映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』山田五郎×泉麻人、イベント試写会
この度、ヴェネチア映画祭でドキュメンタリーとして史上初めて金獅子賞を受賞しました映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』が、8月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開することになりました。それに伴いまして一般試写会イベントを行いました。
日程:8月12日(火)18:30〜19:00
場所:アキバシアター
登壇:山田五郎(評論家)、泉麻人(コラムニスト)
◯映画の感想
山田:正直ドキュメンタリーはあまり得意ではなくて、最後まで観れるかな?と。って。でもお世辞ではなく本当に観れたんですよ。画がきれいで、光の加減やカメラのアングルだとか、センスがよくて綺麗で画だけでも観れちゃった。
泉:僕は地理好きなんで、イタリア旅行の時の地図を持って来て重ね合わせながら観ました。映画は場所の地名とか明かされないから何となく湿地帯っぽいからここらへんかな?とか予想しながら。コロッセオとかイタリア広場とか観光名所がまるで出てこないローマの映画は初めてだと思います。
泉:郊外の外れみたいな町に行った時に、観光地よりも旅情を感じたりするんですよね。そうゆう気分を感じられる映画ではありました。
環状道路を走る救急車の音とか、サイレンに限らず、車のある程度の速度で走る音なんかの騒音であったり。
山田:音にもリアリティがありましたね。
◯登場人物について
泉:僕はウナギの漁師の人が好きでした。ウナギうんちくを語ってるんですけど、横で奥さんが「なにいってるの」みたいな感じで編み物してるんですよ。その風景が、僕らが子供の頃に見ていた「新日本紀行」とかで取り上げられていたような日本の漁村とか農村ととかと繋がるシーンはいくつかありました。
山田:こう言ってはあれだけど、学歴とかあるわけではないと思うのですが、新聞を読みながら奥さんに「お前はアルアドネか!」とかギリシャ・ローマ神話がでてきたりする面白さ、一つの仕事を真面目にやっている人が得られる学識にも似た教養に驚かされたり。
◯環状線について
山田:環状線はどうですか?これはね、いいところに目を付けたなって思いました。
山田:都市と農村の間。ヨーロッパは街と街の間は基本的に何もないからね。羊の放牧とかも見られる。
泉:近郊のドーナツ圏というか、ある意味ヤンキー的な人もいるでしょ。
山田:性格は違うけど、もし東京で撮るとするなら国道16号だと思うんですよね。東京環状って別名があるんですが、横浜、町田、八王子、川越、埼玉、春日部、柏、船橋、千葉、いま出たようなところがいわゆる中核都市で、マイルドヤンキーの人たち。都心に出てこない人たち。独特の文化があって、20年前からそうゆうのを感じてました。
山田:日本中どこにでもある景色じゃないですか。街道沿いに巨大ショッピングモールとパチンコ屋さんとか。
泉:ドライブインライフみたいな。
山田:その感じですね、東京の場合はどこまで行ってもこうゆう場所はないですね。16号で撮ると面白いんじゃないかと思いましたね。。
泉:全体的に退廃した人たちが暮らしてますよね。一線から退いてる人たちを捉えている。
◯監督は環状線沿いに「ニューローマ=新しいローマ」があると
山田:「ニューローマ」なのかな?泉さんが言ったみたいな退廃感。ある意味で終わってる感がすごい。
泉:ちょうど少し前に永井荷風を読んでいて、そのころ、永井荷風が荒川放水路なんかで玉の井を見つけたりするんだけど、それの今のイタリア版みたいな。娼婦さんたちがいるような場所をあたるのかな。
山田:新しい場所と言うよりは、むしろ忘れられた人々という感じがあって、それが言いようのないせつなさがあって、それがまた綺麗で困るというか。車がブンブン通る横にも、そこにも人生がある。といのを、とてもドライに撮っている。
泉:もっとロマンチックな曲を重ねてもいいなって思うけど、それも一切しない。
山田:でもそれも良かった。普通の生活音なんですけど、余計なBGMとかなくてそれがすごく生きてきますね。
泉:最終的な余韻はとても良い映画です。
山田:バラバラのピースが置かれていくんだけど、時に結びついたり、段々それが積み重なっていくと繋がって、一つの輪でなってゆく。
泉:こちらは車のハイウェイですが、東京でいうと武蔵野線だよね。車社会じゃないですからね。山田さんが16号線なら、僕は武蔵野線で撮りたいです。