フランス映画祭公式上映『モン・ロワ』マイウェン監督が描く「10年間の愛の軌跡」
フランス映画祭にて、第68回カンヌ国際映画祭女優賞受賞作「モン・ロワ(原題)」が上映され、マイウェン監督の舞台挨拶が行われました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【日時】6月25日(土)19:20〜20:00
【場所】有楽町朝日ホール(千代田区有楽町2丁目5−1)
【登壇】マイウェン監督
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
映画は『太陽のめざめ』などで監督としても活躍するエマニュエル・ベルコが第68回カンヌ国際映画祭女優賞に輝いた話題作。スキー事故で負傷した女性弁護士が、リハビリに励みながら、元夫との出会い、結婚、別れを振り返る、愛の尊さ、それを保つことの難しさを深く見つめた物語が胸を打つ、男と女、10年間の愛の軌跡を描いたラブストーリー。メガホンを取るのは、『パリ警視庁:未成年保護特別部隊』などのマイウェン。元夫役に『ジャック・メスリーヌ』シリーズなどのヴァンサン・カッセルが出演している。
いち早く映画を観賞した観客の大きな拍手で迎えられたマイウェン監督は「こんにちは。」と日本語であいさつ。「来日は今回で3回目になります。私にとっては祖国フランス・アルジェリアに次いで、2番目に大好きな国です。今日は私からも皆さんにたくさん質問したいと思います」とチャーミングにほほ笑んだ。
本作のストーリーのアイディアは10年位前に浮かんでいたそうで「私の処女作品になっていたかもしれない作品。ただ自分で撮るというのは、すぐにできないと思った。なぜ彼女たちは別れようとしても別れられないのか、どれだけ愛していたのかを見せるために愛していたところから見せなければいけなかった。繊細ですごくセンセーショナルな愛だということを、映画で描かなければいけないのがすごく怖かった。」と告白。
タイトルの『モン・ロワ』(直訳:私の王様)についてマイウェン監督は「“モン・ロワ”というタイトルは意識的に大儀的な意味にしました。いろんな解釈の仕方が出来るタイトルが良いなと思った。“私の王様”というタイトルはどちらかというと崇めたてるような、熱愛中の幸せな時を表現する“モン・ロワ”。もう1つはだんだんと恋愛がうまくいかず、愛が崩れてきたときにトニーが彼に対する愛情があるが故に彼に服従しようとする、自分の子供の父親であるが故に多少の苦労も頑張って耐えようとする“モン・ロワ”。」とタイトルの意味を解説。「現実問題として女である自分、母親である自分。その両方の幸せを両立させ続けようとすることは複雑なことでしょ?やっぱりトニーは子供にとってはパパとママが一緒にいる家庭を作りたいと願っていたからこそ、彼と別れることが出来なかった。最後に服従していた彼女と王様だった2人の立場が逆になる。彼に対する愛情というのが愛しさ、優しさに変化してくるの。」と物語を説明した。日本公開は2017年春を予定しているが、そこでマイウェン監督は『モン・ロワ』(直訳:私の王様)以外にどんなタイトルが良いか観客に逆質問。日本の観客との交流を楽しんだ。
脚本は主演のエマニュエル・ベルコとヴァンサン・カッセルでアテ書きしたという。主演女優のエマニュエル・ベルコについては「あまり有名ではない女優さんで、誰が見ても目を見張る美人ではない女優が良いなと思った。何故かというと、それがジョルジオの人生の中の気持ちの変化を描ける重要なポイントだと思った。それまでジョルジオは若くて綺麗な女の子とばかり付き合っていたけど、初めて平凡な女性を愛するという意味で美人ではない女優さんが重要だった」と起用理由を説明。映画監督としても活躍するエマニュエル・ベルコについてマイウェン監督は「私が彼女を主演女優に選んだ理由がよく理解できなかったみたい。なぜ私を起用するの?リハビリの話だから、足が長くて美しい人を選べばいいじゃない!と、私を説得するようにエネルギーを費やして何度も聞くんですね。でも(ベルコのそういうところが)愛おしいな、ストーリーに合うところがあるなと私は思った。」と回想した。ベルコは、脚本も暗記するくらい準備万端で、いっぱいメモを書いた分厚いノートを携えて現場にやって来る優等生タイプの女優だったと言い、「彼女は自分にプレッシャーをかけていた。だけど、あまりにも準備したために、一つの牢獄に閉じ込められたようで自分を解き放つことをしてくれなかった。」と振り返り、「女優という以上に監督として、この撮影に参加していた部分があったと思う。彼女は自分の演技を全てコントロールして、良いところを見せようとしていた。でも私の演技指導は自由にやってというタイプ。編集作業で私が良いところを選ぶから、無駄なものも含めて全部自由にやってほしかったけど、彼女は現場で無駄なものを一切出さず、良いモノだけを差し出そうとした。だから私はヘトヘトになるくらい、そうじゃなくて!と彼女に何度も言って、何とか彼女のバランスを崩してやろうと。それが私の演技指導でした。」と撮影エピソードを披露。逆にヴァンサン・カッセルについては「この人、本当にシナリオを読んでるのかなと(笑)。」と笑い、「すごく軽やかに現場にやってくる。ずっと現場ではジョークばかり喋っていたけど、一旦カメラが回り出すとすぐ役の人物に入ってしまう。彼は、役と自分の境界線を設けない人なんだなと思った。」とそれぞれの印象を語った。
最後にマイウェン監督は印象的なラストシーンについて「観客の皆さんのそれぞれの解釈でいいと思う。観客が読書のようにイマジネーションを膨らませて、イメージを広げてくれればいい。」と呼びかけた。
映画『モン・ロワ(原題)』は2017年春 YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開予定。