2008年あらゆるメディアに取り上げられ、流行語大賞TOP10入りを果たした『蟹工船』。80年前のプロレタリア文学の名作が、その構造は残しながらも、大胆な現代的アレンジを施し映画となって現代に蘇ります。公開に先駆けまして、本日6月12日(金)、SABU監督と作家・評論家として活躍する高橋源一郎氏、そして「蟹工船」企画プロデューサー豆岡良亮氏を迎えた、スペシャル対談イベントを開催いたしました。
当日は、高橋氏が教授を務める明治学院大学におきまして、集まった学生・若者を前に、文学としての「蟹工船」、映画としての「蟹工船」をゲストそれぞれの視点から語っていただくほか、現代の若者へ向けた熱いメッセージや学生とのティーチインなど、とても貴重な「蟹工船」対談イベントが実現いたしました。

【日時】6月12日(金) 20:20〜21:00
【場所】明治学院大学白金キャンパス 3201教室
【特別ゲスト】SABU監督 高橋源一郎氏(明治学院大学 国際学部教授) 豆岡良亮氏(企画プロデューサー)

2008年1月9日付毎日新聞朝刊誌面にて「格差社会:08年の希望を問う」対談コラムにて、「蟹工船」ブームの火付け役となった高橋源一郎教授を進行役にSABU監督、豆岡Pが登壇。映画「蟹工船」鑑賞直後の約300名の学生を前にイベント開始。

■SABU:3年前ベルリンに留学していたのでブームは知らなかった。戻ったら不況で俺も仕事がない。原作を知らなかったので、
映画の話がきたとき「蟹光線」という動物ものかと・・・(笑)。マイナスからスタートラインに立つ原作のメッセージが現代に通じると
思いました。映画オリジナルの首つりのシーンは、「自決」を「自分で決める」という前向きな団結の伏線として描いた。2?300万という金額で首を吊る人も多い今、踏み倒してでも生きろ!と思います。「言い訳してもすすまない、どうなりたいか考えて行動すればどんどんよくなる」というメッセージを込め、みる客を限定したくなくて、あえて主人公を作ったり、時代設定をはっきりせず、わかりやすい形に変えました。

■豆岡P:主義主張を映画にしようとするとハードルがある。いま「蟹工船」が受け入れられているのは、悲惨な状況ではなく、メッセージや本質自体が通じているなと。貧困やきびしい労働を肉体でしらない若い世代は貧困格差のリアルさより、いまの「閉塞感」を感じて「かわらないのでは?」からはじまっている気がします。蟹工船の「もう一度、立ち上がれ!」は現代社会へのメッセージにつきると思います。

学生たちから、高橋教授に「小林多喜二の原作と映画を比較した意見」がもとめられると:
■ 高橋:原作には悲惨な状況の中、「疲れたから寝る」を繰り返すモノクロイメージをもっています。でも、そんなのは映画でみたくない。命の軽さや悲惨さを描いたら暗くなるだけで、そのままだとつらく映画にするにはしかけが必要。本を読み込むと、小林多喜二にはまじめなだけじゃなくユーモアもある。どこかで笑わないと。文化としての「蟹工船」と映画としての「蟹工船」は別物。
多喜二をも超えて、文化と映画の美しいコラボレーションとなったと思います。

集まった学生からのアンケートによると、原作を読んでいる人は2割弱(約50名)、映画に対する評価も高く、現代の若者にメッセージがストレートに響いた結果となった。