映画祭初日の11日(水)。映画祭の公式開幕は本日、夜の7時(現地時間)から催されるオープニング・セレモニー(司会は『イングロリアス・バスターズ』『オーケストラ!』で知られるフランス女優メラニー・ロラン)からなのだが、我々報道陣の仕事は早くも午前中からスタートだ。
 まずは、オープニング・セレモニー後に上映される開幕作品『ミッドナイト・イン・パリ』のプレス向け試写が、午前11時から始まり(朝寝坊が許されるのは今日だけ。明日からは連日、朝8時半からの上映に駆けつけねばならない)、13時からは『ミッドナイト・イン・パリ』の公式記者会見。続く14時からは、新たに設置された賞パルムドール・ドヌール(これは過去にパルムドールを受賞していない巨匠監督を讃える賞で、オープニング・セレモニーで授与される)を受賞するイタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督の公式記者会見。そして14時45分からは“長編コンペティション”部門の審査員9名が全員登壇する審査員会見という怒濤の公式会見3連発! 分刻みのスケジュールの上、3件ともニュースバリューがとても高いので、記者たちが会見場に殺到。早くも初日から入場制限を敷く(『ミッドナイト・イン・パリ』の会見に出席した記者たちに後の2会見に臨む優先権が与えられ、席を動かぬようにと指示される)事態となった。

◆『ミッドナイト・イン・パリ』の公式記者会見では、
飄々たるウディ・アレン節が全開!

 今回は監督に専念したウディ・アレンが昨年の夏にパリで撮影し、フランスのサルコジ大統領夫人カーラ・ブルーニの出演も話題になったオープニング作品『ミッドナイト・イン・パリ』は、オーウェン・ウィルソンがウディ・アレンの分身とも言える主人公を好演した小粋でファンタジックなラブ・コメディだ。
 婚約者の両親のビジネス旅行に付き合い、婚約者(レイチェル・マクアダムス)とともにパリを訪れた作家志望の青年(オーウェン・ウィルソン)が、ひょんなことからジャズ・エイジたけなわの1920年代のパリにタイムスリップ。作家のF・スコット・フィッツジェラルド夫妻、作曲家のコール・ポーター、作家のアーネスト・ヘミングウェイ、歌手のジョセフィン・ベイカー、画家のパブロ・ピカソやサルヴァドール・ダリ、写真家のマン・レイ、映画監督のルイス・ブニュエルら、パリに集うキラ星のごとき著名文化人と遭遇し、さらには、20年代のパリで出会った魅力的な女性(マリオン・コティヤール)とともに19世紀末にもタイムスリップしていくという実にチャーミングな物語で、米仏英の人気俳優が大勢起用されている。
 13時から行われた記者会見には、残念ながらカーラ・ブルーニ・サルコジの出席は叶わなかったが、ウディ・アレン監督と主演のオーウェン・ウィルソン、そして共演者のレイチェル・マクアダムス、エイドリアン・ブロディ、マイケル・シーン、レア・セイドゥらが登壇し、大盛況の会見となった。
 パリへの熱烈なラブレターとも言える本作について、ウディ・アレン監督は「パリをできるだけ美しく撮りたかった。暖色系の色を使い、優しいトーンで描こうと思っていたんだが、希望通りに仕上がったよ」と語り、オーウェン・ウィルソンの起用については、「僕と彼は全く見た目が違う。ご覧の通り、僕は東海岸出身のインテリでヨーロッパ的だが、彼は西海岸出身のブロンドで見た目はサーファーっぽい。だけど、彼との撮影はとてもやりやすかったよ」とコメント。居並ぶ俳優陣には名匠と一緒に仕事をした感想を求める質問が続き、彼らは「監督に自由を与えてもらえてノビノビと演技が出来た」と口々に語った。また、シュルレアリズムを代表するスペインの偉大な画家サルヴァドール・ダリに扮し、あまりのソックリぶりに驚かされたエイドリアン・ブロディは、「実のところ、ダリ役については、今までに他の作品で何度もオファーされてきたんだけど、引き受けたのは今回が初めてなんだ。きっと僕は彼の生まれ変わりなんじゃないかな」と苦笑気味に発言、会場を大いに沸かせていた。
(Report:Y. KIKKA)