3月23日よりベトナム映画『漂うがごとく』『ベトナムを懐う』が2本同時公開され、スペシャルゲストにベトナム人女優・フォンチーさんを迎えトークイベントがケイズシネマにて開催されました。

女性の性をテーマとした『漂うがごとく』初回上映後のトークショーには、元「アイドリング!!!」で活躍し現在はベトナム人女優として活動するフォンチーさんが伝統衣装アオザイを着て登壇し、本作の魅力をたっぷりと語りました。

フォンチーさんは『漂うがごとく』の感想として「主人公の表情で季節が分かり、スコールのような雨、大量のバイクのようなこれぞベトナムという情景がゆっくりとした時間の中で流れていくことが印象に残ってますね。描かれているベトナムの日常に懐かしみを感じました。」と述べた。劇中、新婚のヒロインの前に魅力的な男性が現れ、夫がいながらも心惹かれていきますが、同じ立場だったらどちらの男性を選ぶかという質問で「えー…どっちも嫌です(笑)!夫は無垢で、悪く言えば子供っぽい、もう1人の男性は悪い面を持っていて誘惑するような魅力をもっている。本当に両極端なので、…わたしは中間の人がいいです。でもベトナムでもこんなふうに両極端な男性が多いんですよ」と答えた。本日公開となるもう1作『ベトナムを懐う』では、ベトナムでの生活しか知らない祖父、ベトナム戦争でアメリカに逃れた父、アメリカで生まれ育った孫娘の3世代の世代間ギャップがテーマであるが、ベトナム特有の家族観について「ベトナム人は家族の上下間がすごいです、父の言うことは絶対、おじいちゃんの言うことはもっと絶対。」と語る。「だから、この映画に登場する孫娘に私は一番共感しました。自分も日本で生まれ育って、ベトナム人だけどベトナムの価値観はわからない。おじいちゃんのことも他人同然としか思えない孫娘の心情は理解ができます」

また、本日は12月公開予定のベトナム映画「サイゴン・クチュール」も紹介された。一足先に映画を見たというフォンチーさんは、自身のアオザイを指しながら「こういった刺繍に込められた思いを感じるお話です。ぜひお楽しみに!」と締めくくり、最後は大きな拍手に包まれた。

【物語】
『漂うがごとく』17歳の時にトラン・アン・ユン監督「夏至」(2000)に出演し女優デビューしたドー・ハイ・イエンが、初々しい新妻から、情念を身にまとった女に徐々に変わっていく姿を見事に演じ、湿度の高い亜熱帯の空気の中で満たされない想いを抱えながら彷徨う現代ベトナム人達の姿が描かれる。
『ベトナムを懐う』祖国を離れ、ニューヨークで暮らす3世代のベトナム人たちを描いた戯曲が原作。長く戦争が続いたベトナムの歴史を背負いながら、異国で故郷をおもう各世代の心情を丁寧に描いている。監督は「サニー」ベトナムリメイク版『輝ける日々に』のグエン・クアン・ズン。世代や文化のギャップが生むユーモラスな衝突から、息子とその父親、そして孫娘が対峙することで、ベトナム移民の哀しい背景を描き出した一作。

『漂うがごとく』(原題:Choi voi/英題:Adrift)監督:ブイ・タク・チュエン 脚本:ファン・ダン・ジー 撮影:リー・タイ・ズン
音楽:ホアン・ゴク・ダイ
出演:ドー・ハイ・イエン リン・ダン・ファム ジョニー・グエン グエン・ズイ・コア
【2009年/ベトナム/106分】©Vietnam Feature Film Studio1,Acrobates Film
『ベトナムを懐う』(原題:Dạ cổ hoài lang/英題:Hello Vietnam)監督:グエン・クアン・ズン 出演:ホアイ・リン、チー・タイ
【2017年/ベトナム/88分】 ©HKFilm
配給:ムービー・アクト・プロジェクト 公式サイト:
mapinc.jp/vietnam2films