第68回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2015】3
映画祭2日目の14日(木)。薄曇りの1日。本日、“コンペティション”部門で正式上映されたのは、是枝裕和監督の『海街diary』と、イタリアのマッテオ・ガローネ監督の『テール・オブ・テールズ』の2作品。そして招待作品の目玉であるジョージ・ミラー監督の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が登場!
また、映画祭オフィシャル部門の第2カテゴリーである“ある視点”部門、さらには映画祭の併行部門(主催団体が異なる)の“監督週間”と“批評家週間”も本日、開幕!
◆イタリアの実力派監督マッテオ・ガローネ監督の『テール・オブ・テールズ』は豪華キャストを起用した奇想天外かつ残酷なお伽話!
リアリズムに徹した『ゴモラ』(2008年)とフェイクドラマ風の『リアリティー』(2012年)でカンヌのグランプリを2度獲得しているイタリアのマッテオ・ガローネ監督が、17世紀の民話集から着想を得て描いた『テール・オブ・テールズ』は、ワールドワイドなキャスティングを行い、英語で撮り上げたダーク・ファンタジーだ。
中世の近接する3つの小国を舞台(古城や迷路などロケ地の景観が実に素晴らしい!)に、海に棲む怪竜、飼育により巨大化するノミなど、奇妙奇天烈な異形の者たちが次々と登場、それらに翻弄された各国の国王&王妃&王子ら領主たちが繰り広げる狂騒をヴィヴィッドに活写した怪作だった。
朝の8時30分からの上映に続き、11時から行われた本作の公式記者会見には、マッテオ・ガローネ監督、俳優陣のサルマ・ハエック、ヴァンサン・カッセル、ジョン・C・ライリー、トビー・ジョーンズ、ベイブ・カーヴ、そしてプロデューサー2人が登壇した他、脇を固めた共演俳優5人も会場に現れ、記者席最前列に陣取って会見を見守った。
会見では、これまでの作風を覆す題材を取り上げた監督に対して、その意図を問う質問が相次ぎ、マッテオ・ガローネ監督も苦笑気味。国王の夫(ジョン・C・ライリー)が自らの死と引き換えに手に入れた怪竜の“肝”をなり振り構わず手掴かみで喰らう王妃を熱演したサルマ・ハエックは、撮影時のエピソードを身ぶり手振りを交えて披露し、会場は爆笑の渦に包まれた。
◆人気シリーズの30年ぶりの新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の公式記者会見にジャーナリストが殺到!
13時からは、ジョージ・ミラー監督のバイオレンス・アクション『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(6月20日公開)の公式記者会見に出席。会見場には入りきれないほどの報道陣が詰めかけた。
「マッドマックス」シリーズは、近未来の終末的な世界で元警官の主人公マックスが繰り広げる壮絶なサバイバル・バトルを描き大ヒットした傑作バイオレンス・アクションで、前3作の主演を務めたメル・ギブソンと監督&脚本したジョージ・ミラーの出世作でもある。
主役交代したシリーズ4作目の本作は、デザイン・コンセプトが細部に至るまで秀逸で、荒廃した砂漠で炸裂するバトルも過激にパワーアップ、ド肝を抜くシーンが連続するアクション超大作に仕上がっていた。
砂漠を牛耳る独裁者イモータン・ジョー率いるカルト的戦闘軍団に捕まり、彼らの“輸血袋”として活用される羽目になったマックスは、ジョーのハーレム妻5人を率いて反逆を企てる隻腕の女戦士フュリオサ、全身白塗りの青年ニュークスと渋々手を組んで逃走。容赦ない追跡に対して決死の反撃に出るが……。
公式記者会見に登壇したのは、ジョージ・ミラー監督とプロデューサー、編集者で監督夫人でもあるマーガレット・アン・シクセル、2代目マックス役のトム・ハーディ、フュリオサ役のシャーリーズ・セロン、ニュークス役のニコラス・ホルトの6名。
会見で「まずはジョージ・ミラーに謝りたい」と切り出したトム・ハーディは、過酷な7ヶ月間の撮影中、ミラー監督と意思の疎通がなかなか図れず不満を抱いていたと吐露した後、「だけど、荒野の砂漠の一寸先も見えない砂煙の中で、あれほどの台数のバイクや車輛の動きを把握するなんて、本当に不可能に近い。そんな中で、ジョージがどれだけ凄いことをやり遂げたか、映画が完成してみて本当に納得したよ」と反省の弁を述べた。
一方、シャーリーズ・セロンは2年前の撮影を振り返り、「映画では丸刈り頭だったけど、今日はポニーテールなんだから、もう遠い昔のことみたい。砂漠の撮影は本当に大変だったけど、ジョージに対して落胆したことは一度もなかったわ」とコメント。
また、悪の首領のハーレム妻たちを救おうとする物語であることから、フェミニスト映画だと指摘されていることについて問われたジョージ・ミラー監督が「特別フェミニスト的な話にしたわけではないよ」と述べるや、シャーリーズ・セロンが「でも私は、最初からとても大きな可能性を感じていたわ。それにマッド・マックスと共に闘う女戦士を演じられるなんて、女優冥利に尽きるわよね。この映画は“女性の存在”そのものに対して称賛しているし、登場する女性像はみんなとてもリアルなのよ」と言い添えた。また、長年の同志である妻マーガレット・アン・シクセルを持ち上げたジョージ・ミラー監督の発言も印象的であった。
(記事構成:Y. KIKKA)