第64回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2011】7
映画祭5日目の15日(日)。“コンペティション”部門では、フランスのミシェル・ハザナヴィシウス監督の『アーティスト』とジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の『少年と自転車』が、“ある視点”部門では、ドイツ映画『ストップド・オン・トラック』が正式上映された。
◆映画祭開幕直前に招待作品からコンペティションに昇格した白黒無声映画『アーティスト』に大喝采!
2006年の東京国際映画祭でグランプリに輝いたスパイコメディ『OSS 177 カイロ、スパイの巣窟』(DVDタイトルは『OSS 177 私を愛したカフェオーレ』)の監督&主演コンビによるモノクロのサイレント映画『アーティスト』の上映が8時半から行われた。コンペ外の招待作品から、急遽“コンペティション”部門に昇格(映画祭の公式プログラムの変更も間に合わなかった)のだが、これが名画『雨に歌えば』『スタア誕生』を彷彿とさせるすこぶる快作で、上映後は珍しくもプレス席から大きな拍手が巻き起こった。物語の舞台は1927年のハリウッド。サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、エキストラのペッピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)を見初め、人気女優へと育てていく。次第に2人は惹かれ合うが、トーキー化の波の中で、ジョージの人気が凋落。反対に売れっ子になったペッピーは、何とか彼を再起させようとするが……。
上映に引き続き11時から行われた公式記者会見には、監督のミシェル・ハザナヴィシウスと主演俳優2人等が登壇。ミシェル・ハザナヴィシウス監督は、サイレント映画という手段を選んだ理由について「長い間温めていたアイデアなんだ。この皮肉なコメディにとりサイレント映画はベストなフォーマットだと思ったのさ。模倣はしたくないが、サイレント映画はメロドラマにぴったりだろう。偉大なチャップリンの作品もしかりさ。なので、照明、キャスティング、セット、物語と全てにおいて正しい選択ができたと自負しているよ」とコメント。ダグラス・フェアバンクスをモデルにイメージしたという主人公を巧みに演じたジャン・デュジャルダンは、劇中で披露した見事なタップダンスについて「専属コーチのもとで5〜6ヶ月、毎日猛練習したんだ。それにベレニス・ベジョと僕はマンボも踊らなきゃならなかったんでホントにキツかった。だけど、とても楽しかったよ。」と余裕のコメント。またベレニス・ベジョは役作りで「ジョーン・クロフォードやクロリア・スワンソン、マレーネ・ディートリッヒらの大女優をお手本にした」と語った。
◆各国セラーのブースが立ち並ぶリヴィエラで、日本の会社19社がイベント“Sake Night”を共同で開催!
メイン会場パレ・デ・フェスティバルに隣接する“リヴィエラ”は世界中の映画会社のセラーとバイヤーたちが交渉を繰り広げる映画見本市(マルシェ)の商談の場だ。ここには日本の映画会社やTV局の多くも個別に海外セールス用のブースを出して自社の映画の宣伝と売り込みを行っている。そこで、カンヌ映画祭に参加している日本の会社が互いに協力し合って、日本酒や国産ビールやを振る舞い、日本独得のおつまみを提供する恒例のイベント“Sake Night”が、今年も15日の夕方にリヴィエラ内のブース(A11&A14)で開催された。共催したのは東映、東宝、松竹、角川ピクチャーズ、日活、ポニーキャニオン、NTV、TBS、ギャガ、ショウゲート、ジェネオン・ユニバーサル、クロックワークス、円谷プロダクション他の全19社。また今年は、残念ながら海岸沿いの映画テント村(インターナショナル・ビレッジ)にパビリオンの出展を断念した日本だが、邦画全体のプロモーションを行うジャパン・ブースは例年通りメイン会場パレ・デ・フェスティバルの地下に設置されている。
(Report:Y. KIKKA)