947年に歴史的大冒険としてその名を残し、のちに多くの冒険家や探検家に影響を与えた、いかだ“コン・ティキ”号の伝説的な航海を映画化した作品『コン・ティキ』。映画の公開に先駆けて、主人公トール・ヘイエルダールの実の息子であり、父の亡き後、本作のスーパーバイザーとして製作に関わり、ノルウェーのコン・ティキ博物館の理事長でもある、海洋学者のトール・ヘイエルダールJr.と、国立科学博物館にて6月9日(日)まで開催中の特別展「グレートジャーニー 人類の旅」にて監修を務める、探検家で医師の関野吉晴さんとのトークショーが本日5月31日(金)に開催されました。

1947年、ポリネシア人の祖先、起源を調べるために、いかだコン・ティキ号で太平洋8000キロの無謀な旅に出たトール・ヘイエルダールと、人類はどのように地球上に拡散し、どうやって生きてきたのかを自分の足で辿った探険家・関野吉晴。異なる時代に同じように人類のルーツを探る旅に出た2人の映画と展覧会が、今年上映・開催される記念から今回のトークショーが実現しました。会場は、約150人の観客で満席で、立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。人類のルーツに魅せられた2人の熱く楽しいトークショーに会場は何度も笑いに包まれました。

「リスクを冒し、常識を打ち破る行為が冒険だとすると、コン・ティキ号の冒険はまさに歴史に残る大冒険だ。映画の中では6人の隊員たちの葛藤、反目そして友情が、荒々しく雄大な海の上で繰り広げられている。──関野吉晴(探検家、医師、武蔵野美術大学教授)」

ジュニアさんご挨拶: この秋で75歳になるが、死ぬ前に日本に来られて良かったです(笑)。トール・ヘイエルダールという名前は先祖代々続いています。自分の父、自分、息子、孫…この世に全部で5人のトール・ヘイエルダールがいるが、自分はナンバー3と呼んでください(笑)。

関野さん: 縄文号は、古代から伝わる製鉄法で鉄を作るところからはじめて、全て自然にある素材で舟を作りました。GPSはもちろんコンパスも使わず星と島影だけで航海をしました。コンティキ号が航海をした時は、僕はまだ生まれていませんでしたが、縄文号と大変似ていると思います。
ジュニアさん:縄文号、そしてこの「グレートジャーニー 人類の旅」には、本当に心から感心しています。ただひとつ残念なことは、ここに父がいないことです。僕が冥土で父に会ったら、あなたと会ったことを土産話にしたいです(笑)。ここに僕の父がいたら、間違いなくあなたを船員としてスカウトすると思いますよ。
関野さん:僕も冥土であなたのお父さんに会いたいです(笑)
ジュニアさん: 僕はノルウェーでコンティキ博物館の理事をしています。ですから世界中の博物館を見てきましたが、中でもこの展示は特に素晴らしいです。本当に感動しました。なぜ期間限定の特別展示なのか、と不思議に思います。絶対に、永久展示にすべきだと思います。
関野さん:サンキュー!

ジュニアさん:自分の父は、国境を超えて人々がひとつのことを乗り越えられると信じている人だった。縄文号とコンティキ号が似ているのは、古代の素材で舟を作っている点と、そしてもう一つ、海は壁ではなく大陸と大陸を繋ぐ「道」だと考えている点だと思います。
関野さん:僕も本当にそう思います。ここ上野も下町ですので海がすぐ近くです。そこからノルウェーにもアメリカにもインドネシアにも行けます。
ジュニアさん:ぜひ海から舟でノルウェーに来てください。コンティキ博物館を案内しますよ(笑)。

関野さん:ヘイエルダールさんの3度目の航海の時は、僕はアマゾンに通っていました。ヘイエルダールさんの舟に日本人の乗組員がいると聞いて、すごくうらやましかったんです。
ジュニアさん: 私は海が怖いので、できればアマゾンに付き合いたいです(笑)。
関野さん:7月に行きますよ。一緒にどうですか?
ジュニアさん:サンキュー!

関野さん最後のご挨拶:僕は探検の定義は、右手に冒険、左手にサイエンス、頭の上にロマン、だと思っています。映画『コン・ティキ』は主人公のトール・ヘイエルダールさんの冒険を、正にその通りに描いていると思いました。ぜひご覧ください。
ジュニアさん最後のご挨拶:ありがとうございます。私にとっては、今日関野さんと会えたことが、正にグレートアドベンチャーでした。