堤幸彦(映画監督・演出家)を筆頭に、大根仁(演出家)、平川雄一朗(演出家)、小原信治(作家)といった、気鋭のクリエイターを輩出する映像制作会社オフィスクレッシェンドが、次代を担うクリエイターの発掘・育成をめざして立ち上げた映像コンテスト「未完成映画予告編大賞」=「MI-CAN」。その第1回グランプリを受賞した「高崎グラフィティ。」がご当地の高崎での先行上映に続き、8月25日(土)に全国公開を迎えた。

アップリンク渋谷での初回上映後、川島直人監督、主演の佐藤玲をはじめ、岡野真也、中島広稀、三河悠冴が舞台挨拶に登壇し、満員の観衆から温かい拍手が送られた。

満員の客席に監督は満面の笑みで「まあ、想定の範囲内ですけど…」と言いつつ「本当にありがとうございます! こんなふうに満員での初日、嬉しく思っています」と何度も頭を下げた。

川島監督と同じ日本大学藝術学部の学生だった佐藤さんが、卒業間際に監督に送ったメッセージがきっかけで始動したという今回の企画。佐藤さんは「『映画学科にすごい監督がいる』と聞いて、2015年3月の大学の卒業式の前日に『何かやってみませんか?』と連絡し、そこから今日までかかってやっと映画1本ができて感慨深いです、いろんな方の支えがあったので感謝の気持ちでいっぱいです。『できた!』という実感がわいたのはやっと最近でして…。『まだやることがいっぱいある…』と思ってるうちに先週の高崎での公開を迎え、そこからフワッと巣立っていったような感じでなかなか実感わかないです」と心境を明かした。

川島監督は「何度も言ってますが、玲さんからDMが来たときは、新手の詐欺だと思いました(笑)。クリックしたら請求されるんじゃないかと思ったんですが、(メールに)熱い思いがあって、それを何とか実現したいと走ってきて、素晴らしいキャストやスタッフと合流して、お客さんにやっとバトンを渡せました」と喜びを口にした。

岡野さんは「(メインキャストの)5人の仲の良さが一番大切なので、『引かれるんじゃないか?』って勢いで仲良くしようと、出会って2回目くらいで、私のダメなところもいいところも全部を教えましょう!ってくらいの感じで接しました。手をつないで入ってきたいくらい、仲良くなってここまで来たので、その空気感をたくさんの人に作品として受け取ってもらえるのは感慨深いです」と語る。

中島さんは、全国公開を迎えて「完成した作品はスタッフさんや関係者と見たので、どうだったかと言いづらいので、早くお客さんと見たいです。お客さんの反応をダイレクトに感じたときに、改めてわかるのかなと思います」と劇場で観客と一緒に鑑賞することを熱望。

三河さんは、東大を受験する高校生を演じたが「東大の参考書を買って、(ロケ先の高崎の)ホテルに持って行ったんですけど、ホテルに漫画がいっぱいあってずっと漫画読んでました(笑)。川島さんに『作りこむな』と言われたのでいいやと…」と明かした。

この日は残念ながら欠席となった萩原利久さんを含む男子組は、夜な夜な、翌日の撮影に備えて練習を重ねていたそう。中島さんは「台本が当日に変わって、違うことをさせられるので、前日に集まって『こうくるんじゃないか?』とやってたんですが、現場に行くと(予想と)全然違うんです」と苦笑い。川島監督は「(台本上で)最初は固いセリフだったのが、だんだんみんなの言葉でセリフを書けるようになって、当日にセリフを渡したんですが、大変だったと思うけど、役者人が頑張ってくれました」と俳優陣の奮闘をたたえた。

そして、この日はおめでたい報告が! 川島監督は「18日(土)の(高崎での)公開初日に入籍いたしました! 証人が必要で、ずっと一緒に映画を作ってきた(撮影監督の)武井(俊幸)に書いてもらって、めでたい日になりました」とニッコリ。さらに、岡野さんも「6月に入籍いたしました!」と報告し、会場は温かい拍手に包まれた。

川島監督は「縁起のいい作品になりました。これを見たら、幸せになれると言いふらしてください。ご利益があります!」と語り、岡野さんは「こんなにたくさんの方に祝福していただけて嬉しいです。演技への気持ちは全く変わっていないので、これからもますます頑張っていきたいです」と抱負を口にしていた。

『高崎グラフィティ。』は公開中。