映画『日本のいちばん長い日』 (8月8日公開/アスミック・エース、松竹配給)は、昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクションを、『クライマーズ・ハイ』『わが母の記』の原田眞人監督が完全映画化。太平洋戦争終戦の舞台裏では何が行われていたのか? 日本の未来を信じ、今日の平和の礎を築くため、身を挺し闘った人々の物語に挑みます。すべての日本人に伝えたい、戦後70 年の壮大な記念碑となる感動作が、ここに誕生しました。

このたび、8月8日(土)の全国公開を前に、昨日7月15日(水)に丸の内ピカデリー1にて主演の役所広司、本木雅弘、松坂桃李、そして原田眞人監督が登壇してのレッドカーペットセレモニー&完成披露試写会舞台挨拶を実施いたしました。

まずは、丸の内ピカデリー前に敷かれたレッドカーペットセレモニーにて、一面紫に染まった崇高な神前幕を前にキャストと監督が揃ってのフォトセッション。
続く完成披露試写舞台挨拶では、終戦記念日ちょうど一ヶ月前となるこの日に、初披露される本作をいち早く鑑賞すべく集まったお客さんの大きな拍手を浴びながら、再びキャストと監督が登場。

阿南惟幾陸相を演じた役所は「今日は暑い中完成披露試写会に来ていただきありがとうございます。どうぞゆっくりこの映画を楽しんでいってください。」と挨拶。
昭和天皇を演じた本木は「公開がどんどん近づくにつれ、この映画の中で自分はしっかりと責務を果たせていたのかどうかと、重くのしかかってくるような息苦しい思いをしております。賛否両論受けるつもりでおりますので、個人的には叱られというのを受け、早く楽になりたいというのが本音でございます」と、その胸の内を吐露。
続いて、畑中健二少佐を演じた松坂は「皆様に観ていただいて、より多くの方にこの作品を知ってもらい、劇場に足を運んで頂くために、どうぞ宜しくお願い致します」と挨拶。
そして、原田監督は「一昨日、じつはこっそりと各国の日本大使向けの試写をやったのですが、66カ国120〜130人の方がいらしてくれて、素晴らしい反応でした。人間がきっちりと、この歴史の重要な一面でどういう行動をしたのかというのが描かれていることに感動したと、上映後も1時間程お話しをさせていただきました。この映画はどの国へ持っていったとしても、賛否両論はあるにせよ支持してくれる方も非常に多いと思うし、作品としても面白いと論じてくれると思います。」と発言。

本作の見所について聞かれると、役所は「ほんのもう70年といいますが、ずいぶんこの70年で日本も変わったと思います。この映画は以前に岡本喜八監督版が公開されましたが、今回違うところは、原田監督の演出によるスピード感と、さらには昭和天皇が堂々と登場人物として描かれ、本木さんが素晴らしい昭和天皇を演じられております」と答えた。そして本木は「実際の私は相当な鈍さのあるギャップのある人間です。戦争を知らない世代で、こういうことにもあまり興味を持たなかったタイプなので、非常に恥ずかしく、、、この映画は2回目に観た時がピークです!」と言うと、すかさず監督から「大使たちは1回でわかってくれましたが(笑)」と突っ込みが。それを受けながらも本木は「私のよう人間は、最初は感覚的にみて、2回目に観たとき初めて鮮やかになるというか。シンプルながら深みのある言葉が箇所箇所にあり、そういうものが残像のように突き刺さってくると思います」との弁。
松坂は「僕が演じた畑中を含む若者たちを“動”とするならば、役所さんや本木さんが演じられた方々は“静”と言えるのかなと思います。それぞれが国を守るべく、“静”と“動”というものがどのように動いていくのか。非常に「怖いな」と思いました。お客様も観て感じていただければと思います。そしておそらく3回くらい観たら、もっと深いところが分かってくるのではないかと思います」と、三度もの鑑賞を勧めると、会場から笑いが溢れました。

また、本作で原田組への初参加となった本木は、監督について「本当に群衆をまとめる力がある方だなと思いました。本当に役者の力を引き出してくれる方だと。良い意味で自由と責任の与え方がとても上手だなと思いました。その投げかけによって役者が答えを発揮する。とにかく台詞を噛んだり間違えても、絶対に止めるな、そのまま演じ切ろというようなことが、基本的な指示だったと思います」と撮影を振り返りました。

終戦70年。改めて戦争に対する想いを原田監督は「「アメリカと日本で戦争したの?」と言っている学生が増えていることに驚いたメディアは1970年代の半ばなんですね。その人たちがいま大人になり、教育者になり出てきた世代が、戦後70年の根っこの部分で何が行われていたのか、全く興味も無いということがあったと思うんです。幸か不幸か、いま政治の形態がこういう風に動いているので、もう一度考え直そうというタイミング的には、非常にいい時期だと思います。私は、この映画を21世紀に入ってからずっと作りたかったんですが、今このタイミングで8月に公開されるということに歴史的な価値を感じております」と語りました。

また、本作で描かれている終戦にいたる過程は、降伏かそれとも本土決戦か、日本史上最大の決断だったとも言えることから、登壇者にとって、これまでの人生で<最大の決断>は何だったか?を問われると、本木は「私は日々どんな瞬間でも最大の決断です。目の前に置かれた食事に、白米にするのか、味噌汁が先か、おかずに手を付けるのか、それとも箸休めからつまむのかと、その一つ一つ全ての瞬間に迷って苦悩しております。もちろん今回の役をオファー頂いたとき、恐れ多くも昭和天皇役を受けていいのかを決めるときも最大の決断でございました」と語り、会場を沸かせた。松坂は「僕は大学をやめたときですかね。大学を辞めてこの仕事をやろうという決断があったんですけども、親はやっぱり怒っていましたが、スパッと決めました。後悔は、無いです!」と力強く自身の史上最大の決断エピソードを披露すると暖かい拍手が起こった。
最後に締めの挨拶として、原田監督は「昨日テレビで安部晋三首相の答弁を色々聞いていて、安部首相の言葉を借りるのならば、能力が無い政府が総合的な判断をして、民意を無視しているという事態がこれから続きそうな気がしているんですね。民意が無視されていたのが70年前以前の日本の状態、それをいかにして、昭和天皇と鈴木貫太郎さんと阿南陸相の三人が成したのかというこのことを考えるのには、いまが一番いい時期が来たと思います。もう一度70年前の根っこに翻って考えて、日本はどこからきてどこに向かっていくのかもう一度自問し、行動に移していただければと思います。」と強く訴えかけました。
そして役所は「70年前に日本の未来を、映画の登場人物たちが決めたわけです。作品の中に戦闘シーンなどは出てきませんが、この物語のバックには広島と長崎に原爆が落ち、戦地では兵士たちが飢えと苦しみに耐えながら戦ったというバックグラウンドがあります。そういったことも感じながら観て頂けると嬉しいです。戦争っていうのは本当に嫌なものですから、二度と繰り返さないように、この戦後70年を記念した今日の試写会で観て欲しいです」と締め、登壇者全員が客席に向かって丁寧に一礼をしつつ、舞台挨拶を終えました。