映画祭2日目の12日(木)。“コンペティション”部門では、イギリスのリン・ラムジー監督作『ウィー・ニード・トゥ・トーク・アバウト・ケヴィン』とオーストラリアの作家ジュリア・リーが初監督した『スリーピング・ビューティー』という女性監督の2作品が正式上映された。オフィシャル部門である“ある視点”も本日、開幕し、上映会場の“ドビュッシー”でオープニング・セレモニーが行われた。また、映画祭の併行部門(主催団体が異なる)の“監督週間”と“批評家週間”も開幕!

◆英国の女性監督リン・ラムジーが、長編監督3作目の『ウィー・ニード・トゥ・トーク・アバウト・ケヴィン』でカンヌのコンペに初参戦!

 スコットランドのグラスゴー出身で、前2作『ボクと空と麦畑』『モーヴァン』が日本でも公開され、来日も果たしているリン・ラムジー監督は、イギリスの労働者階級の厳しい現実を直視し、瑞々しい感性で青春の物語を紡いで魅せるのが得意な社会派監督だ。今回、“コンペティション”部門にイギリスから唯一出品された『ウィー・ニード・トゥ・トーク・アバウト・ケヴィン』は、アメリカの作家ライオネル・シュレイヴァーの小説の映画化だ。息子のケヴィンが15歳で凶悪事件を引き起こし、加害者家族として世間から白眼視されている彼の母親エヴァ(ティルダ・スウィントン)を主人公に据え、彼女の現在と子育てを追う過去の姿を交錯させて描いた作品で、フラッシュバックの多用がキリキリとした緊迫感を生み出している。
 朝の8時半の上映に続き、11時から行われた公式記者会見には、共同で脚色も手掛けたリン・ラムジー監督、主演のティルダ・スウィントン、息子役のエズラ・ミラー、父親役のジョン・C・ライリー、共同脚色者、プロデューサーが登壇した。
 無差別大量殺人を犯した少年の家族の罪悪感に焦点を当てて描いた本作について、リン・ラムジー監督は「犯行シーンそのものは描きたくありませんでした。極端に暴力的なモノは見せたくないという理由もありますが、それだけではなく、“母親の視点”を守るためにもそうしました。母親の視点から描写するとすれば、その場面は想像することしかできないのですから」とコメント。また、ティルダ・スウィントンは生まれた子供をエイリアンのように扱う主人公の孤独について、「母親にとって、実にリアルな感情だと思いました。母親はとても暴力的で残酷になる可能性を秘めています。自分が産んだ“存在”が、自身の暴力性を体現するのではないかという考えは恐ろしいものです。この作品は、ある1人の母親の感情と家族関係の断絶について観察する一種の旅なのではないでしょうか」と語った。

◆“ある視点”部門の開幕作品はガス・ヴァン・サントが
監督した繊細かつ詩情豊かな青春映画『永遠の僕たち』

 現地時間12日の19時45分より、映画祭のオフィシャル・セクションである“ある視点”部門のオープニング・セレモニーが、パレ・デ・フェスティバルのドビュッシー・ホールで行われた。映画祭ディレクターのティエリー・フレモーが、登壇した“ある視点”部門の審査員メンバー(審査委員長は『パパは、出張中!』と『アンダーグラウンド』でパルムドールを2度制したセルビア人監督エミール クストリッツァ)と開幕作品となる『永遠の僕たち』のスタッフ&キャスト(ガス・ヴァン・サント監督、主演俳優のヘンリー・ホッパーとミア・ワシコウスカ、脚本家のジェイソン・リュウ、製作者のブライス・ダラス・ハワード)を紹介。ガス・ヴァン・サント監督の挨拶に続き、『永遠の僕たち』が上映された。実は『永遠の僕たち』組は、15時より予定されていた公式記者会見がキャンセルされ、オープニング・セレモニーへの登壇も危ぶまれていたので、いやぁ〜ホッとした!
(Report:Y. KIKKA)