7月26日(土)より公開になる河瀬直美監督最新作『2つ目の窓』が、この度第67回カンヌ国際映画祭のコンぺティション部門に正式出品されることが決定致しました。

日時:4月18日(金) 会見開始12:00〜
場 所:WOWOW 社内 ディスカバリー(港区赤坂 5-2-20 赤坂パークビル 21F)
登壇者:河瀬直美監督、株式会社 WOWOW 代表取締役社長 和崎信哉

MC:まずは監督、今のお気持ちをお願いします。
監督:晴れやかな気持ちです。今回のコンペティション部門の錚々たる監督たちと肩を並べて、カンヌの日差しの中に立てることを非常に喜ばしいと思っています。ありがとうございます。
社長:監督と同じ気持ち、それ以上に嬉しい気持ちです。昨夜の正式決定を受けて、我々のチャンネルでカンヌ映画特集を5月11日から月末に掛けて放送し、6月1日の日曜日、最後にこの『2つ目の窓』を公開に先駆けて放送させて頂きます。多くの方に観て頂き、じわっと作品を広めて貰う事ができるのは有料放送ならではと思っています。全面的にバックアップさせて頂きます。

MC:それでは質疑応答に移ります。
記者:正式出品が決定した際に発表されたコメントの中で、「最高傑作」という言葉がありましたが?
監督:クランクインして、最初のショットを撮った瞬間に、「これは私の最高傑作になるな」と思いました。それほどに奄美の人々の支援や、スタッフの素晴らしさ、俳優陣の実力が結集して今回の映画になりました。島の中での撮影は、嫌な事があったりしてもなかなか発散できない環境なのですが、その中で皆があるべき場所に向かい、同じ方向を向いて走っているなという実感がありました。また撮影監督の今年73歳になる山崎裕さんが、今回海の中でも沢山撮っているのですが、一日水中撮影をするという極限の中で撮れたショットなどは、どれを取っても世界一だと思っています。そして、松田美由紀さんを始めとする実力と経験のある俳優陣に支えられ、新人の少年少女たちが世界一美しい奄美の圧倒的な自然の中で負けないくらいの生命力を放っていて、これは言葉では言い表せられません。映画を是非観て頂きたい。そしてカンヌの舞台でこそ、この私が世界一だと言っているショットが活きるのではないかと思っています。

記者:公開に先立ちテレビで放送されるという試みに関しての感想は?
監督:映画を家でテレビで観るのと、劇場で観るということの間には越えられない壁があると思われていますが、観客にとってその壁はそんなに大きくはないのかも知れないと思っています。一視聴者として、より良い形で映画に出会えるという、素晴らしい試みだと思います。

記者:これまでは大人の男女にまつわる物語を描いた作品が多かったと思いますが、今回若い世代の少年少女を主役にした理由は?
監督:まだ無垢で感受性の強い世代の人たちにこそ、世界に対して希望を持って欲しい。この世界は素晴らしいと思って、夢や希望を持って歩いて行って欲しい。それを表現したいと思いました。

記者:去年カンヌ国際映画祭で審査員を務めた経験が今回の映画に活かされた点があれば教えて下さい。そして、パルムドールへの意気込みを教えて下さい。
監督:カンヌで審査員を務めた経験は、私にとって作家としても人間としても素晴らしい宝物を貰ったと思っています。スティーブン・スピルバーグ監督、二コール・キッドマンはじめ、同世代の監督たちと一緒に世界最高峰の映画を観ると言う殆ど出来ない経験を経て、「映画ってやっぱり愛が無いとだめなんだな」と思いました。

ですので、今回の映画で一番大切にしたのは愛です。愛というのは、情熱や、諦めない想いを注ぐという事です。
あと、本当に皆仲良くなったので、スピルバーグと一緒にカンヌの海でお互いにふざけて撮影をしたのですけれど、それを奄美の海で落としてしまって。バックアップもしていなかったので3分間位固まってしまったのですが、これは、奄美の海に、『2つ目の窓』に捧げたのだなと思いました。また同じスタートラインに立って作品に取り組まなければならないと思いましたし、今もその思いは変わらないです。撮影現場で俳優たちと話し合う中で、自分自身も怖くなってしまう事もあるのですが、そんな時は「あたしらは世界一を目指してんやで」と言っていました。
この映画に関わって下さった、出資者の皆さま、スタッフ、そして俳優たちに支えられて出来たこの作品は世界一です。カメラドール、グランプリの次は、パルムドール。1つの形ある賞として、そこを目指すしかないと思っています。

集まった報道陣の前で、作品への自信とカンヌへの意気込みを語った河瀬監督。第67回カンヌ国際映画祭は来月5月14日より開催され、5月24日に発表される受賞の行方に注目が集まる。