ネイチャードキュメンタリーのトップブランド<BBCアース>が、子供から大人まで幅広い世代に愛される〈ピクサー・スタジオ〉の協力を得て生み出した、映画『小さな世界はワンダーランド』が2015年5月9日(土)よりTOHOシネマズ 新宿他全国公開となります。

この度、本作の監督・脚本・製作を務める、マーク・ブラウンロウが初来日し、BBCアース作品の監修を手がけ、TV番組にも出演する、日本が誇る野生動物のスペシャリスト新宅広二先生(生態科学研究機構理事長)と共に、Apple Store銀座店で開催されるトークイベント「Meet the Filmmaker」にご登壇頂きました。

「昨年みた作品の中で一番よかった!」と熱を込めて語る新宅先生が、ブラウンロウ監督ならではの撮影秘話や、BBCが誇る世界最高の撮影技術、そして未だ謎の多いネイチャー・ドキュメンタリーのトップブランドNHU(ナチュラル・ヒストリー・ユニット)の内側に迫りました。
さらにQ&Aコーナーでは大人だけでなく小学生からも質問が飛び出す充実のトークイベントとなりました。

映画『小さな世界はワンダーランド』 マーク・ブラウンロウ監督初来日トークショー概要

●日時:4月23日(木) 
●登壇者:マーク・ブラウンロウ監督、新宅広二先生
●場所:Apple Store, Ginza 3Fシアター (東京都中央区銀座3-5-12サヱグサビル本館)

■“小さな世界”に着目した理由
[新宅]
今までのBBCのネイチャードキュメンタリーでは大きな生物を撮られることが多かったと思いますが、今回シマリスやスコーピオンマウスなど小さい生物を主人公にしたのはなぜですか?

[監督]
BBCでは今まで『ディープ・ブルー』のクジラ、『ネイチャー』のゾウのように巨大な生物を扱うことが多く、その陰に隠れる小さな生き物には目をむけてきませんでした。でも、私たちの足元に潜む小さな生き物こそ、すごく力強く生きていると気づいたんです。たとえば、どんぐりが一つ落ちるだけでも、彼らにとっては隕石が落ちてきたくらいの衝撃を受けるわけです。すごくドラマチッですよね。

■小さい動物を撮影する苦労
[新宅]
小さい動物を撮影するのは大変ですか?

[監督]
大変です。彼らの世界は私達と物理が違う、時間も、空間もね。大きい動物よりもっと面白いと思ったんです。
20cm、30cmの視点を皆さんに体験してほしいと。人間が小さくなってしまう『ミクロキッズ』という映画がありますが、私は同じように、小さい動物と同じ視点で世界をみてもらえるようにしたかった。小さい動物を撮るには機材がないんです。全部半分のサイズぐらいでないと。今回、潜望鏡の先にカメラがついているような、そんなカメラを開発してもらって、それで撮影しました。

■1秒で1000コマ撮影可能なカメラだからこそ世界で初めて撮影できたシーン
[新宅]
一番撮影が大変だったシーンはどこですか?

[監督]
どのシーンも本当に大変でした。6か月間準備をしてストーリーを練りました。
動物たちの習性から何が撮れそうかを整理して絵コンテも用意しました。勿論、動物は絵コンテ通りに演じてはくれないです(笑) ただ漠然とカメラを回すのは効率的も悪いので、ラフな絵コンテを用意したんです。
シマリスは、寒いのが苦手で起きるのが遅いんです。だから私達スタッフは、まだ寒い早朝に機材をセッティングして彼らが起きるのを待っていました。クライマックスのシマリスの戦いのシーンは特に大変でしたね。
長時間ずっと待ち続けて、一瞬の出来事だったので、僕らも肉眼ではわからなかったのですが、“ファントム”という1秒間に1000コマ撮影可能なカメラを使ってやっと彼らが戦いの中で宙を舞う際に実際にどんな動きをしているのかがわかりました。カメラを2台使用する大掛かりな撮影でしたが、このシマリス同士の戦いのシーンをカメラに収めることに成功したのは初めてで、後でご覧になった専門家の方も驚いていました。またシマリスがドングリをみがくようにして口に運ぶ様子なども、スローでみることによってよくわかりましたね。

■作品の世界をよりリアルにする監督こだわりの“音”
[新宅]
今回作品をみて、映像はもちろんですが、“音”も画期的だと思いました。すごく立体的な音でわくわくしましたが、こだわりだったんですか?

[監督]
もちろん。この作品をみたすべての人たちに、小動物の生きる世界に入り込んでほしかったですから。
自然の音を録音して、三週間かけて我々人間が聞いている音じゃなくて、彼らが実際に聞いている音に近づくように試行錯誤を重ねました。たとえば、スコーピオンマウスの遠吠えのシーンなんかは、人間が聞くとただの「キーッ」っていう高音にしか聞こえませんが、小動物にはライオンの鳴き声のように力強く聞こえています。見ている人にもその世界を感じてほしくて、楽しみながら音を作りました。、

■謎につつまれた世界最高のネイチャードキュメンタリー制作集団、NHU(ナチュラル・ヒストリー・ユニット)
[新宅]
そもそも、NHUで働いている人ってどんな人たちなんですか?

[監督]
一言でいえば「変わり者集団」です(笑)。髭面の科学者っぽい人とかが多いかな。BBCのほかのユニットからはよく「あいつらはかわってる」って言われますね。ですが、だからこそ面白いものが作れると自負しています。どの人もすごく熱意があって、自然を本気で愛している。そしてそんな自然を世界中の人に届けようと映像をつくっている集団です。

<会場からの質疑応答>
Q:色彩がすごく鮮やかでしたが、それはカメラの性能でしょうか? それとも編集によるものでしょうか?

A監督:音と同じく色も編集です。どの作品でもそうですが、自然を撮っても編集で色に手を加えます。
色のバランスなどカットを補正していくんです。そしてさらに、観客にどんな風に見てほしいかを考えていきます。
たとえば、本作だと砂漠は少し白っぽく、森は秋から冬の移ろいが伝わるように、秋は色彩を多く感じさせ、
冬は青っぽくしました。

Q:シマリスがお好きなんですか? 今回開発したカメラで他に撮るとしたらどんな動物を?

A監督:すごく好きです。かわいいしカリスマ性がありますから。かれらは300匹生まれても3歳まで生きられるのはほんの1匹。
応援せずにはいられませんよね。新しいカメラでは、水中を撮ったらどうだろう?と考えています。

Q:ドキュメンタリー以外を撮影されるご予定は?

A監督:どうでしょうね? 俳優さんと動物とどっちが演出しやすいか、次第ですね(笑)

Q:小学生の男の子より「監督は小学生の頃何になりたかったですか?僕は獣医になりたいです」

A監督:僕は昔から動物が大好きで、今も世界中で自然を撮り続けているデイヴィット・アッテンボロー卿に
なりたかったんです(笑)。獣医は素晴らしい夢ですね!

 新宅:監督にこんなこと言ってもらえたらうれしいですよね。頑張ってね!

《最後に監督から日本の観客へ一言》
「この映画を通して小さな生き物のことを知ってほしい、普段はあまり目にしないので
気づかないかもしれないけれども、彼らも生態系のひとつであって、食物連鎖のひとつ。
この世界に必要な存在なんです。小さな動物も大切に思ってもらえると嬉しいです」
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トークの最後には新宅先生から監督へ、監督の誕生日が5/5子供の日ということで
日本の伝統・鯉のぼりをサプライズでプレゼント!
縁起物だと説明を受けると「うれしい!次の撮影には必ず持っていくよ。」と約束。
「じゃあ、次回作のメイキングは要チェックですね(笑)」と新宅先生が答え、最後は
鯉のぼりを手に記念撮影をしました。
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以上。