SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008:招待作品 音楽座ミュージカル『メトロに乗って』Q&A
中年営業マンの小沼真次の父は、戦後裸一貫で世界に冠たる企業を興した小沼佐吉。真次は父に反発し、高校卒業後に家を出て、今は妻と子供の五人家族で暮らしている。決して楽ではない生活、会社の同僚のみち子との深い関係・・・真次は心に闇を抱えていた。ある日、悪酔いした真次は地下鉄のホームで元教師と再会し、その日が30年前に自殺した兄の命日である事を思い出し—。
メトロに乗って、時代をさかのぼり父の人生を新たに発見していく真次。果たして、そこにある真実の運命とは?
原作・浅田次郎による同名小説を音楽座がミュージカル化、2000年に初演を迎えた。本作品は、映画館特別上映版として撮影されたものである。映像監督をつとめたのは、第2回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2005長編コンペ部門で審査員特別賞を受賞した宮坂まゆみ監督。
上映後に、真次役を演じた広田勇二さんと、佐吉役を演じた吉田朋弘さんが登壇し、観客からの質問に答えた。
以下、Q&A内容。
●舞台で演じたものを映画館で観て、いかがでしたか?
広田:「自分が出演した舞台を、こうして劇場で観るのは初めてです。僕がお芝居に入った理由は、映画が好きだったのがきっかけなので、こうして観る事ができてびっくりしています。臨場感があって、再び舞台に立っているような気分になりました。」
吉田:「初めて観た時、普段の練習の際のVTRチェックのように色々と気になってしまうかと思ったら、今回は客観的に観る事ができました。お客さんのように、面白く観れました。」
●上演の際には、生演奏のオーケストラが入っていたそうですね。歌の練習は毎日されたのでしょうか?
広田:「そうですね、練習があるのでほぼ毎日でした。」
吉田:「普段から歌っていないと、お客さんの前に出た時にうまくいかないので、毎日練習していましたね。」
●舞台に立つ時の心得は?
広田:「お客さまがいらっしゃる事をなるべく意識せず、役の人生を生きるように演技するようにしています。あまり意識すると緊張してしまうので(笑)」
吉田:「相手役の方との交流を大切に、という事を心がけています。」
●今後もこの作品は上映する予定なのでしょうか?
広田:「日程は決まっていませんが、上映予定です。」
●今だから言えるハプニングは?
広田:「吉田君はよく歌詞を忘れるんです(笑)歌詞を壁に貼っていたりしましたよ。」
吉田:「オリジナルの作品なので、日々変更があり、同じメロディーで違う歌詞を歌ったりするので混乱しました。」
●自分が経験した事のない齢を演じる際、一番苦労した歌はなんでしょうか?
吉田:「“アムール”という曲ですね。僕は戦争を経験していない世代なので、浅田さんからも言われたのですが、自分から聞いていく事を大切にしました。その時代に生きていた人の気持ちを完全に理解する事は難しいですが、1センチでも2センチでも理解するように努力しました。」
広田:「皆で資料を集めて、特に闇市というものがテーマにもなっているので、頑張って調べましたね。」
●次回作については?
吉田:「次回作は、ポール・ギャリコという作家の方の原作から作ったオリジナルミュージカルです。」
広田:「おととい、通し稽古をやったのですが、作っては壊しの繰り返しです。また今の段階とは違うものになっていくと思います。」
吉田:「多重人格がテーマで、多重人格はそれほど特別な事ではないという観点から、人間の愛と交流を描いています。」
広田:「僕は人形遣いの役なのですが、皆さんに観て共感して頂ける作品になると思います。」
(池田祐里枝)