Coccoと塚本晋也が作った衝撃の映像体験に観客の惜しみない拍手

Cocco初主演・塚本晋也監督最新作『KOTOKO』の特別先行上映会が3月27日(21:00)テアトル新宿にて行われた。東京フィルメックスでの上映以降、「公開を待ちきれない」の声を受けての上映会。チケット発売2日目には座席指定は完売、立ち見30名超、通路まであふれた期待いっぱいの観客を前に、塚本が舞台挨拶を行った。

塚本は3月16日 イタリア レッジョ・エミリア アジア映画祭で功労賞を受賞して以来初の登壇。昨年9月のベネチア国際映画祭オリゾンティ部門最高賞受賞しての帰国後にCoccoからサプライズのお祝いをしてもらったエピソードや、レッジョ・エミリアはチェン・カイコーや塚本が好きなツァイ・ミンリャンらの回顧上映を行っている映画祭であることを語り、二つの映画祭の受賞楯が観客にお披露目された。

この日は「Cocco 歌のお散歩。」も特別上映された。以前からCoccoの大ファンで、Coccoの世界を描くことを熱望していた塚本が、『ヴィタール』での楽曲提供を経て、初めてCoccoを撮った短編。Coccoとゆかりのある映像作家たちによるコラボ企画「Inspired movies」の一編で、『KOTOKO』に先立つ作品。

「Cocco 歌のお散歩。」そして『KOTOKO』上映終了後。エンドロールが上がりきってなお観客は余韻にひたり、場内に残って、あたたかな拍手を惜しみなく贈り続けた。さらにロビーでは、監督のサインを求める長蛇の列が出現するといった、ベネチア映画祭でのワールドプレミアを彷彿させる光景が見受けられた。Coccoと塚本晋也、強烈な個性をもつ二人のアーティストが作りあげた映像体験が、日本でも待望されていた事実が証明されたといえる一夜となった。本作のためにはじめたという塚本のTwitterには熱いメッセージが続々と寄せられているという。

———Coccoと『KOTOKO』をつくるまで、そして歌と音楽のこと
「『KOTOKO』の脚本を作る時には、Coccoさんにインタビューをしたり言葉をもらったりしてその世界に近づこうと思いました。Coccoさんには脚本に違和感がないか、意見をもらいながら進めていったので、現場が始まった時は、Coccoさんは完全に琴子を自分の中で作り上げていました」
「映画の中で何曲か歌っていただいてますが、僕はCoccoさんの歌の大ファンなので、映画のために曲を作ってもらったのは本当にありがたかったんです。歌を切りたくなかったので1カットで撮っています。音楽は、Coccoさんの手持ちの楽器で、Coccoさん自身によって作られました。Coccoさんのつぶやきや息づかいを映画のなかになるべく活かしたかったのです。音楽は、海獣シアター(塚本の会社)でホームビデオで録ったのですが、それがすばらしくて、映画ではそのまま使うことになりました。車の音なども入っていますが、この時にしか録れないかわいらしさ、息づかいが出ていると思います」

———この映画に込めたメッセージ
「僕のなかにはだんだんと戦争状態が近づいてきているという恐怖があって、子供の世代が戦争に行くような事態になってしまうのが一番怖いんですね。Coccoさんの世界を見ていくうちに、自分の中に浮かび上がってきた「戦争」という大きなテーマ、ここ最近の一番大事なテーマですが、このふたつが合わさったときに『これは今やらなくちゃいけない』と思いました。震災前と後で脚本そのものは書き変えていませんが、地震の後、お母さんたちが子供を守ろうとする姿がエキセントリックなほど一生懸命になって、その姿が僕の中で琴子に重なって、実感を込めてKOTOKOを描く事ができました。また、クランクインまで、自宅で折り鶴を折っていたCoccoさんの強い後押しもあって撮影を開始することができました。大事な人を守るのがとても難しくなっていくと感じている人にぜひ見てもらいたいと思います」