12 月 22 日より公開中のアルゼンチンのパブロ・ソラルス監督『家へ帰ろう』(彩プロ配給)。
公開 2 日目となる 12 月 23 日、シネスイッチ銀座にて『家へ帰ろう』の公開記念トークイベントが行われ、落語家の林家木久扇さんが登壇しました。
おなじみの黄色の着物で登壇した木久扇さんは、『実は映画がすきなんです。スーパースターの林家木久扇でございます』と軽快な口上からスタート。

本作へ向け『“アブラハム、家へ帰ろう!ドイツを通らずに” 70 年前の恩人に仕立てた洋服をポーランド迄届ける老職人、この映画は静かなスケッチの反戦映画だ。観ていて私も主人公と歩いていて足が痛い。』とコメントを寄せていた木久扇さん。その真意を問われると、『主人公はホロコーストで足を痛めつけられた経験を持っています。役者さんが知らない方ばかりで、ドキュメントのように見たんですね。私は今年 81 歳になりますが、東京大空襲を経験しておりまして、近くの小学校の防空壕におばあちゃんの手引きで逃げる時におばあちゃんが『お兄ちゃん(木久扇さんのこと)足が痛いよ、足が痛いよ』と言っていたんですね。映画でもそのセリフがあって共感しました。人ごとではない映画でございますね。』と体験談を交えて話した。

『映像では出てきませんが、妹がトラックに詰め込まれて収容所につれていかれてしまったと主人公がセリフで語るシーンは(主人公と一緒に)悔しい気持ちになりました。また、冒頭のシーンで主人公が明日高齢者施設に入るため孫に写真を一緒に撮ろうと頼むと「お金を出したら撮ってあげる」と言われるシーンは生々しくて。映画の作り方の上手な監督だなと思いました』と見どころを語った。

また、今年「笑点」への出演は 50 周年となるが、長年共に出演してきた桂歌丸が逝去。『50 年笑点やってて、暗いニュースや嫌なニュースはやらないと決めてるんですね。病気や事件については言わないようにしてきました。今年歌丸師匠が亡くなって、インタビューの依頼もたくさんありましたがお応えしていなくて。楽しいことがいっぱいあったから、(そのときの悲しい)普通の気持ちを喋るのが嫌で。本当はとても寂しいです。50何年つきあってきたからね。』と語った。また、笑点の反響は世界でも大きいそうで『この前ハワイで(春風亭)昇太さんとごはんに行って、日系のお店に入ったら昇太さんが「嫁コナイ、嫁コナイ」と言われていて。私はイエローマンと言われていました』と意外なエピソードを語り、客席を沸かせていた。

【映画『家へ帰ろう』】
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに住む 88 歳の仕立屋アブラハムが、ブエノスアイレスからマドリッド、パリを経由して故郷ポーランドに住む 70 年以上会っていない親友に、最後に仕立てたスーツを届ける旅に出るロードムービー。
監督・脚本を手掛けたパブロ・ソラルス自身がユダヤ人で、ホロコースト体験者だった祖父の家では「ポーランド」という言葉を発することすらタブーであったことから本作の着想を得、自身のアイデンティティーを確立させるために避けて通れないテーマをユーモアと軽やかさを交えながら結実させた感動作。

監督・脚本:パブロ・ソラルス 音楽:フェデリコ・フシド (『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』『瞳の奥の秘密』)撮影:フアン・カルロス・ゴメス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ (『タンゴ』『スール その先は…愛』)、アンヘラ・モリーナ(『ライブ・フレッシュ』
『シチリア!シチリア!』『題名のない子守唄』)、オルガ・ボラズ、ユリア・ベアホルト、マルティン・ピロヤンスキー、ナタリア・ベルベケ
2017 年/スペイン・アルゼンチン/スペイン語/カラー/スコープサイズ/5.1ch/93 分/原題:EL ULTIMO TRAJE/
英題:The Last Suit 後援:アルゼンチン共和国大使館 インスティトゥト・セルバンテス東京 NPO 法人ホロコースト教育資料センター/
配給:彩プロ 協力:朝日新聞