「東日本大震災の被災地から届いた一通の手紙が僕に映画を撮らせようとしている」
7日、鹿児島県庁で行われたドキュメンタリー映画「夏の祈り」の記者会見で坂口香津美監督は企画準備中の劇映画「シロナガスクジラに捧げるバレエ」について熱く語った。
「夏の祈り」は原爆投下から67年後の被爆地・長崎を、テレビのドキュメンタリーを200本以上制作し、映画は4本目となる坂口香津美監督が自ら2年間撮影したもの。これまで明らかにされて来なかった日本最大の被爆者専用の特別養護老人ホーム「恵の丘長崎原爆ホーム」のお年寄りたちが平和学習で訪れる子供たちのために、自らの被爆体験を劇にして演じる姿は鬼気迫るものがある。
映画は話題を呼び、長崎、東京、横浜、盛岡、長野、名古屋、大阪と鹿児島を含めてこれまで8都市で公開。現在、鹿児島のガーデンズシネマにて公開中。(ホームページ http://www.natsunoinori.com )
「不条理な体験を乗り越えて、人はいかに生きるべきか、その答えの一つがこの映画にある。それは自らの体験を命を賭して伝えること」(坂口監督)

坂口監督が次回作「シロナガスクジラに捧げるバレエ」の映画化を思い立ったのは東日本大震災から3ヶ月後、自らの元に届いた一通の手紙が発端と明かした。
大津波の襲来により多数の犠牲者を生んだ宮城県東松島市にある生活私塾には家族と離れて暮らす子供たちが全国から集まり、生活を共にしている。
震災前、テレビの番組企画で何度か訪れていた坂口監督の胸を突いたのは、次の一節だった。
「子供たちは建物の3階にある窓から身を乗り出して懸命に手を伸びして大津波で流されて来る人々を次々と助け出しました」
自らの危険も顧みず、小さな手を伸ばし、人々を救出した子供たちの行為に突き動かされるように、「子どもたちが伸ばした小さな手」をモチーフに脚本を書いた。それは、大津波で家を流され、家族を失った幼い姉妹が再び元いた場所に戻り、生活を始める物語だ。
強力な助っ人も現れた。
これまでも被災地には足を運んで演奏活動を続けて来たアルトサックス奏者の坂田明氏が本作の趣旨に共感、資金提供を呼びかけるイメージ映像に自らの演奏楽曲「早春賦」を提供してくれたのだ。
現在、「シロナガスクジラに捧げるバレエ」はクラウドファンディングサイト「motion-gallery」(http://motion-gallery.net/)で、制作資金への支援を募っている。支援者には金額に応じて特別試写会への参加やDVDなどが貰えるほか、坂口監督自らが支援者のドキュメンタリー作品(30分)を制作する特典もある。問い合わせは、株式会社スーパーサウルス(電話03—3551—5530)まで。
映画「シロナガスクジラに捧げるバレエ」Motion Galleryページ
http://motion-gallery.net/projects/shironagasukujira