この度、『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』の中江裕司監督による最新ドキュメンタリー映画『盆唄』が2月15日にテアトル新宿ほか全国順次公開致します。この度、1月16日(水)に公開前一般試写会が都内で行われ、上映後のトークショーに本作の中江裕司監督と映画評論家の松崎健夫さんがご登壇されました。

中江監督「双葉町の横山さんにゾッコンでした!」

東日本大震災から4年。福島県双葉町の伝統「盆唄」が存続の危機にあり、今もなお故郷へ帰れず散り散りとなった双葉町の人々が、ハワイで受け継がれるのボンダンスとふれあう。「盆唄」や双葉町の未来、そして日系文化にまつわる唄や音楽、その背景を追うドキュメンタリー。

昨日、上映後のトークショーに本作の中江裕司監督と映画評論家の松崎健夫さんが登壇。『ナビィの恋』や『ホテル・ハイビスカス』など沖縄を舞台とした映画を手掛けてきた中江監督が、なぜ双葉町を舞台とした本作を撮ろうと思ったかについて聞かれると「本作にも登場するアソシエイトプロデューサーの岩根愛さんが、もともとハワイ・マウイ島の日系人や双葉町の人々と交流があり、彼らの歴史を知り、映画にしないかと言ってきたんです。ただ僕は福島にゆかりがなかったので何度も断っていた。しかしその後、沖縄からハワイへ移った移民を何本か撮影をすることになり、ご縁が出来たこともあって双葉町の人々に会おうと決めました」と明かす。さらに「双葉町の横山久勝さんと会った瞬間、彼の人柄に即惚れてしまったんですよね(笑)この人ともっと一緒にいたい、撮りたい、そして映画を一緒に作っていきたいと強く思ったんです」と映画を撮る決定打となった横山さんとの出会いについて語った。松崎氏が「題材が東北と聞くと、震災という社会問題を描いているかと思ったがそうではなかった。社会問題を抱えているのですが、その人と人との心が寄り添っていく映画だと感じた」と感想を述べると、監督は「僕自身、人にしか興味が無いんです。人がどう生きて、どう死んでいき、何を為していくのかが映画のすべて。映画には愛や情しか映せないと思っているから、現象ではなく人を撮り続けているんだと思います」と振り返った。

松崎氏が追求!中江監督にとって唄とは、音楽とは?

中江監督の今まで手掛けてきた数々の映画に通ずるものが”音楽”。松崎氏は「中江監督の作品に音楽や唄は欠かせないものとなっている。

それは、唄によって台詞に+αのものが乗っかったなにかを観客へ届けようとしているのかなと感じたのですが、どうでしょう?」と聞かれると、監督は「唄とは、情を伝えるものと思っているし、人の人生が集約するような瞬間があると感じています。それは映画も同じ。そういうものを信じて撮り続けているからだと思うんですよね」と語る。本作で唄われる「盆唄」も、100年以上前から土地を変えながら双葉町で受け継がれ、そのルーツまで描かれている。「文明の利器が生れる前から唄はあり、当時は録音できるものが何もないじゃないですか。それが人から人へ伝えられていった。本作はそんな唄のルーツまで掘り下げてくれたからこそ、現代のコミュニティが希薄に感じられる今、唄が人を繋げる可能性があると感じさせてくれました」と松崎氏。監督も「盆踊りも100、200年以上続けられ、口伝いで日本を飛び越えハワイまで広がっている。それは単純にみんな好きだからだし、面白いから残っていくんでしょうね」と人と唄のつながりについて感慨深く語った。

また、松崎氏が本作の演出の特徴として挙げたのが“アニメーション”。ドキュメンタリーであるのにフィクションであるアニメーションを加えた理由を聞かれると「双葉町の人々は、まだ故郷に帰れない。しかし現状だけを映し、辛いものとして終わらせたくなかった。観て頂いたお客さんに明るい未来や希望を持って劇場を出てもらいたいと思って加えた」と説明する監督。また「双葉町の人々からは僕自身たくさんの想いを頂いてばかりだった。

何かお返ししたいと感じたとき、思いついたのがアニメーションだったんです。この二つの想いがありました」と、監督の大切なメッセージが詰まっている重要なシーンとして熱弁。監督の強い想いが届いたのか、余貴美子さんや柄本明さん、村上淳さんなど錚々たるメンバーが声の出演に協力している。

松崎氏が「日本アカデミー賞のアニメーション部門に匹敵するぐらいの素晴らしさでした!」と絶賛すると、「そんなことないですよ!でも表現をするのにとても大変だったので嬉しいです!」と笑みを浮かばせた。

会場から感想が飛び交う大盛り上がり!みんなが気になるラストシーンとは!?

トークショーも終盤にさしかかってきた頃、突然監督から「素直な感想を教えてください!」と聞かれると、会場では次から次へと手を挙げる人が!

感想で特に多く挙がったのが、ラストをかざる圧巻の“やぐらの共演”について。「はじめは“この映画はどこへ行くんだろう?”と着地点が気になって仕方が無かった。ただラストのシーンですべてがまとまり、心がとても落ち着いた」という意見や、「踊っている人たちがなにも考えず、無心でリズムに引っ張られていくのが、観ているこちらが不思議な感覚になるぐらいの興奮で映画に表れていた」など、魅了された人が多く見られた。ロングで撮り続けた理由を聞かれた監督は「人によって長いと思う人もいるかもしれない。ただ何より観客のみなさんに盆踊りというものを今一度感じて欲しかった」と答えると、会場からは「あのシーンがなければ終われない!」「すばらしかった!」と監督へ次々と賞賛の声が投げられる盛り上がり!

松崎氏も「すごい・・・」とこぼすほど。監督も、「いろんな意見が聞けて本当に嬉しい・・・今日はお越しくださり本当にありがとうございました!

あとはみなさん公開初日にもう一度ご来場頂いて一緒に双葉盆唄を踊りましょう!」と締めくくり、トークショーは終了した。

監督:中江裕司(『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』)  撮影監督:平林聡一郎  編集:宮島竜治・菊池智美

エグゼクティブプロデューサー:岡部憲治 プロデューサー:堀内史子  アソシエイトプロデューサー:岩根愛 アニメーション:池亜佐美

音楽:田中拓人 音楽プロデューサー:佐々木次彦 製作:テレコムスタッフ 配給:ビターズ・エンド 

出演:福島双葉町のみなさん、マウイ太鼓ほか 声の出演(アニメーション):余貴美子、柄本明、村上淳、和田總宏、桜庭梨那、小柴亮太

文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術振興会

日本/2018年/134分/ビスタ  ©2018テレコムスタッフ www.bitters.co.jp/bon-uta/

2月15日(金)より、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー!

フォーラム福島、まちポレいわきも同時公開!