昨年の12 月20 日に亡くなった森田芳光監督の遺作『僕達急行A 列車で行こう』のブルーレイとDVD が9 月14 日(金)に発売されるのを前に、森田監督の代表作3 作を上映するオールナイトイベントが7 日に開催され、森田監督と縁の深いゲストによるトークショーも実施。35mm のプリントで上映する貴重な機会とあって、多くの森田監督作品ファンが参加した。

イベントで上映された作品は、『僕達急行…』と、デビュー作『の・ようなもの』、熱狂的なファンをもつ傑作『ときめきに死す』の3 作品。上映前に行なわれたトークショーには、『の・ようなもの』で主演の伊藤克信のほか、プロデューサーの三沢和子氏、編集の川島章正氏(『の・ようなもの』『ときめきに死す』『僕達急行…』)、助監督の杉山泰一氏(『の・ようなもの』『僕達急行』)が出席。森田監督についてや映画の裏話が語られた。

上映作品の『の・ようなもの』は、青年落語家の姿を描いた作品。三沢プロデューサーが「主人公を探すためにあらゆる寄席に行って若手を見たけど、役にぴったりの人がみつからなくて」と語ると、「『全日本学生落語名人決定戦』という番組で(僕が)敢闘賞をもらったのを監督がたまたま観てたんですよね」と、『の・ようなもの』で俳優デビューを果たしたきっかけを伊藤が明かした。本作は、森田監督にとってもデビュー作。助監督の杉山氏は「現場では、新人とは思えない振る舞いで、プロの俳優さんに的確に演出されてました」と裏話を披露した。

また、「毎回、(監督から)いろんなテクニックを見せてもらってびっくりする」という編集の川島氏は、「『ときめきに死す』のエンディングで、駅へ向かう3 人のシーンを、車の上にカメラを置いて360 度回して撮りました。当時初めて見たテクニックでした」とコメント。さらに、「森田監督は、ロケ地を決めるとき、空気感と四季温度を大事にしていた」と三沢プロデューサーが話すと、杉山氏が『僕達急行…』に触れ、「舞台となる九州へ製作部と先に乗り込み、青春18 切符で九州の列車を乗りつぶしました。各駅停車だから眠れなくて、ずっと車窓の風景を眺めながら、汽車の通るポイントや舞台のラストになる駅を探してましたね」と徹底したロケ地探しについて語った。

イベント終了後に行なわれたアンケートでは、「伊藤克信さんの話が聞けて満足!」「『ときめきに死す』は公開時以来の鑑賞!大画面で観れて良かった」「訃報をきっかけに、森田監督の作品のファンになりました。コメディやサスペンスの描き方が好き」「『の・ようなもの』『ときめきに死す』は観たことがなかったので、スクリーンで観れて本当にうれしかった」と、満足度の高いコメントが寄せられるなど、盛り上がりを見せたイベントとなったようだ。