの町を残したいという市民の声で阻止できたんです。そんな町としての“清貧の心”に誇りを持ってやってきました。まさか大林監督に映画を撮ってもらえるなどと思ってませんでしたし、そうして欲しいという期待も持っていませんでした。それが今回、認めていただいて映画の舞台となりました。観光客が増えるなど嬉しい変化も出ていますが、それでも今までの誇りは失わず、“清貧の心”による町づくりをこれからもやらなくてはならないと、新たな宿題を背負った町です。

伊勢正三さん(「なごり雪」作詞・曲・唄)
——「なごり雪」という曲は、とっくに自分の手を離れたものだと思ってました。自分の作った曲が聴く人の中に入っていってくれて、その人なりのストーリーで広がってくれる、本当に作家冥利につきるつもりで「なごり雪」眺めていた僕なんですが、50という僕自身にも大事な時に、自分のところに戻ってくるとは夢にも思って無かったです。ずっといろいろな曲を作ってきましたが、この年になってどんな曲を作ればいいのかと悩む時なんですけど、そういう時に思い返すと自分の作った作品は、自分が一番純粋だった時の感性に頼ってきていたということが判ってきたんです。「なごり雪」という曲は、かぐや姫で初めは作詞のみを担当していたのが、プロとして作詞・作曲した第1曲目なんです。あたかも天から降りてきたような、独特の感覚が会った曲なんです。僕が作る曲は全て古里の感性から戴いたものなんだと考えていた時期に、大林監督からお話をいただいて正直言って光栄に思いました。この映画はある人が見ると、ものすごく古臭く見えるかもしれません。だけど自身を持って、僕らはすごくまともな事をやったんだという気持ちです。

細山田隆人さん(主人公・青年時代の祐作役)
——皆さんが喋った後ですごく緊張しますけど、この作品とであったのは、去年の7月くらいにオーデションで選ばれまして、大林監督ということで緊張しておりましたが、言葉が今自分達が使っているものとは違う30年前のはっきりした言葉で喋らなくてはならないということで、そこからギブアップしそうで大変でした(笑)。昔の映画を見たり、発声の練習をしたりでなんとかやってきました。撮影は、去年の9月に臼杵で1ヶ月やりましたが、町は綺麗で空気もよく食べ物も美味しいすごくいい環境で、ずっとここにいたいと思うくらいでした。町の皆さんはすごく親切に映画に協力してくれて、お世話ばかりしてもらっていた気がします。ハードな撮影もありましたが、多くの方とご一緒できてすごく嬉しかったです。大林監督、大分県臼杵市、伊勢さんの唄というコラボレーションで自分の中でいい経験をさせてもらったと思っています。自分が出れたことを自慢できる作品ですので、多くの人に観ていただきたいです。

須藤温子さん(ヒロイン・雪子役)
——最近高校を卒業したばかりで、いろいろなことを考える時間が増えたのですけど、この映画のことを振り返るといい体験が出来たということで胸がいっぱいなんです。この映画を思うと涙もろくなってしなって…いろいろな仕事をやっていくと、いろいろな人の目が合って緊張したりするんですが、この映画をやった時は皆が私の“素”を見てくれて、色々な意見をしてくれて、特にこの仕事をしていた時の自分はナチュラルで、目標であるナチュラルな女優の第一歩をスタートできたというか、自然な作品だと思います。私も細山田君と同じで、こんな素晴らしい作品に出れたことが誇りに思え、多くの人が見てくれたら嬉しいですけど、見た人が様々な気持ちになっていい思い出を持ってくれれば嬉しいと思います。

なお、『なごり雪』はスバル座他にて、9月より全国ロードショー公開予定!。
(宮田晴夫)

□作品紹介
なごり雪

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大林宣彦監督インタビュー