寛容を忘れた時代に響き渡るボンゴの咆哮!映画『天然☆生活』シネ・ヌーヴォ初日舞台挨拶
2/8(土)、シネ・ヌーヴォにて上映が始まった映画『天然☆生活』。関西では9月の神戸・元町映画館に続いての公開だ。
田舎の生活を謳歌するニートのタカシ(川瀬陽太)、売れないよろずやのショウ(鶴忠博)、離婚してUターンしてきたミツアキ(谷川昭一朗)のおじさんトリオ。そんなある日、東京から越してきた自然派生活を実践する栗原一家(津田寛治・三枝奈都紀・秋枝一愛)が、タカシが居候するミツアキの実家である古民家に目を付ける。次第に侵食されていくタカシの生活。
舞台挨拶に登壇した永山正史監督は、
「今日はいろんな映画が封切りだと思うんですけども、この奇妙な映画を選んでくださって本当にありがとうございます。エンドロールがないのでまだ気持ちの整理がついていないと思いますが、最後までお付き合い頂けたら幸いです」
と、挨拶。続いておじさんトリオの一人、自然児・ショウちゃんを演じた鶴忠博さんは、自己紹介の後、
「山の上でうんこしたんですけど、あれは本当にやっていませんからね」と、映画そのままの自然児ぶりを発揮。「結構風があって、草がサワサワっとおいなりさんに触れて、変な気持ちでした」との天然コメントに観客も笑うしかない。
「いいシーンでしたよね。花が綺麗で(笑)」と山崎支配人がフォローし、
「美しいシーンですね」と永山監督が追い打ちをかける一幕も。
まずは山崎支配人から永山監督に、どのような構想でこの作品が始まったのかとの質問が。
「奇想天外過ぎて(笑)」。
「おじさんたちのわちゃわちゃかわいいところを撮りたいなっていうのが最初にあったんです」
根本敬さんの漫画が好きという永山監督。イメージはそこにあったようだ。
「最初メリーゴーランドに乗っていると思ったら実はジェットコースターで、しかもいきなりレールが外れた!みたいな。いろんな感情を同時に刺激される表現が好きで、怖いけど笑っちゃう。笑えるんだけどなんか泣ける。そういうのがやりたかったんです」
音楽の使い方については、
「古い映画が好きで、日活のロマンポルノや東映のピンキーバイオレンスが好きです」
オープニングクレジットやエンディングはそういった映画にリスペクトを捧げたという。音楽もそれらに合わせて昭和歌謡を選んだ。
「『星影のワルツ』と『見上げてごらん夜の星を』は、星っていうモチーフがぴったり合うのでチョイスしました」
鶴さんの出演のきっかけは、キャストを探していた折、紹介されたのが谷川昭一朗さん(ミツアキ)。見せられた写真に友人の鶴さんが写っていた。
「それを見た時にもうミッちゃんとショウちゃんにしか見えなくて」
こうして同時にキャスティングが決まったという。『天然☆生活』の中で、川瀬陽太さん(タカシ)・谷川昭一朗さん・鶴さんトリオの相性の良さは見ての通りだ。
鶴さんは奄美の出身で、顔立ちに南方の雰囲気があるという永山監督。
「“外来種はお前だろ”って鶴さんが言うシーンがありますが、もしかしたらそう言ってる本人も何世代か前にこちらに来た人じゃないかって、見てて感じるかと思うんです。そんな要素も面白いなと思って」
鶴さんは作品の感想について、
「面白かったですけど、自分の芝居を見るとちょっと恥ずかしいですね」
印象深かったシーンとしてコインランドリーで川瀬陽太さんと再会するシーンを挙げた。
「あれは涙が出ながらやりましたね」
自然児・鶴さんの涙腺を刺激したシーンは、改めて劇場で味わって頂ければと思う。
『天然☆生活』の中で印象深いのが、川瀬陽太さんが楽しい時も悲しい時も怒りの発露にも叩くボンゴの音。観客から演奏について質問が挙がる。ボンゴは大変難しい楽器だと語る永山監督。
「映画の中では、民謡クルセイダーズというバンドの小林ムツミさんの演奏に差し替えて使っています」
ある2つのシーンのみ、川瀬さんが叩いたそのままの音を使っているという。哀愁漂う音色にもぜひ注目してほしい。
その他、観客からは衝撃のカメについての質問や、都会からやってきた津田寛治さん・三枝奈都紀さん演じる栗原夫婦のエロティックかつ衝撃(?)のシーンなどについて質問が挙がった。
山崎支配人からキャラクター造形について聞かれた永山監督。
「Facebookなんかを見ているとマクロビや動物愛護の方が、そうでない方をすごく非難してくるのを感じることがあって。マクロビの人を非難する映画ではないんですが、マクロビであれ、政治的なことであれ、自分が正しいと思っていることを唯一絶対だと思って押し付けてくるようなやり取りを最近よく目にしていて、そういう空気が嫌で、かなり反映されていると思います」
「リアルにいそうで、強さも持っているし。突っ走るところも想像ができて面白かったです」
「彼らも彼らの正義で動いてるだけなので、決して悪人ではないですよね」
舞台挨拶終了後もロビーでは、監督と観客の方々でトークが続いた。女性の描き方については、共同脚本を務めた永山監督の妻である鈴木由理子さんが主導、おじさんたちは永山監督が主導したというコンビネーションの結果、強烈なシーンの数々が生み出されたという。栗原家の妻と娘の描き方が辛辣なのは女性自身が描写しているからで、男女平等を問われる現在、こっちの方が平等なのではないか、といったことなど、話は尽きず劇場の閉館時間まで続いた。
入場者にプレゼントされる川瀬陽太さんのブロマイドは、永山監督曰く「いい映画に出会う運は上がりますが、若干金運は下がります(笑)」とのこと。信じる、信じないはあなた次第。
現在のところ関西では、このシネ・ヌーヴォでの上映が最後の予定。ボンゴの咆哮を見逃すな!
上映予定は以下の通り。
シネ・ヌーヴォ 2/8(土)~2/14(金)連日20:30より
シネ・ヌーヴォX 2/15(土)~2/21(金)連日17:30より
(レポート:デューイ松田)