2002年『頭山』が、第75回アカデミー賞?短編アニメーション部門ノミネートで注目を集め、昨年度からは映画芸術科学アカデミー会員となるなど、世界的に活躍するアニメーショ ン作家・山村浩二の最新短編集のロードショー公開が、この度決定致しました。最新作『サティの「パラード」』は、1917年バレエ・リュスのパリ初演100年を記念して制作。奇しくも今年2017年は日本のアニメーション誕生100年の年でもあります。エリック・サティの曲名「右と左に見えるもの(眼鏡なしで)」から着想を得たプログラムタイトルを冠した『山村浩二 右目と左目でみる夢』は、映画的な構造を離れ、アニメーションという枠をも超えた表現へ踏み出す山村の次のステージをみせてくれる必見のプログラムです!

「短編アニメーションが一般公開することがなかなか難しい状況がありまして、これまでの上映でも、短編映画を一般劇場で上映することの難しさを痛感しておりましたので、今日はたくさんのお客様にお越し頂けて嬉しいです。」と公開初日を迎えての喜びを語った。
 今回の上映作品について、「昨年完成した『サティのパラード』は、1917年にパリで上演された、エリック・サティが作曲したバレエの演目で、劇中にもジャン・コクトーとパブロ・ピカソらしき人物が登場します。
ストラビンスキーで話題を撒き、コクトーが企画し、サティが作曲をしたという作品です。アニメーションを見て頂くとわかるのですが、サイレン音やタイプライターの音など、楽器ではない音もたくさん登場します。意味があるようで無い、シュールでナンセンスな音の使い方は、初演当時クラシックバレエ音楽を聴きなれた聴衆は戸惑ったのだと思います。」と当時サティの楽曲がいかに意外性を持っていたかを語った。
 今回のアニメーションについても、「サティが作曲した音源をそのまま使用して、動きをつけてきました。初演を再現というよりは、当時のコンセプトとしての振り付けのアイディアを入れ込みました。」と、
 さらに今回の上映作品は、“音楽とアニメーションの関係性”をテーマに作り上げたとのことで「『古事記』以外は、音楽とアニメーションが1:1の関係性になっています。鑑賞の仕方としては、音楽に身を任せながら、その映像がどのように重なるのかを追ってご覧戴くと面白いかなと思います。音の変化に合わせて変化する映像のコントラストを楽しんでください。」とオススメの鑑賞方法を語った。
 ヘンデルの曲を使用した『怪物学抄』では、「あえて音楽を前面に押し出し、効果音は抑えた作りにしました。ある意味で絵と音楽の距離が合わないようにしています。」と音と絵の関係についての実験を語った。
 カナダの実験アニメーションの先駆者である、ノーマン・マクラーレンにインスパイアを受けて制作した『鐘声色彩幻想』については、「これはマクラーレンの生誕100周年を祝って、カナダ・モントリールでコンペティションがありました。そこでは、マクラーレンの過去の音源を使えることも魅力で参加しました。プロジェクションマッピング用に制作したので、スクリーンサイズは多少異なるのですが、楽しんでご覧頂ければと思います。」と、初お披露目についてコメント。実験的アニメーションをたくさんの人に楽しんで見て欲しいという思いから、「今回の上映では、各作品の前に簡単な説明も入れておりますので、楽しんでいただけるかと思います。」と、これまで世界各国の映画祭で作品を上映してきた経験をもとに、短編集編集のこだわりと期待を語った。さらに、短編として上映される『水の夢』は現在4部構成の映像を制作中。ライブパフォーマンスや博物館用の映像として作成中で、10月を完成目標に、第一部のみ今回上映となる。“水の中で生命が誕生していく”というテーマで描かれる。

 最後に、「今回は54分と短いプログラムですが、バリエーションに富んだ作品になったと思います。アニメーションというものは、魂を作り出すという意味もありますので、自分なりの挑戦をしている作品です。」と熱い想いを語り大盛況のうちに舞台挨拶は終了した。上映後のサイン会は、パンフレットを手にした観客で長蛇の列となった。また、今後ユーロスペースでは、山村浩二監督を迎えトークショーも開催する。

今後のトークショースケジュール @ユーロスペース
ゲスト:山村浩二監督
8月11日(金) 18:30の回上映後  8月12日(土) 18:30の回上映後
8月18日(金) 18:30の回上映後  8月19日(土) 18:30の回上映後