晩婚、離婚、再婚と、結婚にまつわる形態が多様化する現代。今や3組に1組が離婚し、結婚する4組に1組が再婚カップルであり、子連れで再婚する割合が急速に増えています。このような、再婚により血のつながりがない親子でつくり上げる家庭を“ステップファミリー”と呼びます。 子連れ再婚を考える時、一番悩むことは、子どもとパートナーが上手くいくかどうか、離れて暮らす子どもとの関係はどうすれば良いか、みんなで幸せになれるかどうか…という不安です。
なぜなら、血のつながりを越えた関係を築きあげるのは、非常に困難だからです。この“ツレ婚”が年々増加し、それに伴い悩める家族も増えているでしょう。そんな悩みを乗り越えて幸せになるためには?
8/26に公開される映画『幼な子われらに生まれ』の試写会では、増え続ける“ステップファミリー”の今とこれからについて、家族問題の専門家であるゲストに登壇いただき、トークイベント付試写会を実施致しました。

【日程】7月26日(水)
【場所】アキバシアター(千代田区神田練塀町3 富士ソフトアキバプラザ2F)
【ゲスト】 新川てるえ氏(M-STEP代表)、武田典久氏(親子の面会交流を実現する全国ネットワーク)、しばはし聡子氏(離婚・面会交流コンサルタント)

8/26に公開される映画『幼な子われらに生まれ』の試写会で、子連れ再婚家庭(=ステップファミリー)を描く本作にちなみ、実際に子連れ再婚をされている方々や子連れ再婚をされる可能性のある方々に向けてトークショー付き試写会を実施しました。
子連れ再婚家庭とひとり親家庭を支援するNPO法人、M-STEP代表の新川てるえさんと、子どもと離れて暮らす親子の支援をする立場から、親子の面会交流を実現する全国ネットワークより武田典久さん、同居親の立場で当事者支援を行う離婚・面会交流コンサルタントのしばはし聡子さんが登壇しました。

家族問題の専門家から見て、本作はどのように映ったのか。新川さんは「自分自身がステップファミリーだった経験があるので、すごく自分と重なった」と振り返りました。武田さんは「重松清さんは、大人になって色々なことが思い通りにいかない人間の姿を描くのが非常に上手な作家さん。本作は、親の葛藤や子どもの心情がよく表現されていた。別居・離婚・再婚のステップファミリーをテーマに掲げる文芸作品は少ない中、世の中に訴えかけるいい作品ができた」と本作の存在意義を見出しました。しばはしさんは、「子どもに会わせない親・会わせる親、子どもの意思を尊重できる親の心持ち・できない親の心持ち、またキャリアウーマンとして活躍する女性・専業主婦として家庭を守る女性、と色々な対比が見れた。誰に共感するか人それぞれ異なると思うが、本作を観ることによって自分の置かれている状況など現状把握ができる」と話し、「色々な気づきが得られる作品」であると評価しました。

日本では、離婚して再婚をしたら、子供には今までの親はいなくなり、新しい親にチェンジしてしまう、切り捨ててしまう社会であると、現在のステップファミリーか抱える問題を挙げました。
本作の宮藤官九郎さんが演じる沢田のように実子に「会いたくない」というお父さんが多いそうで、実際にそのような直面に遭遇することもよくあるといいます。新川さんは「離婚した後にすべての親が関わりたいかというと、決してそうではないのが現状。離婚の傷やネガティブなイメージが強くてそれを思い出したくないという心理があるのでは」とその心情を推測します。
しばはしさんは「実の親に会わせることによって、子どものメンタル面がすごく穏やかになったのを目の前にみて、実の親は親であって、仮にその後新しいお父さんができたとしても、愛してくれる人が増えていくという認識で自分自身がいること、そして包み隠さずに子供に伝えていくことが大事である」と離婚後の実の親との面会交流がいかに重要かを訴えました。
そのような問題に対し、今後どうしていくべきかについて、新川さんは「15年前は、シングルマザーへの理解はほとんどなく生きづらかったと思う。今まさしくそこにステップファミリーがいるなと感じている。当事者は、自分がステップファミリーであることをカミングアウトできない。それに加えて今はまだ相談窓口がないというのが現状。」であると話します。連れ子を愛せず悩んでいると相談しにきた継母に対し、新川さんは「愛せなくて当然でしょ。自分の子供じゃないんだから」と言うと、女性は泣き出し「そんな風に答えてくれる相談窓口がなかった」と言ったという経験談を話しました。
武田さんは「女性の社会進出が広がり、シングルマザーを取り巻く環境は以前と変わったが、それでも日本は世界に比べかなり遅れていると感じている。」と述べ、「離婚・子連れ再婚は一見苦労ばかり見えますが、実はそうではなくする方法もあるのではないか、ということを強く感じている。新しい親が来て、“支える人が多くなる”という考え方を生んでいくことで、ステップファミリーにも明るい希望が見えてくる」とステップファミリーになるということをプラスに考えていくべきだと話しました。
しばはしさんは、「一番大事なことは、離婚をして夫婦は破綻しても、親同士の関係は続くし、親子としての関係も続いていくということを、離婚・再婚をする大人世代が事前に認識しておくこと。仮に離婚することになってしまっても、子どもに『これからも会い続けることはできるんだよ』ということをきちんと伝えてあげることが大事である。そうすることで、新しいステップを進むときに、前向きに進んで行ける。離婚・再婚をタブーにしているのは大人世代。私たちの世代が子どもたちに伝えていくことで、次世代が離婚・再婚しても『親子の関係は変わらない』ということが当たり前になっていくでは」とステップファミリーになった際に、子どもたちや周りの人たちとどう向き合っていったらよいのかを語りかけました。
家族だから一緒にいなければいけない、新しい親と必ず一緒にいなければならない、それが「家族」であるという固定概念から解き放たれると、いい社会になるであろうということ、本作はそんなことを考えるきっかけになる作品であると、映画の持つ意義を語っていただきました。