8月2日(土)より、夏休み超話題作であり問題作でもある『闇の子供たち』が公開される。公開目前7月30日にTOKYO FMにて阪本順治監督と、国際弁護士である八代英輝さんによるトークイベント付き試写会が行われた。

八代:全国公開を控えられた今の率直なご心境からお伺いできますでしょうか。
阪本:今日はありがとうございます。そうですね・・・、日本から脱出したい気持ちはあるんですが、反響を楽しみにして毎日過しております。

八代:監督からみられて、この俳優の方々がまずこの衝撃の社会派の大作を受けてくれるかどうかという不安はありませんでしたか。
阪本:絶対受けてくれると思ってオファーするんですよね。宮崎あおいさんとは初めてお会いしましたけど、江口くんとは度々ご飯を食べたり飲む席があったりして、この人たちは決してどんな映画が来ようが自分のイメージが壊れるとかファンが逃げるとか、そんな発想はしない人たちだとわかっていたので、脚本を書く時からもイメージキャストとして、宮崎さんもそうですが顔を思い浮かべながら書いていたという感じでしたね。

八代:監督は、対談で拝見したんですが、梁石日さんの原作をノートに書き写して、それを自分でイメージしながら脚本にしていったそうで、どれだけノートに書き写したかわからないということでしたが、原作は衝撃的な作品で、おそらく多くの方々も読み進めていくのが苦痛になるほどの怖い作品だと思うのですが、監督ご自身原作をご覧になって、これを映画にできると思われましたか。
阪本:今回の仕事をオファーして頂いたセディックインターナショナルの中沢さんから、本を読んでほしいと言われました。当然映画化が前提なんですけど。そのプロデューサーにまず驚きましたよね。このテーマをプロデューサーとして背負うという覚悟に驚いて、すぐに二つ返事で「やらせてください。自分が今最もやりたい企画かもしれません。」という話をしました。日本映画がかつて触ってこなかったテーマを自分がやれるというのは危険なにおいはするんですが、言葉は悪いですが創り手としてスリルなんですね。でもそれからが大変でした。どうやって映画化するのかっていうことが。

八代:監督ご自身、国内の問題を取り扱い、社会的な問題も取り扱い、次は海外に出て映画を撮ってみたいという希望を持ってらしたと伺いました。その中で今回の映画は、かなり長期間にわたるタイでの現地ロケを敢行されたわけですが、タイでのロケについて、もちろん政治も文化も気候も食文化も違うわけですから、非常にスタッフの方々のご苦労があったと思いますが、撮影の秘話みたいなものはありますか。
阪本:去年の4月からひと月ほどタイに入ったのですが、タイでは1番暑い時なんですね。タイの人たちはこんな暑い時に日なたにいる人はいないというくらい暑く、僕らはそれなりに覚悟をして、水分補給とか色々気をつけながら撮影をしていたのですが、それでも若いやつから倒れていって5人くらい病院送りになり、最後は僕でしたね。

八代:監督は撮影中に声を失われたと聞きましたが、それはストレスからなんですか。
阪本:観るとわかって頂けると思うのですが、色々と気を遣って進めなければいけない撮影があって、特にタイの子役の子たちなんですが、そのケアの仕方とか、明日こういう手順でいこうとか色々考えたら寝られなくなったり食事ものどを通らなくなったり、自分の体力のなさですかね。

八代:スタッフの方々も俳優の方々もビザを更新する為に15分ほどミャンマーに行って戻ったり、毎日カレーとフルーツばっかり食べる生活であったりと、さぞかしご苦労があったと思うんですが、そんな中弱音をはく方などいらっしゃらなかったのですか。ホームシックになってしまったりとか。
阪本:弱音をはくことはなかったですね。みんな地方ロケとか海外ロケの場合は、俳優さんにはいいホテルに泊まってもらうんだけど、(このロケでは)何があるかわからないんで、スタッフと一緒にビジネスホテルに泊まってもらいました。帰ってドアを開けるとゴキブリとか蜂が「お帰りなさい」という状態で、そういうところでは悲鳴はありましたけど、でもみんな覚悟してやったし、タイのスタッフも僕の映画の趣旨を理解して文句ひとつ言わず付き合っていただいたんでね。素晴らしいチームワークだったと思います。それは自信があります。