スパイク・リー監督最新作『ブラック・クランズマン』が3月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開致します!(配給:パルコ)1979年に黒人刑事が過激な白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)に潜入捜査するという大胆不敵な事件を克明に綴った同名ノンフィクション小説を鬼才スパイク・リー監督が映画化!!第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した『万引き家族』の次点となるグランプリを受賞し話題が沸騰。さらに先日発表となった第91回アカデミー賞®では脚色賞を受賞!主演のロン・ストールワースを演じるのは名優デンゼル・ワシントンを実父にもつジョン・デヴィッド・ワシントン。デンゼル・ワシントンがその名を知らしめた傑作『マルコムX』で映画出演を果たし、奇しくも同じスパイク・リー監督作品の本作で主演として脚光を浴びる。ロンの相棒フリップ・ジマーマンを『スター・ウォーズ』シリーズ新3部作でカイロ・レン役を演じ、『沈黙 -サイレンス-』、『パターソン』などで演技に定評のあるアダム・ドライバーが演じる。そして、監督、脚本、製作のスパイク・リーに加え『セッション』のジェイソン・ブラム、そして『ゲット・アウト』のジョーダン・ピール監督とアカデミー賞最強布陣が製作に名を連ねる。

アカデミー賞®にて、脚色賞を受賞した『ブラック・クランズマン』。公開&原作本発売記念!“全員WAKE UP!! トークショー”の開催が決定致しました!当日は、書籍『ブラック・クランズマン』の監修を担当し、音楽情報サイト『bmr』の編集長を務める音楽評論家・丸屋九兵衛氏と、ラッパーなど音楽活動のほかニュース番組の司会などマルチに活動するダースレイダーが登壇。ブラックムービーをはじめブラックカルチャーに造詣の深い2人が熱く語りました。

『ブラック・クランズマン』“全員、WAKE UP!!トークショー”概要
【日時】 3月14日(木)18:50~19:50(60分) ※上映なし
【場所】 タワーレコード渋谷店5階 (東京都渋谷区神南1丁目22−14)
【ご登壇者(予定)】 丸屋九兵衛、ダースレイダー

観客が集まる中、MCの呼び込みで会場に登場したのは本作原作本の監修を担当した丸屋九兵衛と、ヒップホップミュージシャンのダースレイダー。
「今日はアカデミー賞スパイク・リー監督がとったときのスーツと同じ仕立て屋のスーツで来ました。」と丸屋さんが話し、トークショーが始まりました。

1. 原作「ブラック・クランズマン」と映画『ブラック・クランズマン』
丸屋「正直な話をすると、原著(アメリカで出版された元の本)は編集がとても甘い!(笑)映画を観てもわかると思うのですが、これってKKKの潜入捜査のことだけまとめればいいのに、その数年後の話も含まれるわけです。」
ダースレイダー「基本は主人公の”俺(=ロン)”の人生の話。KKKに潜入した、という特殊なストーリーを補うために、後半に“俺話”が長々と続くんですよね。ビッグマウスなロンさんが西海岸のギャングの抗争も俺が止めたんだ!とか言っていて、もしかしたら、ヒップホップが好きな人には読みやすいかもしれないです。」
ダースレイダー「原作を読むと分かりますが、ロン・ストールワースはうっかりな人です。この話は嘘も含まれているんじゃないか、と意見もありますが、、」
丸屋「嘘にしては下手すぎますね。うっかりKKKに電話をかけて、うっかり本名を名乗ってしまったんですよね。そこで原作だとチャック、映画だとユダヤ系である刑事のフリップがロンに代わって潜入捜査に行くわけですが、実は原作では、この2人、どちらもいなかった時に他の人が電話に出たこともあった、なんて話も出てくるんですね。創作だったらそんな下手なことあるか!って感じですね。」
ダースレイダー「ちなみに、この2人が電話で入れ替わっていてバレなかったのがおかしい、と言う意見もあるようですが、これに関しては、70年代の電話って音が悪かったんじゃないか、と言うことで丸屋さんと意見が一致しています。警察で盗聴用のシステムを使っていたらことさら、音が悪かったんじゃないかと思います。そこでこの電話捜査がバレなかったんじゃないかと。」
丸屋「なんだか二十代の男の声なんだな、くらいにしか聞こえなかったんじゃないかな、と思います。」
ダースレイダー「もう一つ重要な話があって、原作ではこの潜入捜査は78年79年の話なんですね。」
丸屋「正確に言うと、原作も72年から始まります。なのですが、その年はコロラド市警察の実習生として入った年です。その次に、ストークリー・カー・マイケルの演説会に潜入するのは実際は75年です。KKK潜入捜査は78年から79年の飛び飛びの話なんですね。普通だったら一冊にしないところが、やっぱり原著の編集が甘いですね。(笑)」
ダースレイダー「さらに初の黒人警察官なのにいきなり潜入捜査を任される”俺様”と言うアピールがとにかく強いんですよね。(笑)」
丸屋「これが嘘だったらもうちょっと上手くやりますよね。」
ダースレイダー「盛っているところは盛っていると思います。間抜けだな、と思うところはリアルなんでしょうね。」
丸屋「映画にする時に「それから三年後・・」みたいなのを繰り返すわけにはいかないから、ギュっとして、まとめたんですね。」

2.アカデミー賞脚色賞受賞の理由:邦題は「ミスター・テレフォンマン」!?
丸屋「ロンが新聞広告を見ていてKKKの広告を発見するんですね。そこでその番号に電話したところ、繋がってしまったので、電話で話すわけですよ。そこで会おうと言う展開になって、黒人であるロンは会えないから、フリップと入れ替わりながら同時に捜査をするんですね。」
ダースレイダー「ロンは実際潜入することはしていないんですよね。全ての苦労99パーセントはチャック(フリップ)ですね。電話だけの担当なので、この作品に邦題をつけるならば、ミスター・テレフォンマンもありですね。(笑)でも一発当ててやろうと言う意識はすごいですよね。それではここで“カイロ・レン危機一髪”のシーンを流しましょう。」
ここで、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたアダム・ドライバー演じる、ユダヤ人のフリップがKKKへの潜入捜査中に疑われ、嘘発見器にかけられる映像が流された。
ダースレイダー「このシーンは特にアカデミー賞”脚色賞”受賞を意識したシーンでした。原作ではこのアダムが演じたフリップ(原作だとチャック)の話はあまり書かれていないんですね。」
丸屋「確かに映画と原作を比べてみると、まさに”脚色賞”だなと思います。このシーンの肝は、ロンはフリップの話は聞けるけど、ロンが何かを伝えることはできないんですね。」
ダースレイダー「何か自分の判断でやらなければならないんですね。チャックすごいですね。なのにチャックがすごいと言う話は書かれていない。そこで、リー監督はフリップの頑張りをちゃんと描いているんですね。」
丸屋「ユダヤ系に設定した点は、映画オリジナルですね。」

3. KKKという団体:中二病色の強い団体!?
丸屋「この映画にも出てきて実在するデヴィッド・デュークさんはKKKの会長で称号が”大魔法使い”なんですね。原作本のあとがきにも書きましたが、中二病ってこう言うもんだなって思いますが。(笑)まあロンさんもロンさんなので、お互い様なのですが(笑)」
ダースレイダー「“大魔法使い”が総べる組織なのですが、真っ白いローブを身にまとって、過剰な花粉症対策にも見えますが(笑)本当にひどいことをしていた組織でした。」
丸屋「南部の再建期と言われている時期に活躍した組織ですね。 」
ダースレイダー「“あのグレートなアメリカをもう一度”と言い、日々魔法使いの元に集まると言う組織ですね。巨大な十字架を燃やして集まり、周囲を威圧すると言う活発な団体でした。」
丸屋「十字架の話がよく出ますが、これはあくまで威嚇の手段で、黒人を集団暴行しています。」
ダースレイダー「いわゆる黒人コミュニティでは”鬼がやってくる”とも言われるような組織です。50年代は勢いがすごかったんですが、70年代後半はオールドスクールのKKKはポピュラリティが受け入れられなくなります。
丸屋「この年代はジョン・トラヴォルタの『サタデーナイトフィーバー』が流行った年ですからね。」
ダースレイダーさん「そこでKKKは組織改革を行い始めました。差別用語は使わない、白いローブは着ない、魔法使いであることは公には言わない、と言う状態なのですが、そのイメージ戦略を率いていたのがデヴィッド・デュークです。彼は選挙活動にも身を投じて、議員にまでなります。この人がある種の標的として映画には出てくるんですね。」
ここで映画内のKKKの入会の映像が流れた。
丸屋「これが本当に実在のデヴィッド・デュークとそっくりなんですね」

4. スパイク・リー監督:ファンクミュージックのようなリー監督のスタイル
丸屋「正直言って、原作の主張を曲げてまで、スパイク・リーはメッセージを入れていますね。公民権運動の話もすっ飛ばして、スパイク・リー流の主張でまとめています。
ダースレイダー「『ブラック・クランズマン』でも過去の映画と同じようなテーマを主張しているんですが、さらにアップデートしたような形でも話していますよね。頑張れば100分でできるのに、しかも関係ない話が三分の一あるのに、長いんですよね。ファンクのように同じようなことを繰り返すスロージャムなのがリー監督のスタイルですね。丸屋さん、リー監督作品で一番好きな作品はなんですか?」
丸屋「原作に関わったと言う話を抜きにしても、『ブラック・クランズマン』ですね。これは本当によくできている上に、エンターテイメント性もあり、現代のリアルタイムの問題に帰ってきているんですよね。」
ダースレイダー「『ドゥ・ザ・ライト・シング』でもありましたが、ある種の問題を真正面から見せつけてくる感じがありますよね。観終わった後に、これいい話なの?と思わせてくるんですよね。ガッツポーズを堂々と上げれない、でもそれをわざと描いているんですね。」
丸屋「ショックを見せつけてくるんですね。リー監督の脂が乗ってきたのは90年代ですね。」
ダースレイダー「しかしその時はアカデミー賞を白人が席巻していて、その時に届かなかったパンチが『ブラック・クランズマン』でようやく届いた、と言うところがありますね。」

5. スパイク・リー監督とプリンス:「プリンス殿下を本当に愛している」
ダースレイダー「タワレコさんで行われたイベントということで最後に音楽にも触れたいのですが、エンディングにリー監督はプリンスを使っていて、みんなが知っている曲ではない曲を選んでいるんですよね。」
丸屋「殿下を本当に愛していたんだな、と言うのが伝わります」
ダースレイダー「リー監督の選曲チョイスもきっかけにプリンスの昔の曲もディグってくれるとうれしいです。 」

最後に来場者へのムビチケプレゼント大会が行われ、トークショーは大盛況のまま幕を閉じた。

監督・脚本:スパイク・リー 製作:スパイク・リー、ジェイソン・ブラム、ジョーダン・ピール
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー、トファー・グレイス、アレック・ボールドウィンほか
ユニバーサル映画 配給:パルコ 宣伝:スキップ&NPC 2018年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/原題:BlacKkKlansman/映倫:G指定