大友良英氏「中江監督が「盆唄」の運命を変えた」!中江裕司監督・大友良英氏・久保田裕道氏登壇!2月12日『盆唄』シンポジウム付き一般試写会開催
この度、『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』の中江裕司監督による最新ドキュメンタリー映画『盆唄』がいよいよ2月15日(金)にテアトル新宿ほか全国順次公開致します。この度、2月12日(火)に公開直前シンポジウム付き一般試写会が行われ、上映後のシンポジウムに本作の中江裕司監督、ミュージシャンの大友良英さん、東京文化財研究所 無形民俗文化財研究室長の久保田裕道さんがご登壇されました。
今回、上映後に本作から考える、「失われゆく伝統文化をどのように継承していくか」というテーマでシンポジウムを開催。本作の監督を務める中江裕司監督、ミュージシャンとして映画やドラマのみならず、国境の枠を越え活躍するほか、東日本大震災を受け福島で「プロジェクトFUKUSHIMA!」を立ち上げるなど、音楽におさまらない活動でも注目される大友良英氏、日本各地の民族文化を調査し、保存活動をする東京文化財研究所 無形民俗文化財研究室長の久保田裕道氏が登壇し、熱い討論を交わした。
大友良英が大絶賛!「感動してずっと泣いていた!」
まず、当日に本作を観た大友氏。感想を聞かれると「ずっと感動して泣いてた!知っている人も出てきたりして、背景が分かるからこそ福島の土地で出てくる出来事がリアルで、本当に本当に素晴らしい映画でした」と大絶賛!久保田氏は「記録映像ではなかなか残せない“心”の部分も映し出されていて、かたちだけを記録するだけではいけないんだと強く感じさせてくれた映画でした」としみじみ感想を述べた。
実際、日本各地にどれぐらい盆踊りというものがあるのか聞かれると、久保田氏は「はっきりとしたデータはないが、文化財に指定されているものだと300件。
ただ東日本大震災後に東北地方の沿岸部の民俗芸能を数えただけでも1000件はあるんですよね。膨大な数が存在するのでしょうが、それだけ日常に溶け込んでいるという言い方もできます」とデータを明かすと、会場からは驚きの声が。
また盆踊り好きとも知られている大友氏は、はじめ盆踊りが嫌いだったとか。「僕は横浜生まれで、小学校3年で福島に移り住んだので孤独を感じたことが多く、はじめは嫌いだったんです(笑)。ただ震災後に福島でかっこ良い音楽フェスなどたくさんやっていたのに、地元の人たちみんな盆踊りやろうって言うんですよ。
そして2013年に盆踊りをやる機会があってやってみたら、すごい楽しくて、本当にトランス状態になったんです!」と自身の転機となった出来事を明かす。
「それ以来、盆踊り以外にも各所のお祭りを調べるようになって、はまっちゃったんですよね!」と興奮気味に語った。
“コミュニティの繁栄”が鍵!撮影で感じた中江監督の想いとはー。
現在、盆踊りやお祭りが震災後、開催される機会が減ってきている。どれぐらい減っているのかについて久保田氏は「これもはっきり言って状況がわからない。
支援が必要にもかかわらず、手を挙げられない地域が多いのは事実。『盆唄』の双葉町の人々のように、人が散り散りになり練習ができなかったり、一人が復活させようとしても周りがあきらめているという状況がある」と現状を説明。また自治体からの金銭援助について尋ねられると「昔はなかったけれど近年支給されるようになり、太鼓を直したり新調することに使われている。ただ東日本大震災から7、8年もすると忘れ去られているのが現状で、支給されなくなってきている。支援の枠組みがないことが問題」と述べた。それを聞いた中江監督は、「“コミュニティの繁栄”というのは盆踊りのみならず伝統を受け継いでいくためにはとても大事。盆踊りやお祭りは、そこで新しい出会いが生まれたり、懐かしい人たちが集まって笑いあうものだった。劇中でも、音を出して苦情が出てしまうのを避け室内で踊っている様子が映し出されますが、お金の関係もあるだろうけれど、コミュニティがなくなると伝統というものは消滅してしまうんだと改めて感じました」と語った。
異文化交流が伝統継承につながる!中江監督が『盆唄』で成し得たこと。
「プロジェクトFUKUSHIMA!」の立ち上げや、今年50回目の節目を迎える「福島わらじ祭り」のプロデュースをされている大友氏は、震災後にお祭りを企画したことに、はじめは非難を受けたという。「当時はとても複雑な状況だったと思います。声が上げにくかったと思いますし…ただ昔の活気がどこにもないぐらい福島全体が寂しい状況だったので、どんちゃん騒ぎをするしかないと思ったんです。そりゃ非難されましたよ!けれど中江監督の言う通り、“コミュニティの繁栄”があるからこそ祭りは続くと思ったので、振り返りませんでした」と強く語った。コミュニティが生きていれば、強い意志をもつ人が一人いると周りが変化するという中江監督。「本作の中心人物である福島県双葉町の伝統「盆唄」メンバーの横山さんも、会った時絶望的な表情をしていたのに、帰宅困難区域で太鼓を叩いた瞬間、一気に表情が変わったんです。
彼の心になにか決意のようなものが生まれた。それをきっかけに周りもどんどん動き出した。感動しかなかったし、こうして人も伝統も生き続けていくんだと感じた」と撮影中の印象的なシーンを明かす。すると大友氏は中江監督のマイクを取り「そこなんです!」と勢いよく語りだす。「カメラを向けられることで、双葉町の人々は話す機会が増えた。
またそれとは別に、避難者たちが別の場所に行き、外の地域の人たちと触れることで初めて自分たちが周りからどう見えるかを考える。他者の目に触れ続け変化することで芯が残るんです。この映画は見事にそれを映し出せている。ここが僕は一番泣けた!!」と本作の感動ポイント、そして伝統を受け継いでいくことの核心を突いた。
つづけて久保田氏も、「外の人が教えてあげないと、内にいる人たちは自分たちがすごいことをしているのが分からない。交流を持つことで、コミュニティも伝統も広がりをもつ。
異文化との交流は、伝統を継承していくうえで最も重要なことだと思います」とまとめた。
後半の質疑応答では、お祭りや盆踊りを盛り上げる活動をしている日本盆踊り協会や、商店を元気にしようと地域のために盆踊りを考えた方、盆踊りが大好きな若い方々から共感の声が多く寄せられ、今後の活動や各地のお祭りについて語り合うなど盛り上がりを見せた。
最後に、「本作で双葉盆唄が広く響き渡っていく。たくさんの方に観ていただきたい。そして欲を言えば、双葉盆唄が響いたときに立ち上がって踊っていただけたら本当にうれしいなと思います!」と中江監督。大友氏は「双葉盆唄の運命、そして双葉町の人々の人生を変えるほどのことを中江監督はした。内と外をつなげる役割をやっていこうと僕も決めたので、「わらじ祭り」など中心にもっと盛り上げていこうと強く思いました!」と述べた。「これから盆踊りが世界に知られていく時なのではないかと感じている。
新しい波が来ることを信じて僕も活動していきたいと思います」と久保田氏がまとめると、「盆ウェーブだね!」と大友氏が突っ込み、大盛り上がりでシンポジウムは終了した。
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2月15日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー!フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開!