ドキュメンタリー映画『HOMIE KEI~チカーノになった日本人~』 公開記念KEI vs 進藤龍也 トークイベント
アメリカ極悪刑務所を生き抜いた男・KEIを追ったドキュメンタリー映画『HOMIE KEI~チカーノになった日本人~』が4月26日からヒューマントラスト渋谷他で全国公開されます。
公開に先立ち、KEIさんと、同じく元ヤクザで牧師の進藤龍也さんを迎えて、最近社会的な関心を集めているミュージシャンのコカイン使用問題中心のトークイベントを開催しました。
KEIさんは、元ヤクザで、覚せい剤の密売でハワイでFBIに逮捕され、アメリカの刑務所に12年投獄され、帰国後ヤクザから足を洗い、現在は児童虐待の問題に取り組んだり、家庭環境に恵まれない子供たちの居場所としてGood Familyという施設を運営したりしています。その人生は本作でも10年近く追っています。
進藤龍也さんは、同じく元ヤクザで、組長代理になるも覚醒剤で破門になり、3回目の服役中に刑務所で差し入れられた聖書に出合い、出所後にヤクザから足を洗い、キリスト教の洗礼を受けて牧師の道へ進んでいます。現在は川口市にある「罪人の友」主イエス・キリスト教会で牧師の活動をされています。その活動はKEIさん同様にいろんなメディアに取り上げられて、今週末21日(日)に放送されるフジテレビの「ザ・ノンフィクション」にも出演します。
この二人が、「麻薬の歴史的背景」、「覚せい剤・コカインの常用性」、「更生」、「セカンドチャンス」などについて、自らの経験を語りました。経験者にしか語ることが出来ない真実。
日時:2019年4月17日(水)
トーク:16:00〜16:40頃
登壇者:KEI、進藤龍也
場所:東京プレヤーセンター
トークイベントの序盤から、KEIさんが「羽田でカーチェイスしたのはコカインで、九州のヤクザもんに警視庁に売られて、その取引に行った時に、車の窓から全部持っているものを捨てたけれど、その中から100g位集められて捕まった。(当時日本の警視庁にコカインの情報がなく、)薬物テストをやっても何も出なくて、警視庁がアメリカに鑑定依頼を出して、それがコカインだとわかって、それで日本でコカインの法律が作られた。」と話し、劇中でも取り上げられている、武勇伝が飛び出しました。KEIさんは、「覚せい剤は、当時は炙って吸う人はいないから、注射器で打っていた。コカインは細かくしてテーブルと紙があれば鼻から吸えて、罪悪感がなかった。映画『スカーフェイス』(1983)の影響で、お金持ちのイメージがあった。ちょうどコカインを扱っていた時はバブル真っ只中。こっちが売り先を選ぶ、殿様商売だった。」と当時を振り返りました。
■薬物についての報道に関して
KEIさんは、「テレビで、『コカインを鼻で吸ったり、火で炙って吸ったり、注射器で打ったり』というのを『俺はコカインに詳しいんだ』というような奴が出てきて話しているけれど、ありえない話。コカインを水に溶かすと、透明にならない。見た目が悪い。俺は昔それを打ったことがあるけれど、打つと痙攣を起こすので、(痙攣しながらだと)腕が血だらけになるから注射器で打つことはできないし、覚せい剤みたいに銀紙で火で炙るというのはありえない。それをテレビで見た若い子たちが『1回やってみようぜ』と水に溶かして注射器で打って、死んじゃった時に、それを言った人は責任を取れるのか?伝えるのならきちっとしたことを伝えて欲しい。」と力説。
進藤さんは、「最近の報道はやりすぎ。刑務所から出てくる人は罪を償って出てくる訳だから、本来はやり直しをサポートするなり、見守るべき。1回刑務所に入る、1回刺青を入れてしまう、1回指をつめちゃうと、日本の社会ではレッテルを貼られ、セカンドチャンスがない。それは報道のあり方の問題でもある。以前捕まった芸能人は、10年20年も経って亡くなると、いい芸能人として報道されるけれど、今捕まっちゃうと、けちょんけちょんにされる。今が特別厳しいのではないか。」と語りました。
KEIさんによると、「コカインは鼻から吸っても、効いているのは20秒〜30秒。だから罪悪感がないのでは?」とのこと。MCが、世間的なイメージだと、ミュージシャンやアーティストが芸術的な表現に役立つと思って使っているというイメージがあると伝えると、KEIさんは、「それはない。何の薬物にしても、効いている時は考える能力もなくなるし、脳にダメージを与えているので、それでいいものができるわけはない。アメリカの有名なミュージシャンは覚せい剤でもコカインでもなく、ヘロイン中毒。ヘロインは、同じ場所から動けなくなり、18時間妄想にふけっちゃう。その中で音楽を作ることは不可能。自分はありえないと思う。自分はコカインをずっとやっていたけれど、動悸と不安感の中でいい作品ができるわけない。」と断言しました。
■自身が薬をやめたきっかけ
進藤さんは、「止めることができるのなら、依存じゃない。止められないから依存症と呼ぶ。止めるためにはより強い依存が必要。私の場合は、キリスト、聖書に出会って、これだと思って掴んだ。シャブ中が多い刑務所から出てきた人たちで、『やり直したい、もう刑務所に入りたくない、真っ当に生きたい』と言う人は教会に住み込ませる。(自分より9歳年上の)KEIさんの時代の人たちに、ヤクザから牧師になった人たちがいて、私には、『こういう人になりたい』というモデルがいた。私は鈴木啓之先生から洗礼を受けた。そこの教会で同じように住み込みさせてもらった。何が大変かというと、ヤクザをやめても、過去の客からバンバン電話が入るということ。止める人は、携帯を捨てなくてはいけない。番号を捨てないと、自分が欲しい時に買ってしまう。」と自分の経験を語りました。
KEIさんは、「19歳で最後に捕まった時に、覚せい剤に中毒になって、2年間どっぷり浸かっていた。仕入れに行って、持ってきたやつが自分に売る際、自分で味見をしてちゃんとしたものしか買わなかったので、京都などの普通の喫茶店で、普通に他のお客さんがいる前で注射で売って味見をしていた。覚せい剤の切れ目で本当におかしくなっていたんで、『こんなのやって』と注射器を流しで割っていたお袋を3発ピストルで撃って、それでパクられた。」と、映画のプロデューサーも初めて聞いた話を披露。その際、警察の人に、『不良をやっていて、売るのはわかる。自分までやっていてどうするんだ。もうちょっと利口になれよ』と言われて、馬鹿にされたと思って、ピタッとやめた。」と話しました。
■更生について
「意志が弱い人は止められないんですよね?」という質問に、KEIさんは、「止める気がないんですよ。覚せい剤よりももっと大切なものが見つからない限り、止められないっていうこと」と説明。進藤さんは、「いろいろな自助グループで話すけれど、本人たちの『止めたい』というのは嘘ではないんだけれど、何回も繰り返すというのは、どれだけ真剣だったのかという話。自助グループはなくてはならない組織だけれど、僕が受け入れられないのは、せっかく止めにきているのに、『なんとか中毒の●●です』と自己紹介させること。『元なんとか中毒』と言うべき。自分は中毒者だと洗脳している。」と持論を展開。
進藤さんは、「実際に刑務所に入っちゃった人間は、何度も入ると親も死んでいる、友達は呆れ、ヤクザの仲間しか助ける人がいない。行くところがなくて、ホームレスになるかヤクザになるかどっちか。刑務所を出た人間は、(暴力団排除条例があるから)口座も作れない、部屋も借りられない。僕たちがやっているやり直しの手助けは、ヤクザになっちゃった、前科者になっちゃったというような人間が対象。KEIさんがやっているのは、(育児放棄の親を持つ子供などが対象で、)子供のうちの、そうならないためのセーフティーネットだと思うんです。僕も9歳の時から母が夜仕事に行って、ひとりぼっちで、寂しさを紛らわすのに、子供同士で集まった。夜子供だけで集まっていて勉強なんてするわけがない。不良になるしかない。それを食い止めているのが、KEIさんの分野。」と説明しました。
相談してくる人について、進藤さんは「ヤクザの事務所から直接来る。オレオレ詐欺で心を痛めている掛け子もいる」と言うと、KEIさんも、「刑務所からたくさん手紙が来る。来る手紙には全て手紙を送っている。刑務所のライフラインといえば切手。半年に1回1人に100枚ずつ切手を送ってあげている。刑務所を出るまで手紙のやり取りをする。殺人、覚せい剤で入っている子もいる。出てきたら1回は会う。その子がこの先真面目に生きていくかは、初対面で大体分かる。真面目になりそうだと思えば、できる仕事を紹介してあげたりする。子供たちに関しては、『おじさんみたいなことにしていると刑務所に入っちゃうよ』と言う。中学生くらいまではそれが効くけれど、16歳を過ぎると逆にそういう風になりたいという憧れが出てしまう。」と言うと、進藤さんも、「『強い大人=かっこいい』になる」と同意しました。
■メッセージ
KEIさんは、「若い子たちが聞いて、やってみたいという子が出た時に、命を落としたり、脳障害を起こしたりする子が出るから、テレビでやるのであれば、真実を伝えてくれないと。」と強調。
進藤さんは、「自分が何のために生きているのかということを早く見つけ出してほしいなと思います。めちゃめちゃだったKEIさんが社会にいい影響を与える位になれるというのはみなさんの明るい希望でもある。自分の人生に芯が入るものがあれば、人生変わることができるのではないか。『HOMIE KEI』は、そういう人たちが生き返るような、生き直せるような作品なので、見ていただければと思います。」と応援メッセージを残し、本イベントは終了しました。
ヒューマントラスト渋谷での初日舞台挨拶付き回のチケットが販売中!
4月26日(金)20:50の回 上映前(20:50から初日舞台挨拶開始予定、その後本編より上映)
【登壇者(予定)】KEIさん、北芝健さん(元刑事/本作品に出演)、サカマキマサ監督(映画監督)
詳しくはhttps://ttcg.jp/human_shibuya/topics/2019/04151302_7097.html
■登壇者プロフィール
KEI: 1961年、東京・中野生まれ。中学時代にグレはじめ、暴走族を経てヤクザの道へと進む。ヤクザ時代に大成功を収めるも、ハワイでFBIの囮捜査にはめられ、ロサンゼルスを始め、サンフランシスコ、オレゴンなどの刑務所を転々とし、10年以上服役。出所後は、アパレルブランドを立ち上げ、日本のチカーノ・ブームを牽引。米刑務所内での経験や勉強を生かし、ボランティア団体『グッド・ファミリー』を設立し、現在はNPO法人化された。青少年育成に関するカウンセラーとしての講演も多数。
これまで『KEI チカーノになった日本人』『アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人』(いずれも東京キララ社)が出版され、別冊ヤングチャンピオンにて『チカーノKEI』(秋田書店)の原作者として連載を続け、単行本も発売。1~5巻合わせて発行部数50万部突破。「水曜日のダウンタウン」(TBS)「クレイジージャーニー」(TBS)「BAZOOKA!!!」(BS スカパー!)「DOMMUNE」 「TIME LINE」(TOKYO FM)「AbemaPrime」(AbemaTV)などメディア出演多数。4月下旬、東京キララ社からKEIの歌舞伎町時代を描いたノンフィクション『チカーノKEI 歌舞伎町バブル編』が刊行される。
進藤龍也:1970年埼玉県蕨市に生まれる。中学の頃からグレ始めて、高校1年で退学、その翌年少年鑑別所収監。さらにその翌年にスカウトされヤクザになる。広域指定暴力団S会の組員となる。2000年(30歳)覚醒剤使用で3回目の収監。差し入れられた聖書を読み、塀の中で改心する。その間15回の逮捕、前科7犯。
現在は、埼玉県川口市にある「罪人の友」主イエス・キリスト教会で活動し、日本各地の受刑者を訪ねたり、出所して行き場のない者たちを協教会に受け入れて、社会復帰までサポートしている。4月19日、みつば舎から著書『元極道牧師が聖書を斬る!マタイの福音書(上)』が刊行される。
■映画情報
出演 KEI / 監督 サカマキマサ / 撮影 加藤哲宏 / 編集 有馬顕 大畑創 Travis Klose
音楽 原夕輝 / プロデューサー 中村保夫 YAS/プロデューサー MASA 戸山剛
原案 東京キララ社『チカーノになった日本人』 『アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人』 宣伝協力 秋田書店 配給 エムエフピクチャーズ 制作プロダクション・配給協力 マウンテンゲート・プロダクション
2019年|日本|カラー|5.1ch|ビスタ|DCP|73分
©「HOMIE KEI~チカーノになった日本人~」製作委員会
HP http://homie-kei.com/