【学生②】
本木さんに質問なのですが、原発などを色々映画で扱われていたので色々と考えさせられることがあったのですが、他にもどんな世代の人たちにこの映画を観てもらいたいですか?

本木:まさに皆さんのような若い人たち、そしてもっと小さい方たちも、これからの未来を担っていく人たちに、この映画を観てほしいですね。
ただ、大人向けのテーマを真正面から受け止めることもできますが、小さいお子さんたちにはある意味“怪獣映画”として観てもらってもいいのかと。
かつて『ゴジラ』という映画がありましたが、あれは人間の欲望が生み出した産物。
それがゴジラという怪物、そういうオチがありますよね。それと同じように、本作『天空の蜂』の巨大ヘリも、そして原発も、ある意味人間が生み出した怪物なのではないかと。そのような“怪獣映画”として、まずはお父さん、お母さんと観ていただいて。それが数十年後、もしくは数年後に成長した時、映画の背景に隠れていた大きなテーマに気づいて理解してもらえれば何よりだと、脚本を担当された楠野さんも仰っておりました。

MC:ありがとうございました。では、本編を拝見して一目瞭然ではあるのですが、江口さん、本木さん、今振り返って撮影中『本当に大変だった!』という所があれば、是非おしえていただけないでしょうか?

江口:スリリングなシーンの連続なんですけれども。中でも、本木さんとカーアクションをするシーンがあるんです。空の話と思ったら、本木さんと運転で爆走するという。
2人で何テイクもS字の山道をずっと下りまして…ヘリで内臓が動くのとまた別に、アキレス腱から骨盤までインナーマッスルが張るくらい二人で『ワァーッ!』っと言いながら頑張りました。

本木:車内ですからね。今のこの暑さの3倍くらいの空気になってまして…

江口:熱いんですよ…

本木:もう呼吸困難でしたね、私の場合は。

堤監督:声録らないといけないから窓も閉めてたんですね。私の演出の指示はとにかく『動きがあったら“ア”とか“ウ”とか言ってくれ』っていう(笑)
長かったですねあのシーンは…

本木:あそこ560テイクくらい…

堤監督:そんなにはやってない(笑)。それはやりすぎ(笑)
まぁ、30くらいはやったかもしれないです。

MC:本木さんは車のシーン以外で『ここは!』というシーンはありますでしょうか?

本木:私たちに限らず、専門用語が飛び交っている世界でしたので、それをこなすのが大変でした。中でも、今枝警部役の佐藤次朗さんの滑舌が良くてですね。佐藤さんがお芝居する度に監督が『大OK!』って風に仰るんです。ただ、一番大変だったのは、キャストもなんですけど、ちょうど昨年の初夏のころに撮影していたんですが、東京ではその頃ゲリラ豪雨がありまして…雨の中でも照明さんたちは、大きなクレーンとやぐらを使ってその日の太陽をつくり続けていました。撮影も時間との闘いですから、刻々と光の状況が変わるわけで、一定の8月8日の太陽に仕立てていくのは大変なこと。
本当にクレーンの上の照明さんたちは、トイレの用もたせずに、ずっと照明に張り付いていたと。そういう状況でした。

江口:ずぶぬれになりながら。あのシーンは緊張感もあって、怖かったですよね。

MC:監督は、20年以上前に発刊されて『映像化不可能』と言われ続けた作品で、いざ映像化となったときに、これはかなり覚悟の要るお仕事だったのではないかなと思うんですが、どのように思われましたか?

堤監督:私1人の力量では到底、太刀打ちできる原作ではございません。
非常に緻密に科学的に解析されている部分も沢山ありますし。それから人間ドラマとして深い部分もあります。20年一緒に、同じくらいの時間をかけて作り上げたチームがあります。
そのチームで原子力発電所とはいかなるものか、あるいはヘリコプターってどうやって飛ぶのかと。
私『ヘリコプターが前進するのはローターが少し前に傾くから』ってことを初めて知りましてですね。
そのことがわかってないと映画の一番最後に、大胆な下りがあるんですけど、そこには行き着かないわけです。本当にゼロから学んで、膨大な資料と向き合い、そして長い時間をかけてロケ場所を探し、またロケ場所を探しながら台本に反映し、ということを延々としました。
撮り終わってからもコンピューターグラフィックスの作業があり、中空に浮いている金属の質感を出すのがこんなに大変だとは…リアリティを出すのに非常に苦労しました。

本木:最新のVFX技術を駆使したってところも見どころだと思います。