映画『そして父になる』監督・是枝裕和氏 / 撮影監督・瀧本幹也氏がApple Store, Ginza でのMeet the Filmmaker に登場
本作は、第66回カンヌ国際映画祭にて審査員賞を受賞、更にオスカー前哨戦とも言われるトロント国際映画祭スペシャル・プレゼンテーション部門やサン・セバスチャン映画祭の出品が決定するなど公開に向け話題となっております。
この度、【9月3日(火)】にApple Store, Ginzaで行われるMeet the Filmmaker に、本作の監督・是枝裕和氏が、今年のカンヌ国際映画祭で審査員賞に選ばれた最新作『そして父になる』について、本作品で初めて映画撮影監督に挑まれた写真家の瀧本幹也氏と共にトークショーを行いました。
会場には立ち見が出るほどのお客さんが集まった中、お二人の出会いから、演出方法やカメラワーク、撮影秘話、カンヌの話など、興味深いトークがたっぷりと繰り広げられました。
時々笑いが起こるなど終始なごやかなムードで、大盛況の内に終わりました。
※Meet the Filmmakerとは
第一線で活躍する映画監督の生の声が聞けるApple Storeでのトークイベント Meet the Filmmakerは、海外のApple Storeでもこれまでメリル・ストリープ、トム・ハンクス、ジェームズ・キャメロン監督など世界的に著名な俳優や監督が登場し、その模様がiTunesでPodcastとして無料配信されている。
日本では山田洋次監督、岩井俊二監督、阪本順治監督、村上隆監督などそうそうたる顔ぶれが登場している。
映画『そして父になる』 Meet the Filmmaker
監督・是枝裕和氏 / 撮影監督・瀧本幹也氏トークショー レポート
日時:9月3日(火)
登壇者:監督・是枝裕和、撮影監督・瀧本幹也
場所:Apple Store, Ginza 3Fシアター(東京都中央区銀座3-5-12サヱグサビル本館)
トークショー内容
MC:第一線で活躍する映画作家の生の声が聞ける人気イベント、Meet the Filmmaker。
今回は監督・是枝裕和氏。今年のカンヌ国際映画祭で審査員賞に選ばれた最新作「そして父になる」について、本作品で初めて映画撮影監督に挑まれた写真家の瀧本幹也氏と共にトークショー形式で映画の見どころや撮影秘話など、興味深いトークをたっぷりとお話しします。
それでは、お待たせ致しましたまずは本作のメガホンを取られました是枝裕和監督をお呼びさせて頂きます。
どうぞ、大きな拍手でお迎え下さい。
是枝監督:本日はよろしくお願いいたします。立ち見の方はすいません。それでは瀧本さんをお呼びいたします。
瀧本さん:どうも、瀧本です。本日はよろしくお願いいたします。
是枝監督:今日は映画を中心に話すということだけど、まずこんな風に二人でじっくり会話することって初めてだよね。
瀧本さん:そうですね、なかなか機会がなかったですよね。
是枝監督:今回の映画は男をというか福山さんを色っぽく撮影したいと思っていたんだけど、ちょうどその時にダイワハウスの深津絵里さんとリリー・フランキーさんが出演しているCMを観て、今回は瀧本さんに頼むことにしました。自分の世界観を持っている方だなと。映画を撮ってみてどうでした?
瀧本さん:すごい簡潔な依頼メールが来ました(笑)まず、CMは絵コンテが設計図のようにコマ割りが綿密に書かれているのでイメージがつきやすいんですけど、映画の絵コンテはざっくりとしたものしか頂けなかったので、最初は不安でした。
あと、僕はこれからも写真をメインで活動していきたいと思っているんですけど、映像を一回撮ってしまうとのめり込んでしまいそうだからこれも不安でした。
CMを撮ることでさえも後ろめたさを感じているくらいなので・・・。
でもやっぱり実際やってみたら面白すぎてしまいましたね(笑)
是枝監督:僕の絵コンテざっくりしすぎだったのか。ごめんね(笑)写真家であり続けたいのはなぜなの?
瀧本さん:写真は自分が企画から作っていけるので、そこは軸としてブレたくないなと思っていて。
是枝監督:僕がこの作品(『そして父になる』)の中でいいと思った場面は、車が風景の中にポツンと走っていて、それがすごい色っぽいというか、エモーショナルだったんだよね。
瀧本さん:感情で画を切るというか、キャストの方の心の動きや距離感を大事にしながら撮影はしました。
是枝監督:瀧本さんはフィルムでしか撮影しないんですよ。だからCGも合成も一切使われてない。
今はデジタルの方が安いし、クオリティも上がっているから、ほとんどデジタルだと思うけど、僕はあんまり合成とか信用していないんです。その場で起きたことをどう取り込むか、音や風景もですけど、その場で起きた時の人の反応が大事だなと思っているので。
やっぱりフィルムで撮ると違う?
瀧本さん:そうですね、フィルムで撮ると深みというかコクが出ますよね。
言葉でなかなか言い表しづらいですけど。是枝さんの現場って予定調和なことを望まないですよね?
是枝監督:“コクが出る”っていい表現だね!決してハプニングを望んでいるわけじゃないんだけど、予定通りになってしまうとOKを出したくなくなちゃう(笑)そういうあまのじゃくの部分はあると思う。
せっかくこんなに人が集まっているから、なんか違うものが生まれないかなという欲が出てしまうんだと思います。
是枝監督:今回はキャストの方たちやスタッフたちとたくさん時間を共有したいという想いでカンヌに臨んで、カンヌでは瀧本さんも一緒に公式上映を観てもらいましたけど、反応がビビットだったでしょ?
瀧本さん:そうですね、日本の映画館とはやっぱり違いますよね、反応がわかりやすいというか。
あと、2400人が一斉に観る巨大なスクリーンとホールには驚きましたし、観客の方は女性はイブニングドレス、男性はタキシードを着ていたり着飾っていて、すごかったです。
是枝監督:カンヌは映画とそれをつくった人に対するリスペクトが演出されていて、身が引き締まるのと、やっぱり作ってよかったなという気持ちと両方ある。だから、決して褒められて泣いていたというわけではないんです!
でも、最初に泣いたのは瀧本さんだよね。普段すごいクールなんですよ!現場でも最初はあまり笑わなかったんだけど、助監督の人が面白い人でだんだん笑顔を見ることができるようになってきて。福山さんは大左衛門(アニメ・いなかっぺ大将の主人公)のだいちゃんで僕は、星飛雄馬って瀧本さんのことを呼んぶようになった(笑)
だから、カンヌで泣いていたときはすごいグッときてしまいましたね。
瀧本さん:映画をやることになって本当にできるのかなと不安だったんですけど、スタッフの方たちがみんなすごい良い人で。
是枝さんの難しいオーダーに対しても嫌な顔する人が全然いなくて、すごくよくなりましたね!とかみんなが一つの目標に向かっている感じがすごい気持ちよかったです。なかなかそんな現場ってないと思うので、良い経験をさせて頂きました。
すごく良い映画に仕上がったと思うので、是非ご覧になってください。
是枝監督:ありがとうございます(笑)