この度、ドイツの大ベストセラー小説を、『ソウル・キッチン』『消えた声が、その名を呼ぶ』の名匠ファティ・アキンが実写化した『50年後のボクたちは』が9月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開となります。

原作は、ドイツ国内で220万部以上を売り上げる大ベストセラーとなった国民的小説「14歳、ぼくらの疾走」(ヴォルフガング・ヘルンドルフ著)。
メガホンを執ったのは、ベルリン、カンヌ、ヴェネチアと、世界三大国際映画祭の全てで主要賞を受賞し、今年開催された第70回カンヌ国際映画祭でダイアン・クルーガーに主演女優賞をもたらせた、最新作「In The Fade」でも注目を集める名匠 ファティ・アキン。
現代版“スタンド・バイ・ミー”とも呼び声の高い本作は、誰もが通過する、永遠には続かない14歳という一瞬の煌めきを瑞々しく捉え、かつての自分を想い出させてくれる爽やかで切ないロードムービーです。

この度、公開に先駆け一般試写会を行い、上映終了後に漫画家・コラムニストで辛酸なめ子さんと映画ライターの森直人さんをお招きし、お二人の閉じた黒歴史の蓋を開け、若かりしあの頃を振り返る、あの頃は若かった…赤裸々トークイベントを行いました。

【開催概要】 (上映時間:93分) 
日程:8月21日(月) 18:30開場 / 19:00開映  / 20:33上映終了 
20:40~21:10 トークイベント
会場:東京ドイツ文化センター(東京都港区赤坂7-5-56 ドイツ文化会館)
トークイベント登壇ゲスト:辛酸なめ子さん(漫画家・コラムニスト)、森直人さん(映画ライター)

★思春期時代にやり残したことを、疑似体験して消化させることができる映画!

【辛酸なめ子さん(漫画家・コラムニスト)コメント】
ダサさが一周して最高にCOOLな14歳。
かつて14歳だった全ての人が、インナー中2を成仏させることができる作品です。

先駆けて本作にコメントを出した辛酸さん。改めて本作の感想を聞かれ、「童貞のパワーはすごい!自分の思春期時代にやり残してしまったことを、この映画を観ながら疑似体験して消化できたような感覚を覚えました。また、今の時代みたいにSNSとかでいつまでもだらだらと繋がっているような人間関係ではなく、短い時間だけど一生残るような、密度の濃い男の子たちの友情っていうのはいいなと思いました。少年の青春群像が好きな方にはたまらないと思います!」と、熱く語った。
“中2病もの”映画が大好きだという森さんは、本作はいわば「ドラえもん」の構造に似ていると語る。「のび太がマイクで、ジャイアンがチック。ジャイアンが最後いい奴になる、長編ver.のドラえもんですね。1つ違うのは、ジャイアンであるチックも学校のカースト制度では下に位置してるということ。でも、1番好きなシーンは、チックがいじめっ子に対し一言耳打ちしただけで相手を黙らせたシーン!これが最高にカッコいい!」と興奮気味に語った。

★典型的な中2病を発症した人ほど、“14歳もの”には極端に弱い!?
“14歳”が一つのテーマである本作。当時は帰宅部だったという森さんは「お嬢様が通うような女子学院にいた辛酸なめ子さんとは真逆の環境。僕はヤンキーがいる公立中学に通っていて、しかも当時は『ビー・バップ・ハイスクール』全盛期だったので、トオルとヒロシみたいなのがゴロゴロいました(笑)。その環境の中で典型的な中2病を発症したので、“14歳もの”には極端に弱いです(笑)きっと、監督自身もイケてないグループにいたのでは?」と語る。
対して辛酸さんは「私はマンドリンギター部に入っていました。また、当時はテディ・ベアを作るのにハマっていて、それを友達にプレゼントして重たがられていたりしたかな。あとは、ジャニーズの「男闘呼組」というグループが好きだったので、彼らがいつか私を迎えに来てくれる!みたいな小説を書いてましたね。この作品もそうですけど、そういう黒歴史を経て、人は成長できるんだなと感じました」と語った。

★撮影当時13歳!フレッシュな新人子役たちの魅力を語る!
主人公の少年たちについて、「ファティ・アキン監督の演出では、マイクの髪型はカート・コバーンをイメージしていると聞いて、すごく納得しました。僕は監督と同じ世代なのでかなりツボでしたね」と語る森さん。
彼らのインスタグラムを日々チェックしているという辛酸さんは「映画のなかでは、彼らのひと夏の冒険は終わってしまうけれど、いろんな映画祭での仲良い姿を見せてくれて、映画の続きを見せてもらっているよう気分になりました!特にチックはイケメンのポテンシャルが高くてイイですね。映画のなかでも頼りがいのある役だし」と興奮気味に語る。
今回がスクリーンデビューのチック役のアナンド・バトビレグ・チョローンバーダルに対し、2人は「彼が初演技だなんて信じられない!演技が上手すぎるし、彼は大物ですね」と、高く評価した。
マイク役のトリスタン・ゲーベルについて問われると、辛酸さんは「マイクは最近声が野太くなってしまって…。少年の旬は短いので、こうやって映画のなかでとどめられてよかったのかも。ドイツ人ってすぐ成長しちゃうんですかね?」と、語り笑いを誘った。

★窃盗、飲酒、家出…それでもドイツで推薦図書!?
本作の原作『14歳、ぼくらの疾走』について「マイクの一人語りの文体が『ライ麦畑でつかまえて』にすごく似てるんです。ほかにもヘルマン・ヘッセの『荒野のおおかみ』『車輪の下』なんかを踏襲したり、冒頭では『ウェルカム・ドールハウス』のセリフを引用していたり」と森さん。
「ドイツでは大ベストセラーで推薦図書になっていますが、14歳で車を運転したり、飲酒したりしている。法律とかを考えるとこの作品で大丈夫なのかなって思ってしまった。日本だったら絶対ないことですよね」と辛酸さん。
それに対し森さんは「ドイツはさすが「教養小説」が多く生み出されている国だなと思う。「子の成長にとって必要なものは取り入れる」という姿勢が素晴らしい!」と、ドイツの教育に対する姿勢についても語った。また、森さんは「原作者は闘病の末、2013年に48歳の若さで亡くなっている。それを踏まえて観ると、とても爽やかなロードムービーなんだけど、切なくて映画の観方がちょっと変わるかもしれないですね。また劇中の、丘で3人の名前を彫るシーンで「原発危機」と話すくだりがありましたよね。作品のあちこちに「死の影」を、本当にさりげなく隠し味として作品に含ませている気がします」と、解説。
それに対し辛酸さんは「50年後、世界は滅亡してるかもしれないですしね…。それでも「50年後にまた会おう」って約束が、まるでタイムカプセルみたいで、その設定だけで泣けますよね」と、本作のタイトルともなったある印象的なセリフについて語った。

お2人がどの場面について話しているかは、是非9/16(土)公開をお楽しみにお待ちください!