この度、前作『別離』で2011年度アカデミー賞外国語映画賞、ベルリン国際映画祭金熊賞をはじめ90冠以上の映画賞を総なめにしたアスガー・ファルハディ監督の最新作『ある過去の行方』(配給:ドマ、スターサンズ)が、いよいよ4月19日(土)よりBunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテほかにて全国順次公開いたします。
 
 そしてこの度、公開直前イベントとして、15日(火)に日本大学芸術学部にて映画学科の学生対象の特別試写会を開催!さらに試写後の特別ゲストとして、ライムスター 宇多丸 さんを迎え、トークイベントを実施しました。
 
 現在TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(毎週土曜O.A)内「週刊映画時評 ムービーウォッチメン」にて、毎週、実際に映画館で観た映画を独自の観点から分析する名物コーナーをもち、リスナーから絶大な人気を誇るライムスター宇多丸さんが来場するとあって、会場内は超満員の大盛況!
 
 今回、宇多丸さん自身「若い頃の憧れだった」と語る日本大学芸術学部の映画学科の学生を前にしたトークイベントということで、学生の大歓声に迎えられた宇多丸さんは、トーク冒頭から独自の視点で熱血解説を開始。
「ファルハディ監督作品で、僕が観ているのは『ある過去の行方』の他に、『別離』と『彼女が消えた浜辺』。そして監督が脚本家として参加している『フライト・パニック』というハイジャック犯が主人公のパニックムービーもDVDで観たのですが、すでに作家性がでていて興味深かった。ファルハディ監督の作風ってすごくはっきりしていますよね。本作のように、舞台がフランスに変わってもそれは一緒。そういう点でも映画監督を目指す学生さんにはすごく参考になると思う。そして技術的に日本でできないことは一つもないですね!ミニマムな家族とか夫婦、どこにでもあるような話をとり上げている。また発端となったメインの出来事を省略しているのが、監督の作品に共通する点でしょうか。」と鋭く解説。
そして「すごいのは、音楽はエンドロールまで一切ないけれど、SE(音)の使い方が非常にうまい。地下鉄の音とか、何か音楽が流れていたと思うくらい、効果的な使われ方をしている」と指摘。さらに「劇中、主人公の新しい恋人が、ペンキを塗り替える、電気を付け替えるなどの行為は、まさに過去を塗り替える意味を表していますよね。そういった細かな演出の積み重ねで、複雑な人間関係を描けるのが素晴らしい」と大絶賛!
また、ファルハディ監督作品に言える特徴の一つを“子供の使い方”だと話し、「僕としては、世界的にみても、是枝監督かファルハディかっていうくらい(笑)子供の使い方がうまいと思う!」という独自の指摘をすると、学生の皆さんからも思わず納得の声があがるほど。「そして、実は観客以外は、すべての事態を把握できないんですよね。誰が悪くて誰がよいとか決めつけていないし。こういった色々な指摘ができるから、何度見ても面白いんですね」と、すっかりファルハディ監督の作品世界の虜になった様子だった。

トーク終盤の質疑応答では、ライムスター宇多丸さんの大ファンという学生から、人間関係の悩み相談をされる一幕も。また映画の見方をきかれた際には「映画を観るときは、初見はあまり評論家的な分析などせず、観て感じたことを大切にしたいと思っている。だから何度も観てしまうのかも」と無類の映画好きの宇多丸さんの熱い思いに、学生たちも終始大盛り上がりのトークイベントとなりました。